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概要

ROOT No.21

統計を小・中学生や一般の方に教えられるような人材です。【重松】 医学の世界でも必要ですね。看護学校で統計を何年か教えていた経験があるのですが,学生は統計と聞くと数学を連想して,頭から拒否しました。しかし看護師の仕事には多大な統計的処理の経験が必要です。それだけではなく,日々の看護業務は統計処理の連続なんですよね。「数値をいかにうまく読んで予想するか」「それに対してどう対応するか」。見通しが持てればドクターの話を聞く前に一定の構えができると思うんですよね。【須藤】 学校では,先ほどの企業の話のように数値で何かを追求しようという話にはなかなかならないです。例えば数学科の会議の場では,授業の内容と順番をよく話すのですが,何かを判断するときに「ここらへんでやっとかなきゃだめだな」とか「ここらあたりで」という経験や勘をもとにされ,定着率などの数値の話が出てこないことも多いです。もう少し統計的な見方・考え方が必要なのかなと感じます。また,受験生の成績をみる会議では「データはぶれるもの」「制御できるもの」という事をふまえないと,外れ値に惑わされて会議がものすごく長引くとか,理論的な議論が足りないまま結論を出す可能性もありえますから。【重松】 統計で得られるスキルのうち大事なものは「データに騙されない」ことです。ある統計グラフがあったとして,それはある人が主張を強調するために作為的に加工したデータかもしれない。このデータを見せられた人がその統計データに対して「本当にそうかな?」と多面的・批判的に考え,自分で判断できる,そういう力を誰もが付けてほしいですね。 もう一つ大事なスキルは「数学的に統計を活用して相手を説得していく力」です。過去のデータを活用して,あるいは将来の予想データを先取りして,推測のもとに一つの提案をしていく。そういった提案力も求められていますね。もっと言えば,これは誰でもできるわけではないと思いますが「統計を創造できる力」のある人が求められています。コンピュータと統計の進歩はパラレルだといわれています。コンピュータの性能が非常に進んできて,同時に統計処理の手法も変わってきました。このような進歩についていき,それに参画できる人材が求められています。【中西】 統計は一部でブームみたいになってはいますが,まだ「本当に統計って必要なの? 勘や経験で十分だよ」という声が社会でも教育現場でもあります。勘と経験って統計の対極みたいに言われますが,勘はともかく,経験は実は数値化していないデータの集まりなんですよね。それを数値化してみれば,経験則を補完するデータが出てくると思います。経験とデータがつながれば「こういう対策で,こういう効果がありました」と数値で発表でき,説明にも説得力を増すことができます。 また,日本人は安心・安全に100%を求めがちですが,データをもとに判断を迫られたとき「100%は無い」ということを理解し,リスクを測って決断できるようにならないといけないと思いま統計を活かすこと8   算数・数学情報誌 ROOT No.21