ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

ROOT No.22

数学偉人伝読 み 解 く !アルキメデス アルキメデス(BC287 頃~ 212)は,古代ギリシャの天才的な数理科学者,機械学者です。以前にここで紹介したエラトステネスとは,面識があったのではないかといわれています。 アルキメデスといえば,入浴中に浮力の法則(アルキメデスの原理)を発見し,あまりのうれしさに裸のままで通りを走ったというエピソードが有名です。また,てこの原理の発見,水を汲み上げる揚水ポンプ(アルキメディアン・スクリュー)などの発明でもよく知られています。 もし彼が現在に生きていたら,ノーベル賞の受賞は当然でしょう。それだけではなく,アルキメデスは世界三大数学者の一人(他はニュートン,ガウス)とされるほどに数学上の業績にも輝かしいものが多く,「数学のノーベル賞」と呼ばれるフィールズ賞も受賞するに違いありません。 今回は,アルキメデスの数学の業績について簡単に紹介したいと思います。 その前に,以下の問題をご覧ください。  これを中学生にチャレンジさせると,かなり驚きの状況が現れます。(円周)=(直径)×(円周率)という公式は小学校で学習済みです。しかし,ま 円周の長さが直径の3 倍より少し長いということは,古代よりよく知られていました。また,エウクレイデス(英語名ユークリッド,BC330 頃~275 頃)は『原論』の中で,円の面積がその直径を1 辺とする正方形の面積に比例することを証明しています(アルキメデスは,エウクレイデスの弟子コノンのもとで勉強した経験がある)。 ところが,当時はまだ,きちんと筋道を立てた方法では,円周率の値を求められてなかったのです。つまり,当時の円周率は,経験から得られた値でしかなかったのです。アルキメデスは,次のような方法で円周率の値に近づいたといわれています(諸説あり)。 まず,円に内接する正六角形をかきます。この正六角形の周の長さは,円の直径の3 倍にあたります。次に,その正六角形からはみ出たところに二等辺三角形をかき(これで,正十二角形ができ世界三大数学者の一人円周率とは何か?正六角形からコツコツと●桐蔭横浜大学准教授 城田 直彦エウレカ! 円周率にちかづいたぞ!るで,このような問題を初めて考えるような雰囲気が漂うのです。「60cm くらいかな~」「120cm あるかもよ」 問題文の中に「円周」や「直径」というワードがないので,反応できなかったのだろうと,私は推測しました。ところが,たぶん,理由はそれだけではありません。生徒の多くは,「円周は直径のいくつ分だろうか?」―― つまり,円周と直径の長さを比べるという発想が消えかけているのです。そうなると,先の公式は,「円周」,「直径」という単なる言葉を結ぶだけのものでしかありません。それでは,アルキメデスが泣きます。右の図のようなお盆があります。お盆の点Aをスタートして, お盆のふちをぐる~っと回って,また点A に戻ってきたら,その長さはどれくらい?問題12   算数・数学情報誌 ROOT No.22