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概要

RooT No.15

演繹的推論の手短な説明としてはこのような表現にならざるをえないでしょう。しかし,これで演繹的推論であるか否かの判断がきちんとできるでしょうか。さらに,それについてしっかりした理解や捉え方がなされているでしょうか。演繹的推論は数学の証明で使用される非常に重要な推論です。従って,それを指導する教師側にはきちんとした捉え方が期待されます。そこで,これについて少し立ち入って考えていきます。命題p 1 , p 2 ,…p nを仮定として,命題qを結論として導く推p 1 , p 2 ,…p n論を右のような形式qで表します。ここで推論形式のなかには,仮定がすべて真のとき,結論が必ず真になるものがあり,これを妥当な推論形式といいます。この妥当な推論形式を用いる推論を演繹的推論というのです。先の「論理の法則」はこの妥当な推論形式のことをいいます。論理語の「かつ」「または」「ならば」「でない」をそれぞれ「∧」「∨」「→」「~」で表すと,次のようなものが妥当な推論形式の典型的なものです。〈肯定式〉p→qpq〈合接〉pqp∧q〈否定式〉p→q~q~p〈仮言的三段論法〉p→qq→rp→rこれらが何故に妥当な推論形式であるかは論理語の使い方,定義に依拠しています。命題の真を「T」,偽を「F」で表すと,前述の論理語は次のように定義されます。pqp∧qp∨qp→qp~pTTTTTTFTFFTFFTFTFTTFFFFTこれを基に,真理表を作成して推論形式の真偽を調べることができます。例えば〈肯定式)の真理表は次のようになります。pqp→qpqTTTTTTFFTFFTTFTFFTFFこの表から,仮定がすべて真(T)となるのは1行目だけであり,このとき,結論のqは真(T)になるので,この推論形式は妥当な推論であることが分かります。先の例1はこれを用いているので演繹的推論,他方で例2は妥当な推論形式を用いていないので演繹的推論でないことになります。上記の判定法は形式的で明確なものです。他方で,我々人間はある推論が妥当か否かを感覚的に判断する力を身につけていくと言われています。これに従えば,用いた推論が妥当でないときには感覚的にノーというサインが発せられることになります。算数・数学科において,こうした感覚を育てていくことも重要となります。4.算数と数学の違いは何か最後に,演繹的推論との関わりで算数と数学の違い,そこから生じる子どもたちの戸惑いについて,メッセージを発しておきたいと思います。算数では,以下のように,事例や図また2 2014 No.15