ブックタイトルROOT No.21
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ROOT No.21
マテマ! R解説編「 スミス氏の子供たちの問題」もうひとりの子どもも, 男の子である確率は?それとも?●天理大学教授 上田 喜彦●参考・引用文献1)マーティン・ガードナー著 岩沢宏和・上原隆平監訳(2015)『完 全版 マーティン・ガードナー数学ゲーム全集2 ガードナーの 数学娯楽 ソーマキューブ/ エレウシス/ 正方形の正方分割』日 本評論社,P.1762)前掲書1),P. 264 数学の分野で確率論ほど,専門家でも間違いを犯しやすい分野は他にないといわれることがあります。今回は,一般に「スミス氏の子供たちの問題」として知られている確率の問題です。この問題は,確率と曖昧性の問題を提起するものになっています。 「スミス氏の子供たちの問題」は,マーティン・ガードナーが,雑誌“Scientific American”の1959年5月号に書いた“Another collectionof ‘brain -teaser’” と題するコラムで,次のように紹介されている問題です。1) この問題を普通に考えると,スミス氏には子どもが2人いて,少なくとも1人が男子なのですから, 男子-女子 女子-男子 男子-男子の3通りの事象が考えられます。両方とも男子である確率は,1通りですから,その確率はということになります。 ジョーンズ氏の場合は,1人目が女子と決められているので, 女子-男子 女子-女子の2通りの事象しかありません。したがって,両方とも女子である確率はになります。 今回の解答編でも,同様の考え方が示されています。では,アブドゥラの考えが正しく,ムハンマドの考えは間違いなのでしょうか。実は,この解答に関してガードナーは,同じ雑誌の1959年9月号のコラムで「確率と曖昧さに関する問題」と題して,「ランダムにするための手順を特定しそこねたことで曖昧性が生じたもう一つの例」2) としてこの問題を挙げています。答えは「少なくとも1人が男子である」という情報を獲得する経緯に依存する,というのです。どういうことなのでしょうか? 次のような状況を考えましょう。子どもが2人いる家庭をランダムに選びます。もし,2人の性別が一致している場合にはその性別について「少なくとも1 人が男子/女子」とし,性別が一致していない場合は,どちらか1人を選んで選んだ子どもの性別にあわせて,「少なくとも1人が男子/女子」とする場合です。「少なくとも1人が男子/女子」としたとき,もう1人と性別が一致する確率は…? この場合は実はです。 一方,解答編では女子2人の場合を「条件に合わない」としています。もし「少なくとも男子1 名」が条件である─先の例でいえば,子どもが2人いる家庭のうち,少なくとも1 人は男子である家庭だけを対象にするならば,答えは確かにになる,ということができます。 マテマ!Rの問題にもどると,答えは,西の大国から帰ってきた使節が「少なくとも1人が男子である」という情報をどのように得たかに依存することになるのです。「報告は正確に」ということですね。 スミス氏には子供が2人いる。そのうち,少なくとも1人は男の子である。両方とも男の子である確率はどれぐらいだろうか。 ジョーンズ氏には子供が2人いる。年上の子供は女の子である。両方とも女の子である確率はどのくらいだろうか。20 算数・数学情報誌 ROOT No.21