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概要

生活&総合navi vol.70

資料館料へアクセスクセスみけつくに御食国若狭おばま食文化館「日本人らしく生きるために~御食国若狭おばまの生涯食育~」中田典子(小浜市企画部食のまちづくり課課長補佐)「食のまちづくり」と「生涯食育」福井県の南部に位置する小浜市は,人口約3万1千人余りの小さな市である。目の前には,日本海側唯一のリアス式海岸である若狭湾が広がり,一年を通じて様々な魚が水揚げされる。飛鳥・奈良の時代には,豊富な海産物や塩を朝廷に献上した御食国(みけつくに,御食:天皇の食材)の歴史があり,江戸時代から近代にかけて,海産物を京都へと運んだ道は「鯖街道」として現在も親しまれている。2000(平成12)年8月,地域資源を生かしたまちづくりを進めようと考え,「御食国」の誇れる歴史と現在も連綿と受け継がれている豊かな「食」に着目した。そして「食」を重要な施策の柱としたまちづくり,いわゆる「食のまちづくり」を開始,翌年9月には,全国で初めて「食」をテーマにした自治基本条例である「小浜市のまちづくり条例」を制定した。この条例においては「食育」を重要な分野として位置付け,人は命を受けた瞬間から老いていくまで生涯を通じて食に育まれることから,「生涯食育」を提唱し,ライフステージに合わせた食育事業を数多く実施している。食の魅力を諸感覚すべてで味わえる「御食国若狭おばま食文化館」食のまちづくりの拠点施設として,2003(平成15)年9月に「御食国若狭おばま食文化館」(以下「食文化館」)を開設した。1階のミュージアムスペースには,日本の食文化に関する600種類を超すレプリカや江戸時代の暮らしを表した人形,ジオラマ,写真パネルが並ぶ。例えば,地域の特色が色濃く現れる「全国のお雑煮」は,人気のコーナーであり,多くの来館者がここで足を止めて時間を過ごす。2015(平成27)年3月にはリニューアルオープンを予定しており,壁面グラフィックに「魚図鑑」や「日本の年中行事と食について」などがダイナミックに展示される予定である。ハンズオンの手法も採用することで,一層子どもたちに喜んでもらえる食文化館となるだろう。また,この館最大の特徴は,ミュージアムスペースに「キッチンスタジオ」が併設されていることである。食や食文化を見て読んで学ぶだけでなく,地元の主婦たちからなる市民グループの指導のもと,実際に自分でつくり(料理),味わう(食べる)ことができるのだ。つまり,食文化館は食の魅力を,諸感覚すべてで感じ,学び楽しめる全国唯一の施設なのである。2階には,若狭塗箸や若狭和紙などの伝統工芸の体験ゾーンが設置されている。特に若狭塗箸は,塗箸生産全国シェア80%を占める市の重要な産業である。食文化館では,箸の歴史や文化,作法を学ぶとともに,伝統工芸士指導のもと,世界に一つだけの「マイ箸」の制作もできるのである。さらに,小浜市内の小学生は6年生の2学期になると,全員が自身の卒業証書用の若狭和紙を漉す30