ブックタイトル生活&総合navi vol.70
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生活&総合navi vol.70
きに来館してくれる。このように,様々な角度から日本の食や食文化を学び体験できる食文化館であるが,観光施設という側面だけでなく,小浜市の食育事業の拠点施設としても,これまでに様々な食育事業を生み育てている。子どもの食育キッズ・キッチン市では食文化館の開館を機に,市内の成長期の子どもたちが一人残らず食育を学び体験できる仕組みとして「義務食育体制」を整備した。例えば,食文化館では,ベビー・キッチン(2~3歳),キッズ・キッチン(4~6歳),ジュニア・キッチン(小学5・6年生),中学2年生の家庭科調理実習が行われ,さらに保育所・幼稚園,小・中学校において,それぞれの立地条件や特色を生かした農業体験や水産体験がカリキュラムに組み込まれている。食文化館での食育事業の一例を紹介しよう。「キッズ・キッチン」は,「料理を3教えるのではなく,料理で3教える」。つまり,料理を手段とした教育プログラムと位置付けている。釜戸炊きご飯,丁寧に出汁をとり,旬の地場産食材を何種類も入れた味噌汁をつくり,手摘みの釜煎り茶もいれる。魚をさばく機会もあえて多くもつ。鮮魚をさばき,血や内臓に触れながら,「食べるということは命を頂くこと。命を頂いて自分たちは生かしていただいている。」ということを実感してほしいのである。子どもたちは,本物の包丁を使い,火の管理もするが,しっかりとルールを守るので,怪我をすることなく,達成感や満足感,協調性や感謝の気持ちなど,多くのことをこの体験から獲得してくれる。オリジナルの食生活指針2013(平成25)年度には,小浜市オリジナルの食生活指針「元気食生活実践ガイド」を作成した。このガイドブックでは,科学的根拠に基づく栄養学を中心に,写真や事例なども盛り込みながら詳しく述しんどふじべている。そして,特筆すべきは,「身土不二」(注1)いちぶつぜんたいしょくや「一物全体食」(注2)など,東洋的な考え方を随所に盛り込んでいることである。また,食生活のあり方にとどまらず,郷土の偉人でようじょうしちふかある杉田玄白の「養生七不可」(注3)を用いて気持ちのもち方について触れたり,「いただきます」,「ごちそうさま」という日本のすばらしい習慣の意味についても触れ,日本人が昔から大切にしてきた丁寧な暮らし方そのものが健康につながると書いている。食文化館では,このガイドブックを用いた食育講座も開設している。食育ツーリズム最近では,これらの魅力ある食育事業を地域外の皆さんにも提供しようと,「食育ツーリズム」に力を入れている。小浜市には,食文化館をはじめとして,食を学び体験できる環境が整備されており,指導のノウハウやスタッフも備えている。今後,多くの方に「食育ツーリズム」として小浜に訪れていただき,小浜市民同様に食育を学び体験していただきたいと思っている。注1身土不二人間の身体と土地は切り離せない関係にあり,育ったその土地のものを食べるのが健康によいという考え方。注2一物全体食食材を丸ごと使用し,食することを意味する仏教用語。注3養生七不可杉田玄白が提唱した健康長寿のための七つの心得。31