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概要

ROOT No.20

 4年で学習する座標の素地に関連して,上のような地図を使った学習を考えてみましょう。この地図には左下にスタート地点S が設定されていて,ここからA 地点,B 地点に行く方法を考えます。ただし,途中には川(  )が流れているので,橋4年:地図を使って行き方の表し方を考えよう1’)意図した図形を描くという活動のゴールを明確にし,その特徴や要件を確認する2’)動かし方をコマンド(命令)という記号を組 み合わせた手順に表して自ら主体的にプログラムとして作成することで,図の線分の長さや角度など動作の柱を抜き出し構造化した思考過程を視覚化する3’)意図した動作が得られなかった場合は,どこで間違っているのか友達と相談し,プログラム中の角度の数値を変更してその結果との関係を考えることで,人と人との対話,さらにはコンピュータと人との対話的活動が展開される4’)他の正多角形を描画し,それぞれの図形と描画内容の違いから手順どおりに描けば必ず同じ図形になるという一般的な性質を見出す,つまりアルゴリズムを発見するとなります。こうした活動の中で,実際にコンパスで作図するときのコツを見つけるという活動につながることでしょう。算数の学びにおけるプログラミング教育は,従前の言語活動や論理的思考を導き出す学びに追加された,「学ぶ道具としてのプログラミング教育」を行うようになるというところから,授業展開を検討し取り組んでみてはいかがでしょうか?(  )のところでしか渡ることができません。また,遠回りはしないという条件をつけます。 S からA へはいろいろな行き方がありそうです。たとえば,「↑↑→→→↑↑↑↑↑→→↑」や「→→↑↑↑↑↑→↑↑↑→→」などです。このようにかくと児童からは「そんなにかくのは大変!」「もっと簡単にかける!」という声があがるでしょう。児童から,進む回数を数にして「↑↑→→→↑↑↑↑↑→→↑」を「2↑3→5↑2→1↑」とかく発想が出てくるようにしたいものです。 この考え方は,数学では係数の,計算機科学であれば圧縮の理解に結びつくでしょう。児童からは「1回の1はいらない」という声があがるかもしれません。簡潔なかき方への追究は「もっと短くかけるのではないか」という思考につながるでしょう。「3→8↑2→」と「5↑3→3↑2→」を比較すると,簡潔なのは明らかに「3→8↑2→」です。最初の13字から6字と,半分以下にまで表現を圧縮することができました。このような圧縮の考え方は,実際の情報技術で活用されていることも付け加えましょう。 ところで,行き方の表現は進む方向が同じ回数を合計するとどれも「5→8↑」となります。これは川がないときのもっとも簡潔な行き方を表しています。この表現こそが座標の考え方なのだと児童にとらえさせることで,単にプログラミング的思考の育成に留まらず,算数の理解にもつながる展開になるのではないかと考えます。 さて,B 地点に行くにはどのような行き方があるでしょうか。児童たちはA 地点と同様に考え,たとえば,「6→↑2→3↑←」などと表現するかもしれません。これらを先ほどと同じように進む方向でまとめると,「8→4↑←」となります。しかし,これは川がないときのもっとも簡潔な行き方である「7→4↑」とは一致しません。ここで児童から「右に8回行って左に1回だから,結局右に7回になる」などの発言を引き出して,負の数の素地的な理解をはかりたいところです。 以上のように,地図という素材から,圧縮技術や,係数,負の数の素地を理解することで,算数の理解やプログラミング的思考の育成につなげていくことができるのです。算数・数学情報誌 ROOT No.20 17