ブックタイトルROOT No.26 『中学数学』教科書特集号
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ROOT No.26 『中学数学』教科書特集号
囲を第3小節で,分けて扱っています。初学者は,箱ひげ図の「箱」と「四分位範囲」を混同し,「箱が右に寄っている」というべきときに「四分位範囲が右に寄っている」と表現することがあります。学習場面を分けることで,それぞれの用語の意味を確実に習得できるようにし,その後で,範囲,四分位範囲と箱ひげ図の関係をまとめるようにしました。 3年では,標本調査の結果(標本平均)をヒストグラムと箱ひげ図に表す場面を設けました。標本によって平均値などが変動することを標本変動(中学校では扱わない用語)といいますが,これらのグラフを用いることで,標本の大きさが標本調査の結果にどのように影響するかを,実感を伴って理解できるようにしました。 外食や家電製品などを購入するとき,インターネットで他人の評価を参考にして決めたりしませんか?情報化が急速に進む社会では,データを基にして自分の行動を決める機会が増えています。そのため,統計的リテラシーの重要度は,今後ますます高まっていくことでしょう。 このような社会の変化を踏まえ,今回の学習指導要領の改訂では,小・中・高等学校教育を通じて統計的な内容が充実しました。 小学校では,「データの活用」領域が新設されました。ここで注目したいのは,小5と小6に「統計的な問題解決の方法」が入ったことです。 「統計的な問題解決の方法」とは,問題(Problem)→計画(Plan)→データ(Data)→分析(Analysis)→結論(Conclusion)という5つの段階を経て問題を解決することで,PPDAC サイクルといわれています。この問題解決の方法は,中学校,高等学校でも継続して活用していくものです。 主体的・対話的で深い学びを実現するためには,生徒にとって身近で親しみやすいこと,生徒を「知りたい」「解決したい」という気持ちにさせることが重要です。一方で,データに含まれる値の個数や,分布の傾向がはっきりしていて比較がしやすいといった,学習材としての扱いやすさも兼ね備えていなければなりません。 もう1つ重要なのは,小6から中3までのすべての学年に「批判的に考察する」という文言が入ったことです。これは,統計的な問題解決の過程を経て出した結論の妥当性について別の観点や立場から検討したり,第三者によって提示された統計的な結論について信頼できるのかどうかを検討したりすることです。 中学校では,「資料の活用」領域が「データの活用」領域に変わりました。これは,小・中・高等学校の学習のつながりや,生活の中でのデータの活用が,一層重視されたことを意味しています。●1年 従来通り,ヒストグラムや相対度数を扱います。そこに,累積度数や累積相対度数が加わります。さらに,従来は2年で扱っていた統計的確率を1年で扱うことになります。 一方で,用語「平均値,中央値,最頻値,階級」が中1から小6へ移行しました。 また,1年で扱っていた誤差や近似値,数をa*10n の形で表すことは3年へ移行しました。●2年 「四分位範囲や箱ひげ図」が新たに加わります。「同様に確からしい」ことに基づいて考える数学的確率は,従来通り2年で扱います。●3年 標本調査の内容は従来通りですが,1年から誤差や近似値,数をa*10n の形で表すことが移行してきました。これらは軽視されがちですが,推測統計を学ぶ上で,重要な概念です。 データを活用するためには,用語の意味を正しく理解したり,グラフから情報を的確に読み取ったりすることが必要です。そこで,新しい内容や用語については,丁寧な説明を心がけました。また,新しい概念も,既習の内容や考え方を基にして丁寧に扱うようにしました。 1年では,小学校の内容になった代表値について,学び直しができるようにしました。 2年では,箱ひげ図のしくみを指導する場面で,小6で学ぶことになったドットプロットと対応させて説明しています。初学者に多くみられるのが,箱ひげ図の箱やひげが長いところには値が多く分布しており,短いところには少ししか分布していないと誤って捉えることです。ドットプロットを箱ひげ図と併記することで,このような誤りを防ぐように工夫しました。 また,四分位数の求め方や箱ひげ図のかき方といった基礎的・基本的な内容についても,細かなステップで〈例〉〈問〉を設けることで,確実に習得できるようにしました。 