ブックタイトルROOT No.21
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ROOT No.21
名刺はこのフォーマットにして十数年になります。名刺のサイズは普通55× 91ミリのおおよそ黄金比だと思いますが,これは幅を50 ミリにしていてちょっと細いんです。なぜかというと,模様の線の太さを5ミリにしていて,黒い線と白い線,合計10 本の線でちょうど1辺が5cm の正方形になるように描かれていて,どの方向からも断面がつながるようになっています。――影響を受けたのはどんな人たちですか? ひとりは江頭慎さんです。AA スクール(英国建築協会付属建築学校)の日本でいうところの教授で,哲学者であり美術家でもあり,思想家でもある建築家だと思っています。大学生のころにたまたま見た本でボス(江頭さん)の作品を見て衝撃を受けて,これは会いに行かなくてはと思って,AA スクールに入ったけれど,すぐに授業の枠から外れて助手をさせてくださいとお願いしました。「授業には出ませんが,助手させてください」ということだから,先生からしたら意味がわからなかったと思うけれど,僕は先生が話していることをすべて理解したいから,一分一秒近くにいたかったんですよ。 ほかにもさまざまなアーティストから影響を受けていますが,みなさんに共通するのは異なるものを融合させたり,ものごとの境界線を横断したりしているところですね。 父が建築家で,母はインテリアデコレーターという環境で育って,両親の影響もあって大学では建築を学びました。でも,建築家の道は選ばなかった。それについては,悪いことをしたなという思いもあります。この世界でどう食べていくかは賭けでしかない。なんの担保もありません。それでも,僕が尊敬する過去の先達が目を開かせてくれて,一番やりたいことをやろうとスイッチを押してくれたのだと思います。 初期の名刺を持ってくれている人がいて,「まだ持ってるぞ」と威張られます(笑)。フォーマットを変えなくてよかったと思います。つながるってことは,小さなパーツを合わせていけばどんどん大きな絵が描ける可能性があるのがいいなと思います。単なる名刺ですが,持っている人同士が「あ,つながりますね」というちょっとした会話をすることで,人と人とをつないでくれる可能性もある。いままでに何枚の名刺を渡したか覚えていませんが,集めれば相当大きな絵になるはずですよ。 こういう考え方があることを教えてくれたのは,僕にとっては芸術家や建築家のかたたちでした。少年時代は建築雑誌を読み解くことに没頭していました。――どのような子ども時代だったのでしょうか? 勉強はできなかったですね。親が共働きだったので,事務所に放って置かれると,その辺に置いてある建築の雑誌を片っ端から眺めていました。たとえば建築のプランがあって,この写真はどこから撮ったんだろうとか,はたしてこの場所は図面に記述されているのかとかを見るのがおもしろかった。建築雑誌の方がおもしろくて漫画には興背中を押してくれた先達たち▲つないでいくことができる名刺4 算数・数学情報誌 ROOT No.21