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概要

ROOT No.23

 ご存じの通り,このような見方は,単位の考えや測定の考え,乗法や分数の意味など,いろいろな学習内容に通底するものであり,小学校低学年のうちからすでに出てくるものです。それゆえ,小学校算数科では,このような内容の関連性や学習の系統性を大切にしながら,「基準量に対する意識」や「1とみる見方」を低学年のうちから系統的に指導していくことが重要です。4 意味や見方をもとに,求め方を考える活動●引用・参考文献Skemp, R. R. (1976). Relational Understanding andInstrumental Understanding. Mathematics Teaching, No.77, pp. 20-26.文部科学省・国立教育政策研究所(2018).『平成30 年度全国学力・学習状況調査:中学校数学』▲図5:比の性質による意味付け▲図4: 問題 の数量の関係の図表現 もし仮に,中学校に上がる段階でこのような見方が身に付いていなかったとしても,遅くはないと思います。一般的に中学校では,部分・全体の考えをもとに,割合を「比較量/ 基準量」という分数の形で表す指導が行われますが,割合の理解に課題がある生徒に対しては,やはりそれだけではなく「基準を1 とみる見方」をまずは身に付けさせて欲しいと思います。そうすることで,割合の値をある程度見積もることができるようになりますし,その結果として,明らかな計算間違いを減らしたり,後で述べるように,割合の求め方を自ら考えたりすることが可能になると期待できるからです。その際,場合によっては,「多い・少ない」や「長い・短い」など,二つの数量の大小を表現するには,二つの数量のうちのどちらかを基準にする必要があること(どちらかを基準にしていること)や,基準を入れ替えれば表現も自ずと変わることなどを確認し,比較の文脈では基準が大切であることを強調することも必要でしょう。その上で,割合は,基準となる数量を1 とみたとき,比較する数量がどれだけにあたるかを表す方法であることを押さえることが考えられます。 また,中学校の段階では,割合を学習する小学校5 年生の段階ではまだ習っていなかった分数の乗除や比例式の計算も既習の知識となっています。それゆえ,中学校の学習指導では,割合の意味や見方をもとにして,割合の求め方を多様に考えることも可能です。例えば,H30B 5(1)では,「何と何を比べているのか(560 円と3500 円)」,「どちらを基準にしているのか(3500 円)」を明確にした後で,割合の見方をもとに,次のような問題に設定し直して考えることも可能です。 この問題の数量の関係を図に表せば,図4 のようになり(中学校では文字も既習ですので,割合にあたる数はxで表すことにします),小学校では比例関係に基づいて3500 ×x= 560 と立式し,xを560 ÷ 3500 の式で求めます。 一方,中学校では,1 年生で比例式を学習しますので,対応する数量同士を適切に捉えることができれば,3500:1 = 560:xや3500:560 = 1:xなど,いろいろな形で立式することができます。また,初めから百分率で表したければ,1 の代わりに100 を用いればよく,比例式は割合の見方をそのまま式に表すことができる一つの有効な手段であると言えるでしょう。さらに,例えば3500:560 = 1:xの式について等しい比の性質を用いれば,560 を3500 で割る意味付けを見出すことができます(図5)。つまり,3500 を1 にするために3500 で割っているという意味付けです。これは図4 の数量の関係を縦に見た見方でもあり,割合の求め方がなぜ「比較量÷基準量」になるのかを説明する一つの方法です。このように,中学校では,割合の意味や見方をもとにして,割合の求め方を多様に考える活動を設定することが可能です。÷3500÷35003500:560 = 1 : x0 560 3500x 1 割合(円)0× x× x基準となる3500 円を1 とみたとき,560 円はいくつにあたりますか。問題算数・数学情報誌 ROOT No.23 9