ブックタイトルROOT No.26 『中学数学』教科書特集号
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ROOT No.26 『中学数学』教科書特集号
▲ 1 年p.224▲ 1 年p.232▲ 1 年p.231▲ 1 年p.231▲ 1 年p.258 そこで,1年7章では「3月の平均気温は高くなってきているか?」,2年6章では「猛暑日が多いのはどこか?」「猛暑日は増える傾向にあるか?」といった気象に関する問題を設定し,その問題を解決する過程でヒストグラムや代表値,箱ひげ図などを学んでいける構成にしました。 気象データは気象庁ウェブページから容易に得ることができるので,情報活用能力を育成するという意味でも利用価値があります。教科書で取り上げているのは特定の地域のデータですが,「自分たちの住んでいる地域ではどうか調べてみたい」と発展させていって欲しいという願いも込めています。 また,「特定の地域を調べただけで地球温暖化が進んでいるといえるか」と批判的に考察したり,「寒い日は減少しているのか」といった新たな問題を見いだしたりして,PPDAC サイクルを回していくことも可能です。 地球温暖化や異常気象といった実社会の問題を数学の問題として捉えるなどして,環境問題,SDGs といった現代的な諸課題へと学びを広げていくことを期待しています。 1年7章の扉では,高知市の3月の平均気温の変化のようすを表した折れ線グラフから,「気温は高くなってきているといえるか?」という問題について話し合う場面を設定しています。 本来,折れ線グラフは変化のようすを表すためのものですが,このグラフは上下動が激しすぎて長期的な変化を捉えることが困難です。そこで,20 世紀を前半と後半の2つに分け,2つのデータの分布を比較することで最初の問題を解決するという展開とし,統計的問題解決の過程で度数分布表,ヒストグラム,代表値などを活用しながら学んでいくようにしました。 「データの活用」領域では,データを表やグラフに整理するだけではなく,そこからデータの分布の傾向を読み取り,比較し,批判的に考察し,判断することまでが求められています。しかし,統計グラフを的確に読み取り,読み取ったことを根拠として説明することは,簡単ではありません。そこで,新しい教科書では,統計グラフの読み取り方や,根拠を示して説明することについて,そのプロセスを示しながら,一層丁寧に扱うことを心がけました。 次の図は,前述の「20 世紀前半」と「20 世紀後半」に分けた3月の平均気温のデータの分布を,それぞれヒストグラムに表したものです。 2つのヒストグラムを比較して話し合う場面では,次の表を与えています。デザイン-1 年7 章 190314 次の6つの図は,227ページの表2と表3のデータについて,階級の幅はばを変えて,3通りずつかいたヒストグラムです。表2と表3のデータの分布のちがいを比ひ 較かくしたいとき,どの図とどの図を使うのがよいでしょうか。その理由も考えましょう。 同一のデータをもとにかいたヒストグラムでも,階級の幅を変えると形が変わり,印象も変わることがあるので注意が必要です。問4WEB08642(回)08642(回)7 8 9 10 11 12 (℃) 7 8 9 10 11 12 (℃)05040302010(回)05040302010(回)4 8 12 16 (℃) 4 8 12 16 (℃)05101520(回)6 7 8 9 10 11 12 13 (℃)05101520(回)6 7 8 9 10 11 12 13 (℃)図6 20世紀前半 (階級の幅0.2℃)図7 20世紀後半 (階級の幅0.2℃)図5 20世紀後半 (階級の幅4℃)図4 20世紀前半 (階級の幅4℃)図2 20世紀前半 (階級の幅1℃)図3 20世紀後半 (階級の幅1℃)話し合おう551015207章次の表の1 ?5 は,前ページの2つのヒストグラムの特とく徴ちょうを整理するためのものです。この表の空くうらんをうめて,2 つのデータの分布についてどんなことがいえるか考えましょう。また,各自で考えたことを話し合いましょう。次の枠わく内の文章は,2 つのデータの分布を比較してわかったことを説明したものです。にあてはまる数やことばをかき入れなさい。また,最後の( )にあてはまることがらとして最も適切なものを,次のア?ウの中から1つ選びなさい。問2問3説明できるかな?図2 20世紀前半図3 20世紀後半1 山の数1つ2 山が最も高い階級9℃以上10℃未満3 2 の度数16回4 2 より左側の階級の 度数の合計19回5 2 より右側の階級の 度数の合計15回話し合おう比べて考える大切 な見方・考え方共通する特とく徴ちょうやちがいに着目する根こん拠きょを明らかにする大切 な見方・考え方分布の特徴をもとに説明する55101015 この表の①~③の視点で比較すると,2つのヒストグラムはどちらも単峰型で,山が最も高い階級は同じ,山の高さもほぼ同じであることがわかります。