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概要

RooT No.15

「説明すること」の指導「文字を使った説明」の指導-形式的計算と意味の解釈を中心に-福岡教育大学教授清水紀宏1はじめに文字を使った説明に関連して,文部科学省の『中学校学習指導要領解説数学編』(2008)では,「文字を用いた式でとらえ説明できること」や「目的に応じた式の変形」について解説されています*1。本稿では,具体的な問題の例を通して「文字を使った説明」の指導について考えます。2括弧をつけることQ1直方体の3つの辺の長さをa,b,c,体積をVとする。a,b,c,Vの関係を文字式で表せ。まず,V=abcという解答が考えられます。この式は,「(直方体という図形が3つの辺を決めれば決まることから)直方体の体積はa,b,cで決まり,それは積abcである。」ことが表現されています。他方,V=(ab)cという表現も可能です。この表現の括弧は長さがa,bの2辺をもつ長方形の面積と残りの辺の長さcの積と「みる」ことができます。このことは,直方体の体積を「(底面積)×(高さ)」すなわち柱体の体積の求積とみていることに他なりません。裏を返せば,V=abcという表現は,直方体の体積の求積において,どの辺も公平に扱っているともいえます。この例からわかることは,括弧があるかないかだけでも,その式の意味に異なる解釈を与えることができるということです。計算の順序という観点だけでなく,何らかの意味を付与する(しない)という観点から,括弧をつける(つけない)ということを授業で意識して頂ければと思います。3形式的計算と意味の解釈Q2連続する3つの自然数の和が3の倍数であることを示せ。A1真ん中の数をnとすると,3つの数の和は(n-1)+n+(n+1)=3n。よって,連続する3つの自然数の和は3の倍数である。(ここでも,n-1とn+1に括弧を付けることが大切です。)A1はエレガントな説明ですが,「真ん中の数をnとおく」というのは,この問題を知っている(かなり見通せてる)人の発想ともいえます。素朴に,一番小さな数をnとおいてみましょう。A2一番小さな数をnとすると,3つの数の和はn+(n+1)+(n+2)ここから踏むべきステップがいくつかあります。まず「ここで手をとめず,式を簡単にすること」が必要です。式を簡単にで4 2014 No.15