さらに,箱ひげ図のしくみを第1小節,四分位範233データの活用7章度数分布表やヒストグラムから,データの代表値を求めよう。小学校では,次の3つの代表値と,それらの求め方を学びました。! 注意 中央値をメジアン,最頻値をモードともいいます。227ページの表2と表3から,それぞれのデータの最頻値を求めなさい。 表3のデータにおいて,最も多く現れているのは9.4℃の5 回です。しかし,9.9℃が4 回現れていることや,3 回現れている値が複数あることを考えると,9.4℃がデータを代表するほど多く現れているとはいえません。 このような場合,次の例1のような方法で求めた値を最頻値とすることがあります。めあて問1例1 度数分布表やヒストグラムから求める最頻値前ページの図2では,9℃以上10℃未満の階級の度数が最多です。この階級の階級値9.5℃を最頻値とします。問2 前ページの図3から,20世紀後半のデータの最頻値を求めなさい。3 階級値を使った代表値の求め方データの中で最も多く現れている値,または度数分布表やヒストグラムで度数が最も多い階級の階級値を,そのデータの最頻値といいます。確かめ ?算数 p.223◆平均値……データの個々の値あたいが等しい大きさになるようにならした値。 データの個々の値を合計し,値の個数でわって求める。◆中央値……データの値を大きさの順に並べたときの中央の値。 値が偶ぐう数すう個ある場合は,中央の2つの値の平均値を中央値とする。◆最さい頻ひん値ち ……データの中で最も多く現れている値。55101520171データの分布と確率6章前ページのアの図のデータの範囲と四分位範囲は,次のように求めます。 (範囲) =15-0=15 (点) (四分位範囲) =12-3=9 (点)前ページのウ,イ,エの図のデータの範囲と四分位範囲をそれぞれ求めなさい。エの図のデータは,イの図のデータに「24」という11 個目の値を追加したものです。エの図のデータにおいて,追加した値の影えい響きょうをより強く受けているのは,範囲と四分位範囲のどちらですか。 範囲と四分位範囲についてまとめると,次の表のようになります。問1問2例1 範囲と四分位範囲の求め方考えようウとエの図を比べて,「13 点以上とった試合数は,A選手よりB選手の方が多い」といえますか。その答えを,169 ページの表2で確かめなさい。まちがえやすい問題範囲四分位範囲求め方(最大値)-(最小値) (第3四分位数)-(第1四分位数)表すことがらデータにふくまれるすべての値の散らばりの程度中央値付近にある約50%の値の散らばりの程度箱ひげ図端はしから端までの長さに表れる箱の長さに表れるかけ離はなれた値の影響受けやすい受けにくいA選手(11試合)B選手(11試合)0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 (点)ウエ範囲(点)四分位範囲(点)A選手ア15 9ウB選手イエ5510101520206デザインベース 181225標本の大きさを変えて,同じような実験をしてみよう。どんなことがわかるかな。対話シート4 ?p.2870105152011 13 15 17 19 21 (分)0105152011 13 15 17 19 21 (分)(個) (個)11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 (分)標本の大きさが10の場合標本の大きさが30の場合アアイイある学級の生徒20 人が,前ページの例2のデータから,次のア, イの場合について,それぞれ1 回ずつ標本を無む 作さく為い に 抽ちゅう出しゅつして,標本の平均値を求めました。ア 標本の大きさを10とした場合イ 標本の大きさを30とした場合右に示したのは,その20 人が求めた標本の平均値を小さい順に並べたものです。 これらの数値を見ると,ばらつきがあることがわかります。 そこで, ア, イの20 個ずつの平均値を整理して,分布の傾けい向こうを比べてみましょう。下の図は,上のア, イのデータについて,それぞれヒストグラムと箱ひげ図に表したものです。これらの図から,どんなことがわかりますか。問2比べて考える大切 な見方・考え方ヒストグラムの形,山の数,位置,高さ範はん囲い ,四分位範囲など話し合おうア 標本の大きさが10の場合(分)イ 標本の大きさが30の場合(分) 1 1 .8 13.9 14.2 14.4 15.015.3 1 5.6 15.8 1 5.9 15.916.0 16.2 16.3 16.6 17.417.7 18.2 18.8 19.6 20.81 3. 