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概要

生活&総合navi vol.70

せっしょく町の自然には雪食地形という,樹木が茂らず岩肌が出ている地形があります。雪食とは,文字通り雪が食べる地形のことです。つまり,非常に急峻な山に雪が降り,春先に雪崩が起き,雪が表面を食べたような形になり,岩肌が顔をのぞかせるのです。このような現象は世界中探してもあまり見られません。この雪食地形によって,只見地域の山岳景観は非常に急峻で複雑になり,様々な立地環境が形成されています。また,尾根,斜面,平坦地,谷沿いといったところで生育する植物が異なり,これを「モザイク植生」とも呼びます。このように,雪という自然現象がもたらす地形や植生が,只見ユネスコエコパークにおける自然環境の特徴です。ユネスコエコパークは貴重な自然環境が存在することはもちろんですが,そうした自然環境と共生する地域社会が存在することも重要です。只見町では雪を代表とする自然環境が,そこに住む人々の生活に大きな影響を与え,独自の生活・文化を育む背景となってきました。歴史的にみて,只見地域の住民の生活基盤を支えてきたのは,焼畑を含んだ農業に,地域の豊かな自然資源を拠り所とする狩猟,山菜・キノコ類の採取,燃料となる薪材生産,用材生産,漁労などです。こうした営みは地域の慣行に従い,持続可能な形で行われてきました。また,年中行事のオンベ(サイノカミ),伝統芸能の早乙女踊りや太々神楽の文化的活動も行われてきました。こうした伝統的な生活・文化は,現在でも続けられています。▲モザイク植生地域の否定から地域への愛へここ只見において,将来にわたり地域を愛し,地域を支える人材をどう育てるか,そういう教育をしていかなければいけないという考えからESD教育への発想が生まれ,ひいてはESD教育の推進拠点であるユネスコスクールに取り組む必然性が出てきました。昨年,「日本では,2040年までに市町村の半分近い896の自治体が人口減少の結果,消滅するだろう。」というニュースが流れました。とても衝撃的でした。只見では今まで,「こんなに雪の多い只見で生活をしていたらダメなのだ」と言って親や大人の生き方を暗に否定し,そして地域も否定し,子どもたちはその中で育っていたので,当然ながら「ここにいてはダメなんだ」という考えに至り,東京などの大都市に出ていきました。しかしこれからは,自分の地域,自分の生き方を誇れなければいけません。今後,「誇り教育」にどう転換していくかが町として大きなカギとなっています。只見町が取り組むユネスコスクール長谷部千晶ユネスコスクール担当小・中学校では,すでにユネスコスクールへの取り組みを進めています。町内には,三つの小学校と一つの中学校があります。まずは先頭を切って25年度に,朝日小学校でユネスコスクールへの申請に向けて取り組んでもらい,その結果,平成26年10月にユネスコ本部より認定をいただくことができました。平成27年1月には,認定を記念して授与式とともに公開授業発表会も行いました。残りの只見小学校,明和小学校,只見中学校でも申請の準備を行っており,いずれはすべての学校がユネスコスクールになることを期待しながら,進めています。極上の自然留学前述した,地元の子どもたちが地域を支える人材に育ってもらう取り組みと双璧を成しているものとして,「極上の自然留学」があります。ここ只見町に高校は,福島県立只見高等学校だけです。只見高校に入学する子どもたちは,近くにある只見中学校からの生徒しかいません。近年の少子化とも相まって,地元の2