ブックタイトル生活&総合navi vol.72
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生活&総合navi vol.72
Active learning class野口徹野口先生のアクティブ・ラーニング教室山形大学准教授。専門は生活科・総合的な学習。著書に『子どものくらしを支える教師と子どもの関係づくり』(ぎょうせい,共編著)など。古いものが実は新しい?アクティブ・ラーニングのあり方とは7野口先生のアクティブ・ラーニング教室いよいよ新しい学習指導要領の形が見えてきています。今の段階での新学習指導要領に関する学校現場の最大の話題は「アクティブ・ラーニング」でしょう。あまたある教育関係新刊書籍にこの言葉を用いていないものを見つけるのが困難なほどの状況です。この状況の中で,新学習指導要領の改訂に向けて審議している中央教育審議会からは,「アクティブ・ラーニングの視点」として,「主体的・対話的で深い学び」という言葉が伝わってきています。特に「深い学び」については,「習得・活用・探究の見通しの中で,教科等の特質に応じた見方や考え方を働かせて思考・判断・表現し,学習内容の深い理解につなげる」学びと示されており,文字通り子どもの学びの質がこれまで以上に問われていく,そんな感じです。しかし,そんななかではありますが,「アクティブ・ラーニングって今までの授業とどう違うの?」「どうやら今までやられていたグループ学習やペア活動なんかのことでしょう」「じゃあ特に何も変えなくても大丈夫だね」などの話題も少なからず現場では流通しているようです。つまり,「新しい」はずなのに「古い」?これは本当なのでしょうか。そこで今回は,古いというなかでも極めて古い事例を紐解いて,アクティブ・ラーニングの在り方について考えてみようと思います。今回ご紹介するのは,明治期の教育者「樋口勘次郎」さんです。この方は,東京高等師範学校(現筑波大学)を卒業と同時に同校の附属小学校の先生となりました。樋口さんはアメリカのパーカーの「中心統合法」の強い影響を受けていて,子どもの自発活動を尊重する「活動主義」という,まさに「アクティブ・ラーニング」というべき自身の実践をまとめた『統合主義新教授法』という本を著しています。この本の中で樋口さんは,明治29(1896)年11月7日に行った,2年生の「飛鳥山遠足」が「最も有意義な学習」であった,と主張しています。当時は,遠足と言えば校外を移動する際にその往復路を隊列を組んで軍歌を歌って行進するのが相場でした。そんな遠足観が圧倒的な中で,それを「学習」と位置付け,提案した画期的な取り組みだったのです。樋口さんは,事前に子どもを連れて附属学校敷地内にあった「教育博物館」の見学を行い,そこで子どもがどんなものに関心をもつのか綿密に観察してデータにします。さらに目的地の飛鳥山までの行程を実地踏査して,それもデータ化します。そしてこれらを基に,遠足をいかに学習として成立させるのか構想を立てます。例えば,次のようなものです。●子どもに一枚ずつ地図を持たせよう。●工事中の田端駅の様子を観察させ,多くの人が働いている様子を見させよう。●帰り道では稲田,稲の収穫,木綿畑,汽車などを見させよう。樋口さんが作成した地図(樋口勘次郎著『統合主義新教授法』より)樋口さんは地図を手づくりして印刷し,一人ひとりに持たせて実際の場所と比較をさせて,遠足を見事に成功させています。そして,翌日には作文を「紀行文」として書かせ,遠足活動の評価としています。樋口さんは,この子どもの紀行文の表現を分析し,そこには初歩的な「学問」と見るべき学びがあったことを紹介しています。例えば,イ)動物学(イナゴ,家鴨,金魚)ロ)植物学(山林局試験場ニテ樹木150種ヲ見タリ,但翌日試験シタル所ニヨリテ察スルニ,生徒ノ記憶ニ止マレルハ,平均一人145種位ナラム。麦,茶,蕎麦,等前掲植物,葉の凋落,芽)といった具合です。ほかにも,農業,商業,工業,地理,地質,人類学,物理学などの初歩的な学びの兆しを子どもの紀行文の表現の中から見とり,このように「児童をして自己の活動(セルフアクティビティー)によりて遊戯的に学習せしむべきこと」こそが大事なのだ,と主張するのです。樋口さんのこの取り組みは,今から見たらやはり古く,かなり牧歌的です。しかし,ここには,子どもが主体的に様々な対象と豊かな関わりをもつことが,必ずや深い学びへと到達する,という絶対的な信頼感の存在を感じ取ることができると思います。アクティブ・ラーニングを実現させるには,教師にこんな熱い思いが必要であることを古き実践者が伝えてくれます。次からは,現代の実践者の熱い思いとそれを支える手立てについても考えてみましょう。