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概要

生活&総合navi vol.69

資料館料へアクセスクセス大牟田市立三池カルタ・歴史資料館梶原伸介(館長)日本のカルタ発祥の地として大牟田市立三池カルタ・歴史資料館は,福岡県の南端にある大牟田市に設置されているカルタ,及び郷土の歴史資料を展示・公開する資料館である。国産最古てきすいのカルタとされる「天正カルタ」(芦屋市滴翠美術館蔵)に「三池住貞次(三池に住む貞次)」の記銘があることから,三池地方(現大牟田市域)が日本のカルタ発祥の地とされ,平成3年4月,当地にカルタ専門の資料館「三池カルタ記念館」がつくられた。ただ,一口に“カルタ”といっても,日本古来の百人一首やいろはカルタ,歌カルタ,花札をはじめ,海外のトランプ,タロット,家族合わせなど多種多様なカードがある。当館ではそれらすべてを“カルタ”と定義し,開館以来その収集や保管・展示に努め,現在では1万点を超える所蔵点数を誇る。開館当初はカルタのみを専門に収集・保管・公開する資料館であったが,平成18年に大牟田市歴史資料館と統合し「三池カルタ・歴史資料館」となり,郷土の歴史も同時に学べる施設となっている。当館では,季節ごとに年間4回の企画展を開催しており,1万点以上の資料の中からテーマを設定し,選りすぐりの逸品を公開している。また,「日本のカルタ発祥の地」を記念して,市民を対象とした「市民カルタフェア」,及び百人一首競技かるた愛好者を対象とした「小倉百人一首九州新人かるた競技大会」を開催し,カルタ文化の普及と浸透にも市民カルタフェア努めている。日本最古の「天正カルタ」とカルタのルーツ上記の国産最古のカルタ「天正カルタ」は,縦6.3cm×横3.4cmの小さな紙片で,油絵の具用の顔料で丁寧な手彩色が施されている。表面には西洋風の「棍棒の王」が描かれ,裏面には「三池住貞次」の文字が記されている。この「棍棒の王」のモデルは,ポルトガルの少年王・セバスチャンと言われている。なぜ,現存最古の「天正カルタ」にポルトガル王が描かれているのだろうか。それは「カルタ」という言葉自体が「タバコ」や「カッパ」,「カステラ」などのように,本来はポルトガル語に起源をもつ言葉であり,ポルトガルにちなんだものが描かれたからである。日本とポルトガルとの関係は,1543(天文12)年にポルトガル船が種子島に漂着し鉄砲を伝えたことに始まるが,その後,キリス天正カルタ(復元)ト教や西洋の文物が輸入されるようになり,その中の一つにカルタも含まれていた。日本にもたらされたポルトガルのカルタは48枚一組のもので,棍棒・剣・聖杯・貨幣の4つの紋標と,それぞれのエースの札には竜が描かれている。この竜のエース札を「ドラゴンエース」といい,同時代のイタリアやスペインのカードには見られない特徴をもっている。大航海時代にポルトガル船が寄航したペルシャ・インド・スリランカ・インドネシア・日本の古いカルタには,この「ドラゴンエース」が描かれており,ポルトガル様式のカルタが世界各地で使用されていたことを物語っている。30