ブックタイトルROOT No.19
- ページ
- 10/16
このページは ROOT No.19 の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは ROOT No.19 の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
ROOT No.19
日常の事象に対して目的に適した概算をする活動●愛知教育大学講師髙井吾朗1平成28年8月1日の文科省教育課程部会教育課程企画特別部会における配布資料から,学習指導要領改定の方向性が見えてきました。具体的には,「社会に開かれた教育課程」の実現のために,アクティブ・ラーニングの視点からの学習過程の改善が求められています。算数科では,現行の学習指導要領においても,算数的活動を通した学習の中で,日常の事象について算数を使って考えたり,表現したりすることを目標にしてきました。つまり,主体的・対話的で深い学びを通して,現実へと活用することをこれまでも行ってきているということです。では,そんな学びの成果は本当に出ているのでしょうか。平成27年度の全国学力・学習状況調査の算数B4では,キャップ集めについて概数・概算を用いて目標に達しているかどうかを判断する問題が出題されました(次頁上,左下図)。そして,(2)においては,全て切り上げで考えることで,目標の10000個に多く見積もっても達していないことを示す選択問題が出題されており,正答率は62.2%でした。一方,(3)において,目標達成のためにあと何個必要かを示す考え方が提示され,その考え方の根拠を説明する問題が出題されましたが,その正答率は22.5%でした。この結果から,「日常生活の事象の解決に,概数や概算を活用して,目的に応じて合理的かつ能率的に判断することができるようにする」ことが学習指導の課題として挙げられています。2日常の事象への活用についての課題概数・概算の活用とそのよさの探究このような状況に対して,日本文教出版の教科書『小学算数4年上』P.58(次頁右下図)では,日常生活において概数がどのように使われているのかを紹介しています。ここで,元の数に対して何けたで四捨五入するのが適切かを考える際に,「相手にどのような情報を伝えたいか」,「相手に誤解を与えないためにはどうすればいいか」などの目的を入れることで,学習者は,日常生活で概数を使う際の体験活動を取り入れることができます。また,目的に応じて合理的かつ能率的に判断することができるような活動として,「四捨五入」,「切り上げ」,「切り捨て」という概算を目的に応じて使い分ける活動が挙げられます。例えば,買い物に行く際に,1000円しか持っていないとすると,どの概算を使うべきかという課題を与えることで,「多く見積もること」の有用性を実感させるということです。逆に「少なく見積もること」の例なども一緒に考えさせることで,機械的に四捨五入するのではなく,目的に応じて様々な概算をすることのよさを感得することが期待されます。3日常の事象への活用に向けて日常の事象への活用は,単に日常で使われていることを示すことではありません。日常の何を明らかにし,何を表現するのかという目的があるからこそ,算数を活用する意味が出てきます。今回は概算を例に出しましたが,ともに変わる2つのものの見方である関数の考え方,資料の整理におけるグラフの扱い方など,日常の事象に活用しやすいだけでなく,学習者に目的を提示しやすいものは,たくさんあります。このような例を参考にしていただき,多くの教室で算数の知識・技能が日常に活用されることを期待しています。※本資料P.9,10に掲載した調査問題は,国立教育政策研究所のWebサイトより引用しました。また,本資料P.8 ? 11を作成するにあたり,同サイトに掲載された全国学力・学習状況調査「解説資料」及び「報告書」を参考にしました。8算数・数学情報誌ROOT vol.19