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概要

生活&総合navi vol.70

おしえて!藤井先生藤井千春早稲田大学教育・総合科学学術院教授。博士(教育学)。1958年千葉県生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。茨城大学助教授などを歴任。ジョン・デューイの哲学と教育学を研究。著書『問題解決学習のストラテジー』『子ども学入門』『問題解決学習の授業原理』(いずれも明治図書)など多数。Q研究授業の見学に行くと,しばしば発表の場面に出合います。発表も大切ですが,むしろそこに至るまでのプロセスが大切だと思います。発表に至るまでのプロセスを大切にするためには,どのようなことに気をつけるとよいでしょうか。A調べた情報を丸写しにした原稿を棒読みする発表からは,子どもたちの学びもただし,中間発表とは単なる予行演習ではありません。友だちの意見を聞いて,調べ直した育ちもほとんど見ることはできません。価値ある学習活動が遂げられているとは言えません。ワクワクドキドキしながら,大勢の前で発表をやり遂げるという経験は,子どもたちに自信や意欲を育てる上で重要です。ただし,お仕着せ的に与えられ,やらされる発表ではよくありません。多くの人に伝えたいという思いから,相手に伝わることを意識して,自分たちで必要な情報を調べ,その意味を考え,方法を工夫して準備していく活動が展開されなければなりません。そのようなプロセスをたどって発表を成功させることにより,習得した知識や技能は活用できるものとなり,コミュニケーション能力や自ら学ぶ意欲,能力が育つのです。そのためには,最終的な発表会は学年や全校で,また,保護者や地域の人も招くなど,できるだけ大きな場で行わせるとよいでしょう。そして,そこに至る過程で,小グループ内で,学級内で,あるいはポスターセッション的に,中間発表会を積り,考え直したりと,自分の追究を見つめ直して,追加や修正などの必要性が生じることが重要なのです。友だちからの意見をしっかりと受け止めて,自分にとって有益なアドバイスとして生かすことにより,コミュニケーション能力は育ちます。当然,友だちの発表を聞いて真摯にかかわることからもコミュニケーション能力は育ちます。また,そのようにして事実を調べ直したり,新たな技能を習得したりすることには,その友だちの厚意に応えようという必然性が伴います。だから調べ活動を自分なりに工夫して進めようとします。そのようにして活用を伴って習得された知識や技能は,自分にとって意味のある事実や方法となるのです。子どもたちに学習能力が育つのは,すなわち,知識や技能が自分のものとして習得され,また,他者との協同的活動に参加・貢献できるコミュニケーション能力,総じて言えば,「21世紀型能力」が育つのは,このようなプロセスを踏まえた発表の経験を通じてなのです。み重ねさせることが必要です。12