ブックタイトルROOT No.26 『中学数学』教科書特集号

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概要

ROOT No.26 『中学数学』教科書特集号

―「数学的な見方・考え方」とはどのようなものですか? 今回の学習指導要領の改訂において,最も重要なキーワードの一つが「数学的な見方・考え方」であることに疑いの余地はありません。 前回の学習指導要領の改訂では,数学科の目標の冒頭に「数学的活動を通して」という文言が付け加わりましたが,それは,前回の改訂において最も強調,重要視したかったキーワードが「数学的活動の充実」だったからです。今回,目標の冒頭に付け加えられた文言は,まさにこの「数学的な見方・考え方を働かせ」という文言です。 一方で,前回の改訂における「言語活動の充実」や,今回の改訂における「主体的・対話的で深い学び」と同様に,何か新しいキーワードが登場したからといって,これまでとは全く違う新しい取り組みを始めなければならないということではありません。特に「数学的な見方・考え方」は,本来,数学をする上で欠かすことのできないものですので,これまでの数学の学習や教科書の紙面においても少なからず登場しているはずです。 例えば,3 年「関数y=ax2」の導入の授業を考えてみましょう。新しい教科書の3 年p.88 ~ 89 で―「 数学的な見方・考え方」の指導ではどのようなことに気をつけたらよいですか? 前述のような学習活動は,おそらく,これまでの授業の中でも十分に取り組んでこられた活動だと思います。つまり,これまでの学習活動の中で「数学的な見方・考え方」の指導が行われていなかったというわけではありません。むしろ,そのような指導に力を入れておられた先生もいらっしゃると思います。そのような意味で,今回の改訂では,これまでの学習活動を活かしつつ,「数学的な見方・考え方」の指導について,さらに次のようなことを意識すればよいでしょう。・授業の前に,本時で生徒に働かせてほしい(身に付けさせたい)見方・考え方を明確にしておくこと。・生徒自身が見方・考え方を働かせること(働かせられるようにすること)。・働かせている見方・考え方を明らかにし,生徒が意識できるようにすること。―「 数学的な考え方」には具体的にどのようなものがありますか? 「数学的な見方・考え方」について,『中学校学習指導要領(平成29 年告示)解説 数学編』(文部科学省,2018,p.21)では,次のような解説がなされています。「数学的な見方・考え方」は,本来,数学をする上で欠かすことのできないものです新学習指導要領の中学校数学科の目標に「数学的な見方・考え方を働かせ」という文言が入りました。「数学的な見方・考え方」とは何でしょうか。どうすれば,生徒が数学的な見方・考え方を働かせる授業を実現できるのでしょうか。令和3年度版『中学数学』の監修者である岩田耕司先生に解説していただきます。これまでの学習活動の中で「数学的な見方・考え方」の指導が行われていなかったというわけではありません「数学的な考え方」は大きく三つの考え方で整理することができます●福岡教育大学 准教授 岩田耕司 先生数学的な見方・考え方 を働かせる生徒を育てるために▲ 2 年p.6 ?7▲3年p.89は,斜面を転がるボールの1 秒ごとの位置が示され,与えられた情報から5 秒後のボールの位置を予想する問題が提示されています。 さて,5 秒後のボールの位置を数学的に予想するには,どのようにすればよいでしょうか。そのためには,まず,ボールが転がり始めてからの時間と転がった距離との関係に着目する必要があるでしょう。このような,数学的に考える際に着目する視点(目の付け所)を,数学的な見方と呼んでいます。さらに,5秒後のボールの位置を予想するためには,それらの関係を表に整理してきまりを見つけたり,見つけたきまりを式に表したりすることが必要です。 このような,表や式などの数学的な表現を用いて考えることは,数学的な考え方の一つの例です。そのほかにも,ボールが転がり始めてからの時間と距2秒後1秒後0秒後40(m)20100304秒後3秒後2秒後1秒後0秒後40(m)20100304秒後3秒後次の表は,前ページの図のような斜面でボールを転がしたときの,転がり始めてからの時間と,転がった距離の関係を表したものです。