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概要

生活&総合navi vol.70

仁」と言って,薬用として珍重しています。「杏」の種は梅干しの種に似て表面が褐色ですが,「銀杏」は白くてツルンとしています。ギンナンにも薬用効果があるため,「銀の杏」と呼ばれたのでしょう。学名はギンナンをラテン語で標記し,「Ginkgo biloba」と言います。2がんばれナラの木・OAKはナラ?カシ?前号の論壇を書かれた高槻氏は,「The Oak Tree」という詩を訳され,「がんばれナラの木」というブログの中で,東日本大震災で被災された方を励ます活動を行っています。各地方の方言に替えて朗読されているブログは,一聴の価値があります。さて,そのナラの木ですが,東北地方のナラは,「ミズナラ」の和名で親しまれています。英語でOAKと言えば「樫」と訳されますが,実態は「楢」。特にヨーロッパのOAKは,「オウシュウナラ」と呼ばれ,実は,日本のミズナラに近い種類なのです。・雑木林ができるまで関東では,ナラと言えばコナラしんたんりんです。薪炭林の主役です。江戸時代に樫の森が開墾され,コナラやクヌギが中心の林に樹種変換されたためです。関西では,平安時代から周囲の森が切られてアカマツ中心の二次林が薪炭林として成立しました。ゆえに,マツタケが採れるようになったのです。戦後のエネルギー革命により石油がエネルギーの中心になる以前は,コナラやクヌギ,マツなどの雑木林が生活を支えていたことがわかります。・落葉と常緑樹木には,冬に葉を落として寒さと乾燥に耐える樹木と,冬でも葉を付けている樹木があります。冬に落葉する性質は,乾季に葉を落とすほうが有利なあたたかい環境で身につけたと言われています。落葉すれば寒さにも耐えられますので,寒い環境まで分布を広げられたのです。なお,いつも葉を付けているように見える樹木でも,1~3年で古い葉から落葉しているのです。葉がない時期がないため,常緑と言われる所以です。・根の役割「がんばれナラの木」の詩の中で,強い風に枝や葉を吹きちぎられても立ち続けるナラの木は言います。「いくら風が強く吹いても根まで吹きちぎることはできない」と。土の中に伸びる根は見えないために実態があまり理解されていません。根の重要な役割は,樹体をしっかり支えること,そして養水分を吸収して葉や樹体に供給することです。木の調子が悪くなる原因の多くが,根の障害です。根に目を向けることが,木を知る近道なのです。根の先端は,常に生長しながら養水分を取り入れる仕事を続けます。伸びている先端の若い根が,水分を吸収します。若い根の表面からは,細い根(根毛)が伸びており,養水分を集めやすくしているのです。多くの木は菌根菌と共生して,より広く必要な肥料分を集めます。菌にはお礼に,光合成産物(デンプン・糖)を与えています。そして,古い根は樹体を支えるのが仕事になります。根は枝のように分かれて広がることにより,表面積を広くしています。土との接触面を広げることで土をつかむ根の役割が強化されるのです。3葉について考えよう・木は死んだ細胞の塊100年生きた木の根元付近の年輪は,100本あることになります。そして生きている細胞が集まっているのは,秋期では樹皮の内側,形成層のある年輪のもっとも外側の部分です。生きている細胞は師部(養分の通路となるところ)と柔細胞(貯蔵・分解・分泌などの生理作用を営む細胞)が中心で,全体の1~2%ほどです。そのため,木部の大部分は死んだ細胞なのです。例えばナラの木は,水が吸い上がる導管が太くはっきりしていますが,実は導管の細胞は死んでいるのです。中身が抜け,水の通導が可能になった細胞の連なりなのです。動物は生きた細胞の塊ですが,木は生きてきた証を残し続ける死んだ細胞の塊なのです。死んだ細胞は木部となって樹体を支える役目をします。木部が詰まっていれば,樹高が高くなっても,強い風9