ブックタイトルRooT No.15
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RooT No.15
■探究活動としての図形の証明■AB D E C図3この問題では△ABDと△ACEの他に,△ABEと△ACDの選び方もあります。一つの選び方で証明した後,その証明を「読みながら」,別の選び方を証明し,さらには両方の証明を比較対照することは,有効な実践だと思います*4。別の問題にすぐに移るのではなく,「シツエーションを汲み尽くす」*5ことの重要性とも言えます。6.証明のための素地指導AB=ACの二等辺三角形ABCの辺BC上にBD=CEとなる点D,点Eをそれぞれとります。AD=AEとなることを証明しなさい。本稿で述べてきたことは,ある意味では証明の素地指導を示唆したものでもあります。小学校段階から,特に中学1年で,証明への接続を考えて,作図指導の充実,複合図形の認識を高めることが必要だと思います。図形の移動の学習で「麻の葉模様の陣取りゲーム」を取り入れることなどは有用だと思います。目的意識をもって対応する図形を選び取る力が育成されます*6。その他の素地指導として,図形「間」の関係性と定義の学習に言及したいと思います。図形「間」の関係の探究とは,例えば算数の面積の学習で,ひし形の面積公式(対角線の長さ×対角線の長さ)を導いた後に,ひし形を越えて,この公式はどんな図形に通用するかと問うことができます。たこ形や二等辺三角形,凹四角形の関係が一つの面積公式で結ばれます。台形の公式では,もし上底の長さが0になったらどうだろう,もし上底と下底の長さが等しくなったらどうかと問えば,図形間の関係を考える機会になります。最後に,定義についてですが,小学生は,平行四辺形を「向かい合う辺が平行で,向かい合う辺の長さが等しくて,向かい合う角の大きさが等しくて…」のように詳しく説明して,図形を特徴付ける傾向があります。証明では,向かい合う辺が互いに平行な四角形という条件「だけ」が平行四辺形の定義であり,その他の性質は証明の対象です。ここかいりに大きな乖離が生じています。定義が働かなければ証明は理解できません。定義の認識を,小中学校の両方でどう高めていくかは大きな課題だと思っています。引用・参考文献*1小関煕純『図形の論証指導』(1987),明治図書*2岡崎正和『中学校「図形」領域の学習指導.小山正孝編,教師教育講座第14巻中等数学教育.第5章』(2014),153-180,協同出版*3岡崎正和,岩崎秀樹『算数から数学への移行教材としての作図-経験的認識から論理的認識への転化を促す理論と実践-.数学教育学論究, 80』(2003),3-27*4森裕司『書かれた証明を読み取り,新たな性質を見いだすことができない.数学教育9月号』(2014),78-81,明治図書*5平林一榮『数学教育の活動主義的展開』(1987),東洋館出版社*6岡崎正和,髙本誠二郎『図形の移動を通して培われる図形認識-論証への移行を目指したデザイン実験-, 91 (7)』(2009),2-11,日本数学教育学会誌2014 No.159