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概要

RooT No.17

巻頭言(総論)アクティブ・ラーニングが注目されるに至った経緯と算数・数学における実現のポイント愛知教育大学教授山田篤史1.はじめに次期学習指導要領改訂作業が進む中,最も注目を集めているキーワードは「アクティブ・ラーニング」(以下,適宜ALと略記する)でしょう。これは,平成26年11月20日付けの文科大臣から中教審への諮問「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」において,この用語が取り上げられたからに他なりません。この諮問では,「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」を「アクティブ・ラーニング」としていますが,次期学習指導要領がこの用語にどのような思いを託そうとしているのでしょう。本稿では,まず,この用語が注目を集めるようになった経緯を振り返り,次に次期学習指導要領が目指す方向性とこの用語の結びつきを推察し,最後に,算数・数学教育におけるその実現化に向けてどのようなことに注意したらよいのかについて検討して行きましょう。2.ALが注目を浴びるに至った経緯ALは,当初「大学教育」の改革を議論する文脈で話題に上り始めた用語であったように思われます。例えば,平成24年8月28日の中教審答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」(中央教育審議会,2012.8)の中で,「学士課程教育の質的転換」を訴える部分に,次のような記述があります。「生涯にわたって学び続ける力,主体的に考える力を持った人材は,学生からみて受動的な教育の場では育成することができない。従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から,教員と学生が意思疎通を図りつつ,一緒になって切磋琢磨し,相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り,学生が主体的に問題を発見し解を見出していく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である」(p.9)大学の授業では,知識の効率的な伝達を図るため,しばしば講義形式が採られます。講義形式は,そうした目的に適った授業形式ですが,そうした学び方だけでは「生涯にわたって学び続ける力,主体的に考える力を持った人材」を育成できないのではないかという問題意識もあります。現在求められる力は,「何をどれだけ知っているか」という知識・理解の量もさることながら,「何がどれだけできるか」という資質・能力の部分が大きく強調されており,その方向への大学教育の質的転換が図られなければならないとして,先の答申が出され,引用部はその実現に向けての方策を具体的に語っている部分なのです。ところが,そうした学習の捉え方は,小