しかし,④,⑤の視点で比較すると,20 世紀前半は山のピークより左側,20 世紀後半は右側に値が多く分布しているという違いが明らかになります。 このように,具体的な着眼点を示すことで,ヒストグラムの見方を習得できるようにしました。 さらに,2つのデータを比較してわかったことを説明する場面では,空欄を埋めて説明を完成させる問題を設けています。 これらの工夫は,仮説を立て,その仮説が正しいかどうかをデータに基づいて判断し,説明するまでのプロセスを丁寧に示すことで,生徒の思考力,判断力,表現力等を基礎・基本から段階を追って身に付けられるように配慮したものです。 今回の改訂では,内容の変更だけでなく,考え方や学び方への対応が必要とされています。授業では,すでに多くの先生がペア活動やグループ活動を取り入れていますし,自分たちが出した答えについて,もう一度振り返り,検討するということも実践されています。新しい教科書では,それらを後押しする所を設けました。それが,〈問〉についている マークと,その問題文にある「○○と判断できるでしょうか」「○○を選んだ理由について話し合いましょう」といった記述です。 従来の問いとは,少し変わっている所を利用していただき,生徒の豊かな発想をくみ取り,課題を追求する姿勢を育んで頂ければ嬉しいです。 各学年の巻末には,キャリア教育をテーマにしたコラム「数学を仕事に生かす」を設けています。1年では,データアナリストとして活躍されている女性を紹介しています。 ほかにも,コラム「暮らしと数学」として, 1970年の大阪万博の入場者数のデータを統計グラフで分析する話(2年p.194 ~ 195)や,統計グラフを批判的に読み取る話(3年p.218 ~ 219)を取り上げています。 キャリア教育や消費者教育といった側面からも,教科書を活用していただければと思います。 今回の教科書は,データを活用することを学びながら,知識及び技能を習得し,思考力,判断力,表現力等を養うことができるように構成しました。 統計的リテラシーは,社会の変化にも能動的に対応するために必要不可欠な資質・能力です。この教科書を使って,生徒が生き生きとした表情を浮かべながら,統計的リテラシーを身に付けていってくれることを期待してやみません。データの分布の傾向を読み取り判断すること統計的な問題解決の過程の重視1 年巻頭 190314 次の章の学習につながる問題などです。家庭での学習に役立ててください。章の扉とびら・節章の扉 これから学ぶことのきっかけとなる場面です。節 各章はいくつかの節に,節はさらに小節に分かれています。 次の学習に進むための出発点となる問題です。確かめようは,すでに学んだ問題が出発点となります。めあて 学習のめあてを示しています。例1 学習する内容を理解するための具体例です。解答例のうち,ノート風の枠わく内にかかれたものは,標準的な解答かき方を示しています。がある場合は,自分でその例を完成しましょう。問1 学習する内容をより理解するための問題です。次のようなマークがついているものもあります。考えよう 解決の方法などを自分なりに考える問題です。話し合おう 話し合いを通して解決したり, 考えを高め合ったりする問題です。深めよう 学習の過程をふり返るなどして 理解を深める問題です。説明できるかな? 方法や理由などを説明する問題です。やってみよう 学んだことを活用して考える課題です。まちがえやすい問題 まちがえたり誤解したりしやすい問題です。次の課題 新たな問題に目を向けるための問いかけです。学び合おう 自分で考え,みんなで話し合って理解を深めていく小節です。次の章を学ぶ前に確かめすでに学んだ内容であることを示しています。参考になるページを示しているものもあります。その場面で身につけたい数学的な見方・考え方です。大切 な見方・考え方時間にゆとりがあるときに自分で取り組む問題です。チャレンジこの本の使い方補ほ充じゅうの問題がのっているページを示しています。家庭での復習などに役立ててください。補充問題1??p.279***実社会とのつながり最後に批判的な思考や対話へつながる問いの工夫デザイン-1 年章扉 190314次の図は,高こう知ち 県高知市の3月の平均気温の変化のようすを,1901年から2000年まで表した折れ線グラフです。桂かつら浜はまの坂さか本もと龍りょう馬ま (気象庁ウェブページのデータをもとに作成) 像(高知県高知市)1901 19106789012311111920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 (年)(℃) 図1 高知市の3月の平均気温(1901~2000年)この折れ線グラフから,3月の平均気温について,どんなことがいえるかな。折れ線グラフだと,変化のようすがよくわかるね。