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概要

ROOT No.23

特別支援編掲示物を多用して,「視覚化」をアピールするようなことはしていません。あまり本質的でないことを「共有化」しようとして,子どもの学習活動をストップさせてしまうような展開になりません。親切すぎるプリントでの「焦点化」によって,思考の発展性にブレーキをかけることがありません。 かといって,「ねらい」は毎時間決めるという必要もないと思います。時には2 ~ 3 時間かけて行う題材もあるでしょうし,10 分ほどの短時間で達成されるべきものもあるでしょう。従って,毎時間黒板に「めあて」を書いてからスタートするというのも工夫の一つではありますが,それに縛られて中途半端な「めあて」を設定するのは,正しいスモールステップ化とは言えないでしょう。 私は,一般の先生方にとって,特別支援を考える上でまず大切なことは,日頃から教材研究を怠らず,一つひとつの題材の「ねらい」すなわち教育的価値を明確に設定できる教科教育の専門的知見だと考えています。 「ねらい」を明確にするという点で考えると,ルーブリック評価が普及してくることを期待しています。紙面の都合上詳細は省きますが,ルーブリックを作成することで,評価規準が明らかになり,先生方の意図することが子どもあるいは保護者に正しく伝えられます。 子どもも保護者も,自分の現在地を把握でき,苦手な子どもはいわゆるB 基準をクリアするために何をするのか,得意な子どもはA の状態を目指して何をするのか,自分自身の行動目標を設定でき,学びの自律を支えるツールになります。 少し脇道にそれますが,特別な教育的ニーズのある子どもには合理的配慮が必要と言われています。これを巡って,学校と保護者の合意がうまく形成されず,保護者に不満が残ってしまうケース 授業のユニバーサルデザインというと,特別支援教育の枠組みだと考えている先生方が多いようです。しかし,私の主張する授業のユニバーサルデザインは,特別な教育的ニーズのある子どもがいるから行うという発想ではなく,授業の質を上げて,数学教育の核心に迫るために行うものと考えています。 授業のユニバーサルデザインは,その仕掛けを子どもに強制するものではありません。先生が作った仕掛けであっても,それが不要であれば,子どもの学ぶ意欲にブレーキをかけないよう,使わないという選択肢を残しておくことも大切であると前回触れました。従って,本稿では,授業のユニバーサルデザインを実現するために,先生方がしておくべき準備について考えたいと思います。 『ユニバーサルデザイン』と名のつく実践的研究を拝見すると,「視覚化」「共有化」「焦点化」といったキーワードが並び,それに見合った工夫をしているといったものが多いようです。しかし,本当に大切なのは,その授業の「ねらい」がどこにあるのか,子どもにとっての「めあて」は何なのか,そしてそれをどのように具現化するかといったことのはずです。誤解を恐れずに言えば,こういったキーワードになるような手法にばかり目が行き,本質をおろそかにしていないか,先生方は自分の頭でしっかり考えるべきだと思います。 授業のユニバーサルデザインについては,様々な意見や考え方がありますが,当初から良い実践をされている方々の論調に共通して言えるのは,「ねらい」がはっきりしているという点です。「ねらい」がはっきりしているので,無駄に刺激的な「授業のユニバーサルデザイン」を実現する準備●横浜市立洋光台 第一中学校 主幹教諭 下村 治ユニバーサルデザインは2 「ねらい」の設定から3 ルーブリックの価値1 はじめに10   算数・数学情報誌 ROOT No.23