ブックタイトルROOT No.21
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ROOT No.21
数学偉人伝読 み 解 く !ネイピア 今回は,スコットランドの貴族で,数学者で,物理学者,天文学者でもあるジョン・ネイピアを紹介します。彼は,1550 年にエディンバラの南西にあるマーキストン城で生まれました。1608 年にはこの城の8 代目の城主になっています。 彼のいちばんの業績は,なんといっても対数の考案です。対数を使えば,乗法を加法に,除法を減法に変換して計算することができます。中学生には説明がむずかしいかとは思いますが,次のような累乗が出てくる計算をもっと幅広く適用できるようにしたといえば,雰囲気は伝わるのではないでしょうか。 35 × 32 =35+2 =37 38 ÷ 35 =38 - 5 =33 対数を使って計算できるようになれば,膨大な計算が必要となる天文学や航海学では大変助かります。ネイピアは20年間も計算を続け,1614 年に7 桁の対数表を発表しました。彼は67歳で亡くなっていますから,人生の3 分の1 近くも対数の計算に費やしていたことになります。 ところが,なかなか信じてもらえないのですが,ネイピアが対数の値を計算していた頃,小数はまだ一般に普及していなかったのです。ネイピアは自然数だけを使って対数を表現していました。 ところで,みなさんは,次の式の計算結果をどのように表しますか? 2 ÷ 10 答えは1 よりも小さくなります。このような場 なぜ,中学1 年生には小数の計算のほうが人気があるのでしょう? きちんと調べたわけではありませんが,その理由は想像できます。 小数なら,日頃から私たちが生活や仕事の中で慣れ親しんでいる「十じっ進しん位くらい取どり記数法」を引き続き利用して表すことができます。数を表すときに数を書く位置によって大きさを表す方法が「位取り記数法」,10ずつまとまるごとに1 つ上の位に上げていく方法が「十進記数法」です。 表記だけではありません。小数の四則演算は,整数の四則演算と同じルールで行うことができるのでとても便利です。これが分数だとそういうわけにはいきません。たとえば,分母が異なる2 数の加減の場合には,共通の分母にする作業(通分)が必要になります。 なにより最大のポイントは,小数だと数の大きさが感覚的にわかりやすいということ。7 分の2と11 分の3 の大小の判断はむずかしいですが,これらが0.285714……,0.272727……と表してあればすぐにわかります。人生の3 分の1をかけた計算小数は,少数派? 多数派?小数の人気の秘密は?●桐蔭横浜大学准教授 城田 直彦小さくても大きいポイントの発明者合,私たちは小数や分数を使ってその結果を表します。どちらを使ってもかまわないのですが,中学数学では分数が多用されます。小数を使うことは滅多にありません。まさに小数は少数派です。 そこで,私は中学1 年を担当したときには,学年の始めによくこんなふうに尋ねていました。「小数の計算と分数の計算,どちらがやりやすいと感じますか?」 結果は,いつも想像通りでした。例年,「小数の計算のほうがやりやすい」が多数派です。10 算数・数学情報誌 ROOT No.21