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概要

生活&総合navi vol.72

確かに、取材の中で「自分の考え」をつくることはどの学校でも大変重視されていた。手法はそれぞれ違っても、子どもたちがいきいきしていて、同時に彼らが自分の考えをつくっていっているように感じられる授業には共通している特徴があった。大きくは二つ。一つは、個の時間と集団の時間の上手な行き来である。みんなで協働する動の時間と、一人ひとり自分の内側に目を向ける静の時間の組み合わせがよいと言ったらいいだろうか。流れがよく、授業にテンポとリズムが生まれるからその場にいることが単純に気持ちいい。もう一つが、子どもたちがよい聞き手であること。もちろん、先生がよい聞き手でなければコトは進まないだろうが、先生だけがいい聞き手では、おそらく十分ではないのだ。子どもたち自身がよい聞き手に育っていることで、先生は前面に出て主導しなくとも、子どもどうしでどんどん展開していく場面が出現する。その最たる姿だったある学校の6年生の授業では、先生が指名することなく、次々に子どもたちが立ち上がって意見を言い合っていた。それ自体にも驚いたが、「なるほどねー」とか「そういうことあるよねぇ」などとクラス中が聞き手としてさまざまなつぶやきが飛び交うのである。ひやかしや野次とは違い(国会議員に見せたいほどである)、クラスのみんなが聞いてくれている、という実感と安心感をもたらしているようだった。それは先生の経験から考え出されたやり方だという。聞き手のあいづちやうなずきがあることで話者は話しやすくなり、聞き手に助けられて考えを広げていけるという分析である。新学期の時点では、水を打ったようにシーンと静かに聞くだけだった子どもたちを、「ちゃんと反応してね。ふーんでも、首をふるでも、話し手に応えてね」と、どの教科でも聞き手を育てる努力でクラスみんながそれぞれの反応をするようになったという。聞き手の重要性?「聞いてるよ」のメッセージが育てる話者?発言が始まるとみんな耳を傾ける。結果的に子どもたちが精神的に安定しやすいことも実感できた。しかし、その時間と場をもてる子どもは、当時は無論、「森のようちえん」が広がった今もまだ少数派にとどまる。それが、【考える】ためには【感じる】ことがカギという認識が学校側から出ようとは。「森のようちえん」を推進してきたさまざまな場所のお母さんたちが、活動のバックボーンとして挙げていた「センス・オブ・ワンダー」。「不思議だ」「なぜ?」は、全身でさまざまな【感じる】を経るからこそ湧く思いである。【考える】の前に、どれだけ【感じる】機会と場を与えてあげられるか。それは大人の側に課せられている。受けとめられて大きく羽ばたく思考[特集]「感じる」と「考える」のあいだがら4