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概要

生活&総合navi vol.70

論壇が吹いても,幹が傾いても,耐える力が持続します。そのため,木部の中心では,生きた細胞の老廃物を抗菌物質に変えて貯蔵し,詰まった状態を保っているのです。なお,抗菌物質は褐色になることが多いので,心材は褐色になりやすいのです。人は,木材として心材の部分を活用します。乾燥させて使用すれば,世界最古の木造建しんばしらに築である法隆寺・五重塔の心柱使用されているヒノキのように,1400年も立ち続け,強度を保つことができるのです。・葉の付いた枝の樹齢落葉樹では,葉が付いている枝は今年の春から伸びたものです。秋に散るときには,葉の付け根に次の芽があります。上の桜の枝の写真のように,プックリしている芽は花が入っている花芽,尖っていたら葉芽です。がりん芽は通常,芽鱗(芽をおおって保護するうろこ状の葉)に包まれ,寒さと乾燥に耐えています。前述したように,常緑樹では葉は2~3年は付いていますが,新しく活力のある葉は今年伸びた枝に付きます。・生きた細胞は捨てられる?葉は,木の中でも生きた細胞の塊です。葉には気孔という穴があり,空気が流通しています。その空気から光合成のために炭酸ガスを取り入れているのです。そのとき水分は,水蒸気となって葉から出ていきます(蒸散)。天気がよくて蒸散が活発だと,根からの水分補給が間に合わず,水ストレス(不足)状態になります。これが葉のしおれです。今年伸びた葉は5月から7~8月まで盛んに光合成を行います。秋になると活力が低下し,落葉樹は老化してくる葉を捨てる準備を始めます。落葉する前に葉緑素が分解され,赤や黄色に発色します。これが紅葉現象です。木において,生きた細胞からなる葉は,仕事が終われば捨てられる運命なのです。・葉は精密な化学工場木は,根から吸い上げた養水分と炭酸ガス,太陽の光のエネルギーで光合成を行い,生きるために必要なものをつくり出しています。葉がつくる有機物は,常温常圧の環境下において人間の手ではつくり出せません。葉は精密な「化学工場」のようなはたらきをしているのです。よって,わたしたち動物の生存は,植物の有機物生産に支えられているということが言えます。モミジバフウの葉4校庭の木々は身近な教材・サクラは花咲く時だけにあらず校庭に植えられたサクラは,花が咲く時こそ存在感があります。特にソメイヨシノという品種は,接ぎ木苗という手間をかけているクローンのため,花時が揃います。花が葉より先に咲く性質が,枯れ木に花咲く風情を演出して,豪華で美しく,卒業式や入学式の思い出とも重なります。だから春になると,改めて身近にこんなにもたくさんのサクラがあったのかと思わせるのです。ソメイヨシノの花花が話題になる一週間は夢のように過ぎ去り,サクラは忘れられてしまいます。さてここで,サクラの生き方をおさらいしてみましょう。最近では,春に咲くサクラだけでなく,秋に咲くサクラも話題となっています。もともとサクラの発生は,中国の雲南省あたりではないかと言われています。雲南省から西をめざしたサクラは,ヒマラヤ山脈の南斜面,標高2000m付近をたどり,ビルマ,ブータン,ネパールに広がっていきました。花はピンクの大輪が咲き,蜜が多く,ヒマラヤザクラと言います。そして,東をめざしたサクラは,氷河期に大陸とつながっていた日本にまで分布を広げました。温帯域に広がったサクラは,寒さに当たらないと花が咲き始めない性質を獲得したため,冬を経て,春に咲くようになりました。日本では,四季の変化とともに10