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概要

RooT No.15

関数指導の工夫(後編)関数の特徴の理解に焦点を当てて福岡教育大学准教授岩田耕司関数指導の工夫を考えるにあたって,前編では,関数の意義を踏まえた指導のあり方について考えました。どのような目的で指導を考えるかによって,指導の工夫やその価値も変わってくると考えたからです。本稿では,それらの前提のもとに,比例や反比例,一次関数など,個々の関数の特徴の理解に焦点を当てて,関数指導の工夫を考えていきたいと思います。1.いろいろな関数と比較する例えば,比例の指導で比例を扱うのは当然のことですが,その指導の中で,比例する2量の関係しか扱ってはいけないというわけでは決してないと思います。比例の指導では,あくまで比例の特徴の理解に焦点が当てられるというだけであって,その目的を達成するためには他の関数を扱った方がむしろよい場面もあるでしょう。一次関数や2乗にしか比例する関数の指導場面においてもまた然りです。例えば,「日本」という国の特徴を考えてみましょう。海外に行かれたことのある方はお分かりになると思いますが,日本という国の特徴は,日本にいる限りにおいてはあまり意識されないことの方が多いように思います。一方,海外に出てみると,改めて日本はこういう国だったのだなあと再認識させられることがあります。例えば,水道水が普通に飲めること,治安がよいこと,建物が木でつくられていること等々,日本に住んでいる限りにおいては当たり前のように感じていることも,外国と比べればとても特別なことのように感じられるでしょう。関数の指導においても同様のことが言えると思います。比例の特徴を際立たせるためには,比例だけを観察するのではなく,いろいろな関数の変化や対応の様子を観察し,それらの特徴を比べることが大切です。小学生の中には,「増えれば増える」という関係を比例と捉えている子どもも少なくありません。比例とそうでないものとの比較を通して,比例に固有な特徴を際立たせる指導の工夫が必要と言えるでしょう。2.表での考察を大切にする一般に,関数関係は目で見ることはできません。そこで,関数関係をとらえるために表,式,グラフなどの表現が用いられます。これら数学的な表現を用いることで,現実の世界における数量の関係を数学の世界で考察することができるようになるわけです*1。中学校数学科では,小学校での学習のもとに,特に,式の形に着目して関数を調べることが求められますが,その際も,決して形式化を急ぎ過ぎることのないように,表,式,グラフを相互に関連付けて関数の10 2014 No.15