ブックタイトルRooT No.24 2020年度版「小学算数」教科書特集号
- ページ
- 16/28
このページは RooT No.24 2020年度版「小学算数」教科書特集号 の電子ブックに掲載されている16ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは RooT No.24 2020年度版「小学算数」教科書特集号 の電子ブックに掲載されている16ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
RooT No.24 2020年度版「小学算数」教科書特集号
幼児期の学びを小学校の学びへと接続する幼児期の終わりまでに育ってほしい姿健康な心と体自立心協同性 道徳性・規範意識の芽生え社会生活との関わり思考力の芽生え自然との関わり・生命尊重数量や図形,標識や文字などへの関心・感覚言葉による伝え合い豊かな感性と表現天理大学教授 上田 喜彦11098765432きゅうしょくだね。おんがくのじゅぎょうだね。 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を踏まえた指導を工夫することにより,幼稚園教育要領等に基づく幼児期の教育を通して育まれた資質・能力を踏まえて教育活動を実施し,児童が主体的に自己を発揮しながら学びに向かうことが可能となるようにすること。(中略)小学校入学当初においては,幼児期において自発的な活動としての遊びを通して育まれてきたことが,各教科等における学習に円滑に接続されるよう,生活科を中心に,合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の設定など,指導の工夫や指導計画の作成を行うこと。保・幼・小連携の取り扱いについて遊びや生活の中で,数量や図形,標識や文字などに親しむ体験を重ねたり,標識や文字の役割に気付いたりし,自らの必要感に基づきこれらを活用し,興味や関心,感覚をもつようになる。 2017(平成29)年3月に告示された小学校学習指導要領の総則では,就学前教育と小学校との接続の重要性について,以下のように示されています。 ここでいう「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は,幼稚園教育要領,保育所保育指針,幼保連携型認定子ども園教育・保育要領で,具体的には10の観点(右下参照)から示されています。これは,幼児期に育みたい資質・能力である「知識及び技能の基礎」「思考力,判断力,表現力等の基礎」「学びに向かう力,人間性等」を具体的な姿として示したものであるといえます。 このことを踏まえ,『小学算数』1年上では,教科書の冒頭に「さんすうのはじまり」というページを設けています。「さんすうのはじまり」では,ページを構成している写真をもとに,子どもたちが就学前に経験した,数量や図形に関わるいろいろな場面に目を向けさせます。そして,それらの算数の基盤となる経験を改めて算数の目で見つめ直し,小学校での学習とつなげることを意図しています。 幼児教育では,積み木や砂場,ブランコなどの遊具,先生や友だちとの関わり,自然や社会の事象への意識づけなど,子どもたちを取り巻く時間や空間の中で体験を通した教育が行われています。そして,そこで行われる活動の中で触れるすべてのものを教材として学んでいきます。 小学校の入学からしばらくのあいだは,このような幼児期の学びや学び方との継続性を大切にしていくことが求められます。 たとえば,「今日,みんなは,誰といっしょに登校したの?」「○○さんと6年生の△△さんといっしょに来たよ」「わたしは,お姉ちゃんといっしょに来たよ」「近所の友だちとみんなで来たよ」などと会話が弾む登校の場面や学校たんけんの場面,給食や運動会(体育)の準備の場面など,学校生活の中から算数を学ぶための場面を切り取り,ストーリーをつくりながら学習をしていくことを大切にしたいと考えています。 そのため,教科書の最初の単元「ともだち」から始まる1学期の学習内容では,学校でのさまざまな ここでは,日常の保育の中のさまざまな場面で数字が使われたり,数を意識したりする活動,子どもが遊びの中で自然に数を使っている場面を取り上げています。 「幼稚園や保育園などで,この写真のようなことをしたことがないかな」という問いかけをすることから,「3人ずつ集まって手をつないだことがある」「私は4人ずつの組をつくったことがある」「なわとびを10かいとべたよ」など,数を使った経験を引き出し,小学校の学習の入り口とすることができると考えています。生活場面を取り上げ,生活との関連の中で,数や量の学習を進めていけるようにくふうしています。ここに示されている学校生活での場から,算数を学ぶシチュエーションを設定し,ストーリーを大切にしながら授業を進めていきたいものです。 幼児期の「さんすう」と小学校の「算数」をつなぐためには,幼児期に培ったさまざまな見方・考え方,経験から得た基礎的な知識や技能,活動や環境を通して学ぶという学び方を指導者が意識してつないでいくことが重要であるといえます。 幼児期に誰かとものを分け合った経験は,わり算の素地になりますし,「いもほり」でいもの大きさを長さや重さで比べた経験は,量の感覚の素地になります。幼児期の学びと学び方を数学的活動につなぐ意識を指導者がもつことで,この教科書で学ぶ子どもにとって,算数が楽しくてわかりやすいものになることを,そして,この教科書が子どもと算数とのよい出会いをつくることにつながることを願っています。幼児期の経験を算数の学習につなげるストーリーを大切にした紙面構成幼児期の学びと学び方を数学的活動につなぐ12314 算数・数学情報誌 ROOT No.24 算数・数学情報誌 ROOT No.24 15