ブックタイトルRooT No.24 2020年度版「小学算数」教科書特集号
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RooT No.24 2020年度版「小学算数」教科書特集号
数学偉人伝読 み 解 く !ピタゴラス バチカン市国のバチカン宮殿には,ラファエロ(1483 ~1520)と彼の弟子によるフレスコ画が多く展示されています。下の絵は,彼の最高傑作『アテナイの学堂』です。この絵には古代ギリシャの有名な学者がほとんど描かれているといわれています。たとえば,中央にいる2 人は,左がプラトン(BC427頃~ BC347頃),右がアリストテレス(BC384 ~ BC322)です。 今回紹介するピタゴラス(BC572 頃~ BC492頃)は……,いますよ。絵の左下で重そうな本を開いて何か書き込んでいます。実は,ピタゴラスはプラトンやアリストテレスが生きた時代以前の人物なので,彼らがこの絵のように一堂に会することはあり得ません。しかし,大切なことは,ラファエロがピタゴラスを古代ギリシャの学者オールスターズの一人として欠かせない人物だと認識し,この作品の中に描いているということです。 ピタゴラスのプロフィールは,謎に包まれています。というのも,彼は著作を一つも残していないのです。また,彼の妻テアノが書いたという伝記も失われ,直接的な資料はまったくありません。ですから,ここに示す彼の経歴は,すべて「~といわれている」というものです。 ピタゴラスは,エーゲ海の東部にあるサモス島で生まれました。彼はイオニアの植民地であるミレトスに行き,数学者,天文学者として有名なタレス(BC624 頃~ BC546頃)や彼の弟子から学んだとされています。さらに,エジプトで学び,故郷のサモス島に戻り学校を開きましたが,うまくいきません。次に,イタリア南部にあった古代ギリシャの植民都市クロトンに移り,学校を開きます。ここで多くの弟子を得て,いわゆる「ピタゴラス学派」が形成されました。 ピタゴラスは,「万物は数なり」――自然も社会もすべて数によってつりあいがとれ,秩序が保たれていると考えていました。彼の学校は,「数」を崇拝する宗教団体,秘密結社のようなものでもありました。弟子たちは学習したことの口外を禁止され,弟子たちの発見はピタゴラスの発見として扱われたといわれています。 学校が栄えると学派の政治的発言力も大きくなり,反感をもった民衆により学校は焼かれてしまいました。多くの弟子たちが死に,ピタゴラス自身もメタポンツムで亡くなりました。 ピタゴラスは,三角形の内角の和が2 直角であることを,頂点を通って対辺に平行な直線を引いて証明しました。また,正多面体については,以アテナイの学堂ピタゴラスの発見ではない!?万物は数なりピタゴラスの業績●桐蔭横浜大学准教授 城田 直彦その自然現象には,数学がある!斜辺を c とするとき,a2 +b2= c2 が成り立つというものです。直角三角形が持つとてもエレガントな性質です。しかし,まず断っておきますが,ピタゴラスがこの定理を最初に見つけたわけではありません。直角三角形にこのような性質があることは,ピタゴラスが活躍する以前から各地で知られていました。 では,なぜ,「ピタゴラスの定理」と呼ばれるのでしょうか? 彼はこの性質を最初に発見した人物ではないけれど,筋道立てて証明したのかもしれない――私はそう考えることにしています(そのような証拠もないのですが……)。ピタゴラスが敷石の模様を見て「この定理を発見した」というエピソードはよく知られていますが,「証明のヒントを得た」というのが私の想像です。前から知られていたものに加えて,正十二面体,正二十面体を発見しました。もっとも,先に述べたような事情で,彼の業績なのか学派としての業績なのかは判別できません。 ほかにも,奇数・偶数,三角数,四角数,完全数などの整数の性質についての研究,黄金分割の作図,正多角形による平面の敷き詰めなどの図形分野の研究,さらに,音楽の分野にまで才能を発揮し,音程と数の関係についても研究しました。 さて,ピタゴラスが信仰の対象とする「数」とは,整数と整数の比(分数)だけでした。ところが,正方形の1 辺の長さを整数で表すと,対角線の長さを分数で表せないのです(無理数になる)。こんなに身近な図形なのに! ピタゴラスは無理数の存在を隠すために,無理数について口外した弟子を溺死させた――といわれています。参考文献『 ピタゴラスの定理』,大矢真一(東海大学出版会,2001年)ほか ピタゴラスといえば,最もよく知られているのは,これはもう間違いなく「ピタゴラスの定理」でしょう。直角三角形の直角をはさむ2 辺をa,b,24 算数・数学情報誌 ROOT No.24 算数・数学情報誌 ROOT No.24 25