ブックタイトルRooT No.24 2020年度版「小学算数」教科書特集号
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RooT No.24 2020年度版「小学算数」教科書特集号
図1に示したのは,平成30 年度の全国学力・学習状況調査のB問題 1 の後半です。ここでは図形に関する日常生活の事象として,敷き詰め模様に関する内容が取り上げられました。さらに設問(2)は,正三角形と正六角形の両方で敷き詰められる「かごめ模様」について, 1 つの点の周りに集まった角度が360 度になっていることを言葉や式を用いて記述させる問題です。出題の趣旨は,「事柄が成り立つことを,図形の構成要素や性質を基に論理的に考察し,数学的に表現する」ことができるかどうかをみることです。 そのために,合同な正三角形,正六角形のどちらか一方を使ってできる敷き詰め模様についての説明が,設問(2)の前に設定されています。そこではまず「はるとさん」が,「すきまも重なりもなくしきつめられている」という日常的な事象の説 この問題で,図1の左ページに解答の仕方を示したにもかかわらず,半数以上の子どもが正答できなかったのはどうしてなのでしょう。これまでに出題された記述式の問題でもよく言われることですが,おそらく,図1の左ページに示された文脈を子どもが読み取ることができず,解答の仕方がわからなかったためと考えられます。調査実施の際には,制限時間が決められ質問もできない状況ですので,やむを得ないことかもしれません。 そこで,この問題の文脈を使って「図形の構成要素や性質を基に,事柄が成り立つことを説明する活動」をおこなう授業をやってみることをお勧めします。言い換えれば,この調査問題の文脈は,授業展開の文脈として使えるようになっているのです。 授業展開の概要は次のようになるでしょう。 ここで述べた活動は図形領域に限ったことではなく,新学習指導要領では,「数学的に表現し伝え合う活動」として,数学的活動に位置づけられています。そして,学習内容と子どもの発達の段階を踏まえ,学年別に次のように示されています。● 第1学年…問題解決の過程や結果を,具体物や図などを用いて表現する活動● 第2,3学年…問題解決の過程や結果を,具体物,図,数,式などを用いて表現し伝え合う活動● 第4,5学年…問題解決の過程や結果を,図や式などを用いて数学的に表現し伝え合う活動● 第6学年…問題解決の過程や結果を, 目的に応じ て図や式などを用いて数学的に表現し伝え合う 活動 学年によって,数学的に表現する際に用いるものに違いがあることや,第6学年で「目的に応じて」という文言が付け加わっていることに留意してください。そして,各学年,各領域での具体的な活動を考え,授業を展開しましょう。●帝塚山大学教授 勝美 芳雄3 「数学的に表現し伝え合う活動」を1 敷き詰め模様の問題▲図1 :平成30年度全国学力・学習状況調査 小学校算数B 問題 1( 2)明を,「1点のまわりに集まった角の大きさの和が360°になっている」と数学的に表現しています。これを理解することによって,どんな図形で敷き詰め模様をつくることができるかを考えられるようになるのです。そして,「ともやさん」と「かすみさん」が,「うろこ模様」と「きっこう模様」について,・着目した図形の名称・角の大きさを表す言葉や数とその角の大きさ がいくつ分で360°になるかを表す言葉や式を示して,それぞれ具体的に表現しています。 設問(2)で扱う模様が正三角形と正六角形の両方を使っているため,記述式で求められる解答がやや複雑になることが予想されます。そこで,「ともやさん」と「かすみさん」の説明を使って,子どもたちに解答の仕方がわかるようにしているのです。本資料18 ページに掲載した調査問題は,国立教育政策研究所のWEB サイトより引用しました。また,本資料p.18 ~19 を作成するにあたり,同サイトに掲載された全国学力・学習状況調査「解説資料」,「報告書」を参考にしました。 しかし, 調査の結果, この設問の正答率は48.5%,無解答率が14.3%でした。このことから,「敷き詰め模様の中から図形を見いだし,その構成要素や性質を基に,1つの点の周りに集まった角の大きさの和が360°になっていることを記述することに課題がある」と指摘されました。①「 うろこ模様」と「きっこう模様」を観察し,すきまも重なりもなく敷き詰められる理由を考える。②「 うろこ模様」と「きっこう模様」について「,1点のまわりに集まった角の大きさの和が360°になっている」ことを説明する。③「 かごめ模様」について,同じように説明できるか考える。④ 他の敷き詰め模様について考えたり,敷き詰め模様を作ってみたりする。 ①では,子どもたちからいろいろな考えが出てくるでしょう。その中に②につながるものがあればそれを取り上げていくことになります。逆に,出ない場合は,問題にある「はるとさん」の考えを先生が紹介すればよいでしょう。 ②では,子どもたちの表現を整理し,洗練されたものにしていくことになります。この場合も,子どもたちがうまく表現できない場合は,「ともやさん」と「かすみさん」の考えを示せばよいでしょう。さらに,説明の仕方として「○○なので,△△です。」というように,理由と事実を明確にする表現の仕方を子どもに習得させることが必要です。ただし,単なる話型の指導にならないよう注意しなければいけません。つまり,○○と△△で,何を述べなければならないのかが大切です。この場合は,○○が正多角形の1つの内角の大きさ,△△がそれらの和が360°になることです。 ③では,いよいよ「かごめ模様」について考えるのですが,②でできた説明の仕方を使って,グループ等で考えさせることができるでしょう。 ④は,やや発展的になりますので時間内にできない場合は,次時や家庭学習の課題にしてもかまいません。2 この問題の文脈で授業をしてみよう図形の構成要素や性質を基に,事柄が成り立つことを説明する活動正答率48.5%18 算数・数学情報誌 ROOT No.24 算数・数学情報誌 ROOT No.24 19