このボールは,5秒後にはどこまで転がるでしょうか。予想してみましょう。何か規則性はあるのかな。時間(秒) 0 1 2 3 4 5 …転がった距離(m) 0 2 8 18 32 …和かず也や さん彩あやさん陸りくさん5秒後には4 0mくらいまで転がるかな。それとも,もっとかな。時間と距離は比例しているのかな。転がった距離は,一定の割合では増えていないね。真央さん関数y=ax24章1 年では比例と反比例,2 年では1 次関数を学びました。この章では,新しい関数について学び,関数をいろいろな場面で活用できるようになりましょう。89離の関係を,時間の2乗を考えることで比例に帰着して考えることも,数学的な考え方の例にあたります。これは「統合的な考え方」と呼ばれる考え方で,今回の改訂で特に重要視されています。 「数学的な見方・考え方」のうち,「数学的な見方」は,「事象を数量や図形及びそれらの関係についての概念等に着目してその特徴や本質を捉えること」であると考えられる。また,「数学的な考え方」は,「目的に応じて数,式,図,表,グラフ等を活用しつつ,論理的に考え,問題解決の過程を振り返るなどして既習の知識及び技能を関連付けながら,統合的・発展的に考えること」であると考えられる。以上のことから,「数学的な見方・考え方」は,「事象を,数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉え,論理的,統合的・発展的に考えること」として整理することができる。・知識及び技能だけでなく,見方・考え方も繰り返し使うことで定着を図ること。62 年巻頭 190322◎ 右の図のように,1辺にn個ずつ碁ご石いしを並べて正三角形の形をつくる。このときの碁石の総数をnの式で表そう。 ■1辺が5個の場合 ■1辺が6個の場合次のような問題を考えるとき,みなさんは,どのように考えてきたでしょうか。上の場面で,彩さんは, いくつかの場合から予想するという「数学的な見方・考え方」を使っています。このように,みなさんは,数学の学習の中で「数学的な見方・考え方」を使って問題を解決してきました。「数学的な見方・考え方」は,ほかにもいろいろあります。数学的な見方・考え方を身につけよう!根こん拠きょを明らかにする大切 な見方・考え方図と式を関連づけて説明する条件を変えて考える大切 な見方・考え方正三角形→ 別の図形いくつかの場合から予想する大切 な見方・考え方具体的な数で考える「正三角形」を「正方形」に変えても,同じように考えられるかな。(n-1)個のまとまりが3つあるので3(n-1)個です。5 個6 個n 個5 個6 個n 個5 個6 個n 個彩あやさん真ま央おさんn 個n 個 n 個 n 個和かず也や さん1辺が5個や6個の場合で考えると…。7◎ 次の3つの計算についてふり返ろう。◎ 2a+3aは,どのように計算すればよいかな?「数学的な見方・考え方」は,みなさんが大人になってからも,生活や仕事の中で使っていくものです。大切 な見方・考え方を意識して学習を進めていきましょう。関連づけてまとめる大切 な見方・考え方共通する考え方に着目する関連づけて考える大切 な見方・考え方図と式を関連づける同じように考える大切 な見方・考え方ある数のいくつ分になるかを考える彩さん陸りくさんこの教科書では,大切 な見方・考え方 のついたラベルで示しているよ。陸さん 和也さん20+300.2+0.3 27+ 37広げて考えるな見方・大切広げて考えるな見方・考え方大切広げて考えるな見方・考え方大切広げて考えるな見方・考え方大切広げて考えるな見方・考え方大切な見方・大広げて考えるな見大切数学の問題にするな見方・考え方大切知ってな見方・考え方大切切方・考え方考え方いることを使えるようにする数量の関係に着目するな見方・考え方大切考え方広げて考えるな見方・考え方大切2+3a2 3真央さん が2つと3つ。 170. 1が2つと3つ。10が2つと3つ。上の3つの計算と同じように考えると…。右の図の面積から考えると…。各学年の巻頭では,これまでの学習経験と関連付けることで,「数学的な見方・考え方」を働かせながら数学的活動に取り組んでいくイメージをつかめるようにしています。8   算数・数学情報誌 ROOT No.26 算数・数学情報誌 ROOT No.26 9