ブックタイトルROOT No.20
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ROOT No.20
これらの説明を見ると,数学科における「深い学び」については,次の2点が重要であると考えます。 第一は,『新たな知識・技能を身に付け,知識の構造や思考,態度が変容する』とあるように,「深い学び」の深化の対象は,基本的には,資質・能力に関する3つの柱であるということです。ただし,「深い学び」では,学習内容の振り返りや活用による理解の深化,学習内容の統合・発展が特に求められており,それらは前述の数学的活動の充実にも連動するものです。 第二は,「よりよい方法を見いだしたりする」という文言があるように,問題解決の方法の洗練も重視されているということです。このことは,数学的な問題解決にかかわる,いわば方法知を重視したものと考えられます。 これらの点を意識しながら,今後,「主体的な学び」と「対話的な学び」との連関を図りつつ,数学科に固有の「深い学び」の在り方を具体化することが求められるように思います。 今回の改訂によって移行された内容(教材)及び新規に扱われることになった内容(教材)を整理すると,次のようになります。〔第1学年〕 ・素数(小5から) ・多数の観察や多数回の試行によって得られる 確率(中2から) ・平均値,中央値,最頻値,階級(小6へ) ・累積度数(新規) ・自然数を素数の積として表すこと(中3から) 〔第2学年〕 ・反例(新規) ・四分位範囲,箱ひげ図(高校・数学Ⅰから) 〔第3学年〕 ・誤差や近似値,a×10n の形の表現(中1から) こうした内容の移行等のうち,特に注目されることが,「データの活用」領域の内容の充実です。このことについては,次の2点があげられます。 第一は,従来,第2学年で指導されていた統計的確率と数学的確率のうち,統計的確率が第1学年に移行されたことです。このことによって,第1学年から確率が指導されることになり,その充実が期待されます。 第二は,統計教育の充実です。例えば,高校から第2学年に移行された四分位範囲や箱ひげ図について,新指導要領では,『四分位範囲や箱ひげ図を用いてデータの分布の傾向を比較して読み取り,批判的に考察し判断すること』(下線筆者)となっています。このように,四分位範囲や箱ひげ図に関する単なる解説にとどまるのではなく,それらを用いて,複数のデータ群の分布や散らばりの様子を比較・考察し,何らかの主張の妥当性を吟味したり,意思決定を行ったりするなどの活動の工夫が重要になると考えます。 教育では,時代や社会の要請に応える改善を常に図っていくことが求められています。こうした教育に関する今日的課題としての「流行」を常に意識する一方で,時代は変わっても,数学教育の本質として常に重視しなければならない「不易」の部分も看過すべきではないと考えます。例えば,新指導要領において一層強調されている「数学的活動」には,数学教育の不易が通底しているように筆者は考えます。不易と流行を適切に調和させながら,新しい時代に見合った数学教育を確実に具体化していきたいものです。5 主な内容(教材)の変更点おわりに●参考・引用文献中央教育審議会(2016).『幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)』(12月21日,文部科学省HP).中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「算数・数学ワーキンググループ」(2016).『算数・数学ワーキンググループにおける審議の取りまとめについて(報告)』(8月26日,文部科学省HP).中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「総則・評価特別部会」(2016).『アクティブ・ラーニングの視点と資質・能力の育成との関係について-特に「深い学び」を実現する観点から-』(3 月14 日,文部科学省HP).算数・数学情報誌 ROOT No.20 13