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概要

RooT No.16 教科書特集号

でなく,他者の発言や解決から情報を読み取り生かす力(読解力)や,他者とかかわって話し合う力(コミュニケーション力)にも焦点を当てて,数学的な探究の学びを進めることが重要です。特に,学んでいる数学的対象を「~は……になる(である)」という命題の形で捉える言語活動や,言葉,数,式,表,グラフといった数学的方法の特徴を生かした言語活動が行えるようにしていきたいものです。2見いだす活動と説明し伝え合う活動を通して,文字を使った説明の仕方を探究する平成25年度の全国学力・学習状況調査数学B 2では,2桁の自然数とその数の十の位の数と一の位の数を入れかえた数を考える問題が出題されました。「9の倍数であることを説明するには,9と整数の積になることをいえばよい」という方針をもとに文字式の説明を作り出す(38.4%),2桁の自然数の差についての解決を発展的に振り返り,和についての命題を述べる(39.3%)という課題に対する正答率は,大変低い数値でした。新しい教科書2年P.24~25(前頁参照)では,数学的活動アとウをもとに,連続する3つの整数の和が3の倍数になることを,文字式を使って説明し,式の読みや場面を発展させることによって数学的探究の学びが実現できるようにしています。まず,3の倍数になるとは,0や負の数を含めて,3*(整数)になればよいという方針を立て,その方針に従って説明を行うようにしています。この方針の下で,連続する3つの整数n,n+1,n+2の和が3(n+1)の形になれば,3の倍数になることの説明ができたという感覚をもつことができます。次に,真ん中の数をnとして別の説明を作ったり,連続する5つの整数の和についても考えたりして,数学的探究を深めていきます。このように1つの解決が次の探究活動を引き起こし,探究を連続させる力が身につくようにしています。また,事柄が成り立つ理由を,根拠を持って説明できる力(説明の方法)や,説明の対象を「連続する5つの整数の和は5の倍数になる」という命題で捉える力も同時に培いたいことです。説明の対象と説明の方法のいずれも,読み取る,コミュニケーションするという言語活動を通して,生徒の知識を確かなものにしていけるように,教科書の紙面作りが行われています。3利用する活動と説明し伝え合う活動を通して,1次関数の活用と表現のよさを探究する2年『1次関数の活用』では,表やグラフや式を読み取って身の回りの問題を解決する力の育成が求められています。しかし,平成21年度の全国学力・学習状況調査数学B3では,蛍光灯と白熱電球の総費用を,表やグラフを使って求める問題が出題されましたが,表の読み,グラフの読みはいずれも60%程度の正答率でした。また,蛍光灯と白熱電球の総費用が等しくなる時間を求める方法を説明する問題の正答率は20%にも満たないものでした。新しい教科書2年P.90~91(次頁参照)では,数学的活動イとウを通して,表の数値やグラフの座標から事象を読み解くとともに,表やグラフのよさを生徒が実感できるように工夫がなされています。まず,表を使って,蛍光灯を2000時間使用した時の総費用の求め方を例の中で学び,LED電球を3000時間使用した時の総費用を求めることを通して,表の見方を獲得できるようにしています。続いてグラフの探究へ移り,グラフのy座標の読みを通して事象を捉える力を深めていきます。こうした素地的な学びをもとにして,2つの電球の総費用が等しくなる使用時間を求める方法を探究していけるようにしています。事象と数学とを行き来する力は繰り返すことによって高められます。教科書では,白熱電球(比例場面)との比較を通して,数学的探究が継続できるように工夫を行っています。また,数学的探究を進めながら,表,式,グラフがもつよさが認識できることも重要です。とりわけグラフでは,2本の直線の交点として,総費用の等しくなる点が一目で分かるというよさがあります。ここではグラフ上の点や線が何を意味しているのか,それはどのように読み取ることができるのかをしっかり話し合う言語活動によって,生徒の理解は確かなものになっていくことでしょう。教科書での数学的活動と言語活動の工夫が授業の中で生かされて,生徒が思考力と表現力を身につけていけることを願っています。11