ブックタイトルROOT No.20
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ROOT No.20
数学偉人伝読 み 解 く !パスカル 中学生ならどんな反応をするだろう? そう思って,私は次の問題を「確率」の単元の冒頭で取り上げたことがあります。元々は賭博の問題でしたが,中学生にそれでは少々まずかろうと思い,私は設定を「みかん」に変えました。 簡単に一般的に言えば,「数回勝負のゲームを途中でやめたとき,賞金をどのように分配すればよいか?」ということです。この問題は「未完のゲームの問題」,あるいは,「得点の問題」と呼ばれている有名な問題です。 じつは,この(ような)問題に関して,1654 年の4 か月間,ブレーズ・パスカル(1623 ?62)とピエール・ド・フェルマー(1601 ?65)が手紙のやりとりをしています。二人は一度も直接に会ったことはないのですが,彼らのやりとりが今日の確率論の出発点であるといわれています。 このパスカルは,液体や気体の圧力に関する法則「パスカルの原理」で有名なパスカルです。彼に由来する圧力の単位にパスカル[Pa]があります。また,彼は「人間は考える葦あしである」という言葉でも知られています。 生徒たちは問題の状況をすぐには理解できないようでした。しかし,事態が飲み込めると,彼らは楽しそうにああだこうだと考え始めました。元々が魅力のある問題ですから,彼らが夢中になるのは想像通りでした。 彼らの様子を見て,私はパスカル以降の数学者たちの功績が,現在の私たちにしっかりと根付いていると感じました。たとえば,生徒たちは公正なコインを使えば表裏どちらの面が出るかについては「同様に確からしい」はずだと,あっさりと受け入れていたのです。つまり,確率の計算方法など習っていない中学生でも,未来の事象は「全く予測不可能」ではなく,特定の事象についてはそれが起こる「可能性」を数値として表すことができると知っていたのです。 とはいえ,まだ「確率」の学習を受けていない中学生ですから,彼らはパスカル以前の人たちと同じような反応も示しました。【その1】最多の意見(クラスの半分以上)は,みかんを6 個ずつに分けるというものでした。勝負が未完なのだから,勝負はなかったことにして(チャラにして)半々にすればよいというのです。 もちろん,反論する生徒もいます。「A さんの方が有利なのに,それが反映されていないのはおかしい!」 その反論を聞いてもなお,たとえ自分がA さん「未完のゲームの問題」とは?パスカルとフェルマー中学生の反応はいかに?●桐蔭横浜大学准教授 城田 直彦人間は(未来のことも)考える葦あしである 一方,フェルマーは「偉大なるアマチュア」と呼ばれたフランスの数学者です。「n を3 以上の自然数とするとき,xn +yn= zn となる自然数x, y,z は存在しない」という「フェルマーの最終定理」が有名ですね。みかんが12 個あります。A さんとB さんはコイントスを5 回して,多く勝ったほうが全てのみかんをもらう??というゲームを始めました。ところが,コイントスを3回終えて,A さんが2 回,B さんが1 回勝っている状況で,事情があって勝負は中止に。この場合,みかんをどのように配分すればよいでしょうか?問題14 算数・数学情報誌 ROOT No.20