ブックタイトルROOT No.23
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ROOT No.23
数学偉人伝読 み 解 く !オイラー 中学3年の数学では,数の範囲が拡張されて,「無理数」が登場します。無理数とはご存じの通り,「分数の形で表せない数」です。 定義としてはこれで十分ですが,親切心から「たとえば, や などが無理数だよ」などと気軽に例を出すのは要注意です。根号を用いて表せば,なんでもかんでも無理数だと誤解されやすいからです。実際, や は無理数ではありません。また,すべての無理数が の形で表されるわけではありません。たとえば,次の数はの形に表せませんが,無理数です。 0.1 01 001 0001 00001 000001 …… さらに,小学校で登場する円周率や,高校で学習する自然対数の底も, の形では表せませんが立派な無理数です。 ここで,スイスに生まれロシアで死去した数学者レオンハルト・オイラー(1707 ~ 83)を紹介します。円周率をπ という文字で表すことを広めたのは,オイラーです。また,自然対数の底を表すためにe を最初に使ったのもオイラーです。もっと言えば,関数をf(x)と表したのも,虚数単位 をi を用いて表したのもオイラーです。 オイラーの研究分野は,解析学,複素解析学,微積分学,微分方程式,変分法,数論,確率論,トポロジーなど多方面に渡ります。また,天文学,光学,電磁気学,力学,流体力学などの応用分野にも大きく貢献しています。彼が76 年の生涯に書いた論文,書籍,教科書,マニュアルなどは,なんと5 万枚以上! 18 世紀の数学は,オイラー抜きでは語れません。 その中で,「ケーニヒスベルクの橋」の問題なら,中学生も興味を持って取り組むことでしょう。これは,当時のケーニヒスベルクの町に架かっていた7 つの橋を,すべて一度ずつ渡るように歩ける分数の形で表せない数最も美しい数式オイラーの膨大な業績●桐蔭横浜大学准教授 城田 直彦美しい定理に愛された18 世紀の数学の巨人が),「複素解析」の分野で,指数関数と三角関数を結びつける次のような公式があるのです。 eiθ=cosθ+ i sinθ この式は,「オイラーの公式」と呼ばれています。この公式の名前も,先のレオンハルト・オイラーに由来します。 さあ,この式のθにπを代入してみましょう。すると,次の式が得られます。 eiπ =-1(変形すると,eiπ +1 = 0) あれだけやっかいだった超越数のπ とe が,この式では虚数のi と力を合わせ,実数(しかも整数!)を生み出しているのです。 身震いするほど美しいこの式は,「オイラーの等式」と呼ばれています。どうですか,オイラーの偉大さが少しずつ伝わってきましたか? この等式は,ある数学雑誌で行われた数学者へのアンケートで「数学における最も美しい定理」に選ばれています。また,小川洋子さんの小説『博士の愛した数式』にも,この式が登場します。 さて,同じ無理数でも , とπ, e とは,性格が大きく異なります。 や は,2 乗すれば整数になります。一方, π やe は(実数の範囲では)何乗しても,何乗かしたものを足したり引いたりしても,整数にはなりません。このような数は「超越数」と呼ばれます。 ところが(中学数学の範囲は優に超えています16 算数・数学情報誌 ROOT No.23