和かず也やさん 真 ま央おさん気温は高くなってきている?章 データの活用224231データの活用7章次の表の1 ?5 は,前ページの2つのヒストグラムの特とく徴ちょうを整理するためのものです。この表の空くうらんをうめて,2 つのデータの分布についてどんなことがいえるか考えましょう。また,各自で考えたことを話し合いましょう。次の枠わく内の文章は,2 つのデータの分布を比較してわかったことを説明したものです。にあてはまる数やことばをかき入れなさい。また,最後の( )にあてはまることがらとして最も適切なものを,次のア?ウの中から1つ選びなさい。ア 20 世紀の前半より後半の方が高かった。イ 20 世紀の前半より後半の方が低かった。ウ 20 世紀の前半と後半で大きなちがいはなかった。問2問3説明できるかな?図2と図3を比べると,山の数は1 つで同じ,山が最も高い階級も ℃以上 ℃未満で同じ,山の高さもほぼ同じといえる。そこで,9℃未満の階級の度数の合計を求めて比べると,20世紀の前半は 回,後半は 回で, の方が少ない。また,10℃以上の階級の度数の合計を求めて比べると,20世紀の前半は 回,後半は 回で, の方が多い。このことは,2つのヒストグラムを比べたときに,全体的に右側に寄っているのが20世紀の の方であることからもわかる。したがって,高知市の3月の平均気温は,( )といえる。図2 20世紀前半図3 20世紀後半1 山の数1つ2 山が最も高い階級9℃以上10℃未満3 2 の度数16回4 2 より左側の階級の 度数の合計19回5 2 より右側の階級の 度数の合計15回話し合おう比べて考える大切 な見方・考え方共通する特とく徴ちょうやちがいに着目する根こん拠きょを明らかにする大切 な見方・考え方分布の特徴をもとに説明する551010151520252581 年巻末 190314私たちは,企業が集めたデータを数学的に整理して,そこからどのようなことがいえるのかを導き出し,企業が困っていることや改善したいことを解決するお手伝いをしています。例えば,あるお店が「売り上げをのばしたい」と考えた場合,まずは,そのお店のお客様がどのような買い物をたかというデータをもとに分析します。たくさん買ってくれるお客様とそうでないお客様を分類したり,売れる商品の組み合わせを分析したりして,売り上げをのばす方法のヒントを見つけ出すのが私たちの仕事です。分析するデータの中には,入力ミスによるまちがった値あたいが混ざることがあります。また,上のヒストグラムの右端はしに見られるような極きょく端たんにかけ離はなれた値は,入力ミスではなくても,分析の参考になりにくい特とく殊しゅな値と考えられます。分析の前に,何千何万とある値の中からこれらを取り除くことは,よりよい分析を実現するためにとても大切です。その分,責任も大きいのですが,やりがいがあるので,私の仕事の中でも特に好きな作業です。その作業には,ヒストグラムや代表値など,数学の知識が活用されています。数学を仕事に生かす羽は山やま美み 優ゆうさん(データアナリスト)データから導き出す問題解決の糸口プロフィールアナリストとは「分ぶん析せきする人」という意味。大学では理工学部数学科でデータ分析について学んだ。企き 業ぎょうに勤め,データ分析業務に携たずさわる。201515101055173データの分布と確率6章 前ページの図で, 1 から2 にかけて最大値が大おお幅はばに減っていることに疑問をもった和也さんは, 1 のデータの分布を確かめるために,次のようにヒストグラムと箱ひげ図を並べてかきました。 上のヒストグラムからは,1938 年からの20 年間で,猛暑日が20 日以上25 日未満だった年が1 回だけあったことがわかります。一方,箱ひげ図からは,このデータの最大値が24 日であることがわかります。次の(1)~(4)は,それぞれ上のヒストグラムと箱ひげ図のどちらから正しく読み取ることができますか。また,それぞれの値あたいを読み取って答えなさい。(1) 最小値 (2) 範はん囲い (3) 四分位範囲(4) 猛暑日が10 日以上20 日未満だった年の回数 箱ひげ図には,多数のデータの分布を比較するときに比べやすいという特とく徴ちょうがあります。 箱ひげ図だけでなく,ヒストグラムもかくと,データの分布をさらにくわしく知ることができます。これまでに調べたことから,「大阪の猛暑日は増える傾向にある」と判断できるでしょうか。問2問300510(回)(日)0 5 10 15 20 25 30 (日)5 10 15 20 25 30 3535年ごとの猛暑日の日数(1938~1957 年,大阪)右のひげが長いのは,最大値がほかの値からかけ離はなれているからだね。話し合おう1970年の大阪万博の入場者数?p.1945510101515▲ 2 年p.17314 算数・数学情報誌 ROOT No.26 算数・数学情報誌 ROOT No.26 15