6 14.9 15.2 1 5. 3 1 5.415.5 15.6 15.6 15.6 15.815 .9 16.2 1 6.3 16.5 16.716.7 16.8 16. 9 1 7.0 17.8WEB15105▲ 1 年p.233▲ 2 年p.171▲3年p.206「資料の活用」から「データの活用」へ「箱ひげ図」などが加わった「データの活用」領域の指導について,不安を感じている先生もいらっしゃるのではないでしょうか。令和3年度版『中学数学』の監修者である西仲則博 先生に,「データの活用」領域の指導について解説していただきます。●近畿大学 講師 西仲則博 先生統計的 リテラシー を育成するために学習内容の変更点基礎的・基本的な知識及び技能の確実な習得身近な気象データを使った問題設定統計的な問題解決の方法問 題(Problem)計 画(Plan)データ(Data)分 析(Analysis)結 論(Conclusion)1662 年6章 190322次の図は,前ページの問1の箱ひげ図に,もとのデータの値あたいをかき入れたものです。 箱ひげ図では,4 つの区間を表す箱やひげが長くても短くても,そこにふくまれる値の個数は,すべての値の個数の約25%です。下の図は,163 ページの表1と同じ期間に,各地で猛もう暑しょ日び が年間何日あったかを表した箱ひげ図です。次の(1)~(3)の文章にあてはまるのは,それぞれ福ふく岡おか,大おお阪さか,東とう京きょうのうちのどこですか。(1) データの中央値が3 地点で最も少ない。(2) この20 年間で,猛暑日が1 日もなかった年がある。(3) この20 年間の半分以上で,猛暑日が年10 日以上あった。問3の箱ひげ図において,猛暑日が7 日あった年は,左のひげの区間,箱の区間,右のひげの区間のどの区間にあてはまりますか。地点ごとに答えなさい。問3の箱ひげ図から,福岡,大阪,東京の中で猛暑日が最も多いのは,どこといえるでしょうか。問3問4問5東京大阪福岡0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 (日)箱やひげが長いほど値が多くあるわけではないんだね。福岡5個5個5個5個0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 (日)2 322034 55 66 888101013 22 24 30次の課題 値の個数が4でわり切れない場合,四分位数はどのように求めるのかな。話し合おう補充問題30?p.220551010151520▲ 2 年p.166データの分布と確率6章真ん中の値を除いて,残りを等しい個数に分けるんだね。表2から,A選手のデータの四分位数を求めましょう。データの値が奇数個ある場合は,真ん中の1 個を除いて,その値より小さい方と大きい方に分けます。・中央値は7 点です。( 2 )・第1四分位数はデータの値の小さい方の 約半分の中央値で,3 点です。( 1 )・第3四分位数はデータの値の大きい方の 約半分の中央値で,12 点です。( 3 )表2のB選手のデータの最小値,最大値,四分位数を求めなさい。下の図に,表2のA選手とB選手のデータの箱ひげ図を,それぞれかきなさい。問3問4 最近の1 試合で,A選手は6 点,B選手は24 点とりました。 次の表2は,この1 試合の結果を167 ページの表1に追加して,選手ごとに,得点が少ない方から順に並べかえたものです。 データの値が奇き 数すう個ある場合,167 ページの例1のように,値を小さい方と大きい方の半分ずつに分けることができません。例3 データの値が奇数個ある場合の四分位数の求め方表2 11試合の試合ごとの得点(得点が少ない順)A選手(点) 0 2 3 4 6 7 8 11 12 14 15B選手(点) 0 3 6 6 8 8 9 10 11 15 240 ,2 ,3 ,4 ,6 ,7 , 8 ,11,12,14,15↑最小値↑ ↑ ↑ ↑1 2 3 最大値A選手(点)B選手(点)最小値0第1四分位数3中央値7第3四分位数12最大値15補充問題31?p.2205 51010151520▲ 2 年p.16912 算数・数学情報誌 ROOT No.26 算数・数学情報誌 ROOT No.26 13