ブックタイトルROOT No.22
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ROOT No.22
特別支援編もでも,その仕組みを利用することで授業参加が保障されること,一方で,仕組みを利用しない方がより効果的な学びができる子どもにブレーキをかけないことが,ユニバーサルデザインの本来の姿だと私は考えています。 従って,ユニバーサルデザインを考える初めの一歩は,授業の「ねらい」と「めあて」を明確にして,教師と子どもがゴールを共有していることです。そして,その過程で予想される一人ひとりの困難さを明らかにしておくことでしょう。 学習指導要領にも障害のある子どもへの対応の必要性が示されています。算数障害という言葉も少しずつ教育現場に浸透してきました。 算数障害は,その言葉が示している通り,指導や支援によってすべてが解決できるほど簡単な話ではありません。基本的計算は繰り返し練習することでいずれはできるようになるなどと考えるのは大変危険です。 わからないところまで戻って,できないことをいつまでも続けたり,まずは計算から頑張ろうなどと安易に励ましたりするのは,子どもの自己肯定感を低下させてしまう恐れがあります。結果として,算数・数学教育の目標である数学的な見方や考え方を身につけさせることにつながりません。 従って,算数障害の疑いがあったり,著しく計算が遅いなどの状況が見て取れたりした場合,電卓の使用を認めるなどの合理的配慮が必要となります。ただ,ある特定の子どもだけに認めることは,他の子どもから見たときの不公平感を心配するため,現場の先生方はなかなか実行に踏み切れないことも理解できます。 そこで,あらためて授業の「ねらい」を考えます。計算そのものが授業のねらいではなく,文章題を解いたり,統計的な処理をしたりするようなねら 授業のユニバーサルデザイン化に取り組んでいる学校では,「視覚化」「共有化」「焦点化」などをキーワードにして,統一感のある学校独自のスタイルを作り上げています。一方,子どもの多様性に認知的側面からアプローチして,一人ひとりの授業参加を保障する取り組みも,学びのユニバーサルデザインとして広まってきました。 このように,一口にユニバーサルデザインといっても,教育にかかわる様々な立場の人たちが,数多くの研究成果を報告しています。これらが子どもたちの成長の支えとなっていることに疑いの余地はありません。ただ,新学習指導要領が示され,これからの教育の在り方を考えるべきこの時期,私たちは日々の実践を振り返り,これまでの成果と課題について丁寧に確認する必要があります。本稿では,これまで数学教育と特別支援教育の両面から数学授業のユニバーサルデザインを考えてきた立場で振り返ってみたいと思います。 ユニバーサルデザインはもともと建築用語だったようです。大雑把に言うと,様々な人たちにとって,安全でわかりやすく便利に活用できる構造です。例えば,エレベーターを考えるとわかりやすいでしょう。メーカーが異なっていても,使い方の本質的な部分が共通していて,子どもからお年寄りまで,誰でもわかりやすくなっています。また,車いすの方や重い荷物を運んでいる方にとっては,なくてはならないものです。一方,待っている時間がもったいない時は,階段やエスカレーターを使うなど,他の選択肢に変える余地が残されていて,使う人の自由が保障されています。 すなわち,ユニバーサルデザインを考える上で大切なのは,多様性のある子どもたちに学びの機会を保障するという目的を忘れないようにすることだと思います。学びに何らかの障壁がある子ど多様性に対応する授業のユニバーサルデザイン●横浜市立洋光台 第一中学校 主幹教諭 下村 治2 算数障害に目を向ける1 様々なユニバーサルデザイン10 算数・数学情報誌 ROOT No.22