ブックタイトルRooT No.25
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RooT No.25
気象庁では,天気や気温だけではなく,海水温や風速,潮位実況など,さまざまなデータを提供しています。――今後の目標は。 まずは会員数を増やしたいです。 現在,会員数は648 ですが,まだまだ少ないと考えています。 会員数が増えることで気象データの使い方が多様になり,新しい使い方が生み出されてくると思います。 今は意識して気象データを使う状態ですが,将来的には,企業の中で気象データを扱うことが当たり前になり,それらを仕事にしている方々がごく自然にいる社会になるといいですね。例えば,データサイエンスを学んできた学生たちが就職先を考えるときに,自然に気象データアナリストという仕事が思い描けるような社会になればいいな,と思います。――天気予報はどのようにして導かれて いるのですか。 天気予報はスーパーコンピュータを使ってシミュレーションで出されています。天気予報の精度が年々上がっているのは,コンピュータの性能が上がり,より細かくシミュレーションを行えるようになったからです。また,衛星が上がり,衛星の高度利用が可能になったことも天気予報の精度向上につながっています。 天気予報で一番最初にするのは,まず,世界の天気を予想します。地球を20km 四方で格子状に区切った地点の数十秒後の予想をし,そのまた数十秒後を予想し,と繰り返して数時間後の予想をします。次に,世界から日本全域に範囲を狭め,5km 四方で格子状に区切った地点の予想をします。こうして算出された予想を2km 間隔で見たものが,ご家庭でよく見られている天気予報になります。 初めから地球全体を細かな範囲でシミュレーションするのが一番いいのでは,と思われるかもしれませんが,そうするとコンピュータに負荷がかかりすぎ,時間がかかるため,このようにしています。また,このようにすることで,5km 四方の予想では39 時間先まで,20km 四方の予想では264 時間先まで予想することができます。 これを一日に何度も行い,データを更新しています。天気予報の精度は年々上がっています。――気象庁から提供している気象データには, どのようなものがありますか。 気象庁から提供しているデータについては,気象警報・注意報,予報などのほかに,気象衛星からの画像やスーパーコンピュータで予測・解析された3次元メッシュデータなど,さまざまなものがあります。 主流となっているのはアメダス(地上・地域気象観測システム)による降水量,気温,湿度,風向,https://www.wxbc.jp/ 平成29 年3 月7 日設立。気象データを活用した新たなビジネスの創出を推進する,気象事業者,産業界,学識経験者,関係省庁,地方公共団体を構成員とした産学官の連携組織。WXBC:気象ビジネス推進コンソーシアムロスが減り収益もアップし,従業員の方の休みも取りやすくなったとのことです。 漁業では,宮崎の漁ぎょ労ろう長ちょう日誌を漁師さんたちにお願いして何冊も集め,漁獲量や海水温,網を下した場所などをデータ化し,気象データと合わせてコンピュータに学習させた会社があります。業務の負担軽減や技術継承のために効果が期待されます。 農家では,経験者の農作業を数値モデル化し,ビニールハウス内にセンサーを入れて,気象デー風速,日照時間などです。過去からのデータの蓄積が多く,相関が見やすくビジネスに使いやすいのだと思われます。また,気温などは精度が高いので好まれます。 気象庁には,さまざまな観測装置から得られた――気象データを扱う上で注意しなければならないことはありますか。 気象予測はコンピュータのシミュレーションにより複数の結果が出力されます。予測は時間と共にぶれていき,いくつかに散らばっていくものでデータの信頼性を見極める力が必要です。気象データアナリストが企業の中にいることが普通と感じられる社会に。す。直近の予想は正確にできても,時間と共にだんだんと予測にズレが生じ,50 個ほどの予測に散らばる事もあります。気象データを正しく扱うためには,予測が複数出たときに,統計的にどう扱うかという特殊なスキルがないと,事業活動においてミスリードをしてしまうかもしれません。普通のデータとは少し違うものを扱う知識が必要になります。 予測に限らず実際に測定されたデータであっても間違いがないかは厳しく精査しています。観測機器の故障や,データを送信する際のコード化で間違いが起き,正しくない情報が伝わってくることもあります。気象データは過去のデータでも見直しを行うため,修正版が公開されることもあります。▲ひまわり ▲アメダス ▲ 20kmメッシュタと組み合わせて生産性を上げています。 建築業では,作業中の熱中症対策への活用があります。「作業者みまもりサービス」は,温度や湿度のデータをもとに,こまめに水分や休憩をとるようアドバイスします。 海運業では,どこを船が通って行けば安全か,だけではなく,よりエコノミーに航行していくことを考え,風や潮の流れのデータなどが活用されています。 さまざまな業種で,気象データが有効に活用されています。気象データだけでなく,これまでに蓄積されてきた個別のデータと組み合わせることで,生産性の向上など,より業務の改善が見込まれます。気象観測データがあります。これらのデータから,各種予測資料や気象情報を作成しています。(事務局)気象庁総務部情報利用推進課 気象ビジネス支援企画室4 算数・数学情報誌 ROOT No.25 算数・数学情報誌 ROOT No.25 5