ブックタイトルROOT No.23
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ROOT No.23
が散見されます。最終的に子どもが不利益を被ります。 保護者は子どもの障害特性を伝え,学校に理解を求めます。一方,学校は他の子どもとの公平性をどう保つかで考えがまとまらず,対応に苦慮するという構図です。 私は,様々な学校で起こっているこのようなケースに対応することがよくありますが,結局のところ,学校が教育活動のねらいをはっきり示すことができれば,思いのほか簡単に合意形成できることが少なくありません。 授業のユニバーサルデザインを工夫することで5分間を捻出できれば,課題の達成が不十分な子どもに対応したり,より難易度の高い題材を提示したりできると前回触れました。ここで述べることもその工夫の一つになります。 誤答分析というと,テストの後に行うようなイメージがあるかもしれません。しかし,より良い授業を構成する上で大切なのは,授業の前に行う誤答分析(誤答予測というべきかもしれません)の精度を上げることだと思います。 例えば,次の計算問題を授業で扱うとき,先生方はどの程度の準備をするでしょうか。 (?3)?(?3)×(?24 ) 正解の-51 は当然として,それ以外の答えを何種類用意できるかがポイントです。この問題の場合,21,45,-27,-45など,いくつか用意しておくべき誤答が考えられます。 座席順などで指名して,間違いのあった問題でのみ解説をするといった授業展開は,実態に即した授業とは言えません。誤答をいくつか予測して教室を一回りし,どの部分で誤りが多いか把握すれば,そのクラスに応じた授業展開ができます。 授業でどの部分の解説を手厚くするのかは,先生の感覚で選ばれるのではなく,目の前の子どもの状況によって決められる方が良いのではないかと考えています。ほぼ全員ができていることに時間を費やしても効率的ではありませんし,授業に倦怠感が出てしまいます。また,特に支援の必要な子どもに対しても,どこでどのように間違えて4 机間指導を有効にする誤答分析● 題材の「ねらい」を明確に設定する。●「 ねらい」を子どもや保護者にはっきり示す。● 授業の前に行う誤答分析の精度を上げる。本稿の ポイントいるのかが予めわかっていれば,個別対応もスムーズに行えます。 全ての問題に対してこのような準備をする必要はないと思いますが,1 時間の中で1 ~ 2 題,時間をかけて準備をしておけば,クラスの実態把握が効率的です。 このような仕掛けを意図的に行うために,「机間巡視」「机間支援」「机間指導」を分けて考えた方が良いと思います。最近はこれらの総称を机間指導ということが多いようですが,目的に応じて使い分けたいものです。 「机間巡視」は文字通り巡視であって,先に述べたように,クラスを一回りし,それぞれの解答の出現率を把握します。途中で誰かに声をかけたりせず,そのあとの授業展開の中で,どの間違いを重点的に取り上げるか,誰を指名するのかといったことを考えます。「机間支援」は,あくまでも子どもの自力解決を期待して助言したり,遅れている子どもを一定のラインまで引き上げて一斉指導のスタートラインに立たせたりすることです。「机間指導」はもう少し強く踏み込んで,子どもの活動に明確な指示を出してコントロールしていくイメージをもっていただくとよいでしょう。 実際の授業では,様々なハプニングが起こるので,臨機応変な対応は大切です。だからこそ,事前に準備できる部分を念入りに行い,時間などの物理的な側面と,先生自身の心理的な側面に余裕を持たせる工夫が必要だと考えます。 繰り返しになりますが,授業のユニバーサルデザインは,クラスの誰かに特別な教育的ニーズがあるから行うのではなく,もともと子どもには多様性があることを前提にして考えるものだと思います。先生方がゆとりをもって質の高い授業を提供できるよう,本稿が参考になれば幸いです。算数・数学情報誌 ROOT No.23 11