ブックタイトルRooT No.15
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RooT No.15
■教師への4つのメッセージ■帰納的推論や類推的推論を用いて性質やきまりを導くことがよく行われます。例3三角形の内角の和いくつかの三角形について内角を測り,それぞれの三角形の内角の和がおよそ180度になったことから,「三角形の3つの角の和は180度であること」を導く。例4奇数+奇数=偶数2つの奇数は図で次のように表すことができる。○○○・・○○○・・○○○○・・○○○○・・○○これらを合わせると,左の最後の一つの○を右の最後の一つの○の上におくことができるので,和は偶数となる。これらは算数においては,結論を導く方法,あるいは結論が成り立つことを説明する方法として認められています。従って,教師も子どももよく用います。しかし,数学においてはそうはいきません。数学における性質,きまりや定理は公理を真としたときに,真となるものです。また,個別的なことではなく,概念全体に当てはまることを導き出します。それをきちんと示す方法として人類が考え出したのが,公理,定義から演繹的推論を用い,文字を用いて命題を証明する方法です。算数においてはある事柄が成り立つことは事例や図によって説明され,帰納的推論や類推的推論によって説明されれば十分です。しかし,数学の証明においてはそれらは可とされず,演繹的推論や文字を用いることが求められます。この点が算数と数学の大きな違いです。この違いは論理的には大きな違いですが,心理的にはデリケートです。従って,子どもたちには区別がつきにくく,中学生は大きな戸惑い,困難を感じます。これまで算数で理由や根拠を説明しなさいと言われた際に可とされていたことが,数学の証明ではノーとされるからです。先に示した例3,4のように,事例や図による説明は,子どもたちにとって分かりやすいものです。数学では平行線の性質を用いて三角形の内角の和が180度であることを証明する方法が指導されます。しかし,子どもたちにとっては,「三角形の内角の和が180度である」ことの方が「平行線の性質」よりもはるかによく分かっていることです。ですから,証明とは「よく分からないこと」を用いて「よく分かっていること」を示すこと,という印象になりかねません。この課題にはこれまで多くの取り組みがなされています。しかし,満足できる解決は未だ見いだされておりません。読者諸賢の創意工夫に期待したいと思います。引用・参考文献*1中原忠男編集『算数・数学科重要用語300の基礎知識』(2000),明治図書2014 No.153