ブックタイトル生活&総合navi vol.76 2020年度版生活科教科書特集号

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生活&総合navi vol.76 2020年度版生活科教科書特集号

いそれぞれの生きものがくらしていたば場しょのようすをまとめよう。みずいあ生きものに合わせてせわのしかたをくふうしよう。くさみずなかきうえ草むら水の中木の上いて手をあらおう52?55,114ページもみ見てねふりかえるつなげるまいにち新版生活科教科書特集TSUNAGU SCHOOL vol . 05Active learning classCurriculum management seminar野口徹野口先生のアクティブ・ラーニング教室村川雅弘村川先生のカリキュラム・マネジメントゼミ山形大学教授。専門は生活科・総合的な学習。著書に『子どものくらしを支える教師と子どもの関係づくり』(ぎょうせい,共編著)など。教科書にある「深い学び」の姿甲南女子大学教授、鳴門教育大学名誉教授・客員教授。専門は教育工学,カリキュラム開発,生活科・総合的な学習。近著に『ワークショップ型教員研修はじめの一歩』(教育開発研究所)がある。スタートカリキュラムの見直し・改善を通してカリキュラム・マネジメントを理解する17野口先生のアクティブ・ラーニング教室各地の学校で2019年の生活がスタートしています。いよいよ学習指導要領の移行措置期間の最終年度です。各学校では来春からの本格実施年に向けて様々な準備を積み重ねてきているところだと思います。今回の学習指導要領の最大のポイントは,各学校が子どもを主役に据えた教育課程を編成し,子どもに資質・能力をしっかりと育成していくことを強く打ち出したことです。一回一回の授業は,子どもにとって充実した経験となりつつ,資質・能力と結びついていくものでなくてはなりません。そして,そのような授業において重要となる手段こそが「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)となるわけです。「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)については中央教育審議会答申に示された内容から次のようにまとめておきます。学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方主体的な学び向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる子供同士の協働,教職員や地域の人との対話,先哲対話的な学びの考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知深い学び識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かうこれらの中で,「主体的な学び」「対話的な学び」が子どもの姿として表れやすく,見取りやすいものであることに比して,「深い学び」については,子どもの学習の「質」に関することとなりますから,子どもの姿を綿密にとらえていくことがより重要となってきます。それでは,「深い学び」となる子どもの姿を求めていくには,どのように考えたらよいのでしょうか。そんな問いのヒントを探るためにも,上の「深い学び」の文章中に示された子どもの学びの姿,特に,「知識を相互に関連付けてより深く理解する」ことに注目してみたいと思います。学校生活では様々な知識を子どもに与えます。これらを子どもが関連付けて理解するのです。さらにそれまでの知識が相互に活性化して「そうか!こういうことだったんだ」と納得へと至る深い理解なのです。しかし,これは「子ども」が「知識を相互に関連付けてより深く理解する」のであり,どんなに「教師」が熱弁をふるったとしてもそのようになるとは限りません。ここには,子どもが既にもっていた様々な知識と,授業で学んだ新たな知識とが結びついていく瞬間が存在しているのであり,この結びつきによって「今まではこんなふういかんが生きもののせわを考えようせわのしかたはそれぞれちがうのかな。たくさんだっぴするなんてすごいなあ。くさ水草をふやそうよ。い生ききものの気もちになってばすんでいた場おもだしょを思い出してみよう。2020年度版生活科教科書下巻p.50-51つちしめった土がすきなんだね。あたらくさ新しい草ほうをもっと入れた方がいいね。きりふきをよう用いしようか。どうしたらいいのかなほん●本でしらべる。じょうせい●上きゅう生にしつもんする。ばい●もといた場しょへ行く。毎日せわをつづけていますね。50 51に思っていたけれど,今日の授業でそれが変わってきちゃった」というつぶやきが生まれてくるような,世界の見え方が変化する実感が伴うことが大切になってくるのです。その具体的な例を生活科の授業の場面から考えてみましょう。日本文教出版の『わたしとせいかつ』下巻50-51ページの様子です。この単元では,子どもが身近な場所にいる「生きもの」の世話をすることを中心に進んでいます。「ダンゴムシ」「バッタ」「メダカ」などの世話をしていることがわかります。身近な生きものですから子どもも少しは知識をもっていることでしょう。しかし,ここで大事になるのは,生きものと子どもとの距離が近くなる場面を設定することと,そこから様々な気付きを導き出すこと。そして,その気付きを言葉に置き換えて思考を深めていくことです。板書を見ると,この教師は生きものに関する子どもの気付きの言葉を書き記しながら,「入れるもの」「えさ」「せわ」などの共通事項を縦軸に据えていくことで,子どもが異なる生きものの情報であっても共有して考えることができるような手立てを施していることがわかります。そして,こういった活動を通して新たな知識が教室内のいろいろな場所で生まれていきます。ふりかえりのカードでは,「ダンゴムシ」のえさの知識(「かれはだけ」)が,「キャベツやチーズも食べる」と更新されて,「びっくりしました」と記されています。これこそが「知っているはず」だと思っていた身近な生きものの知識が,他の知識と結びついて活性化していくつぶやきです。まさに,「子ども」が「知識を相互に関連付けてより深く理解する」ことに到達している,「深い学び」となっている子どもの姿がこれなのです。こんな姿をさらに求めていくためにも,各学校では一層丁寧な授業研究を進めていくことがこれからも必要になっていきます。本誌『生活&総合navi』(vol.72~vol.75)の本連載及び『サクサクできる!パズル型スタートカリキュラム作成支援ツールサクスタ2』(日本文教出版)の中でも述べてきたが,今次学習指導要領改訂の,育成を目指す資質・能力の三つの柱,資質・能力を育むための主体的・対話的で深い学びによる保育や授業の工夫・改善,それらを家庭や地域と連携・協力も図りながら協働的に実現するためのカリキュラム・マネジメント(以降,「カリマネ」)の考え方は,幼児教育から,小学校,中学校,高等学校までの教育を貫くものである。本誌が読者の手元に届く5月は,前年度中に作成され4月以降実施されてきたスタートカリキュラム(以降,「スタカリ」)の見直し・改善を図る上で絶好の時期である。今回は,スタカリの見直し・改善を通して,カリマネの理解を深めたい。まず,スタカリだけでなくカリマネ全般において必ず考慮すべきことは目標の具体化と共有化である。目標のベクトルが合っていないと意図的・組織的に教育活動を展開することはできない。特に,小学校1年生に対しては「赤ちゃん扱い」をしがちである。幼児期に育った資質・能力を「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の10の視点からとらえた上で適切に対応していくことが1年担任だけでなく教職員全体に求められる。教職員の意識や態度は2年生以上の児童にも影響する。育まれた資質・能力をさらに伸ばしていく上で「主体的・対話的で深い学び」による授業が重要で,その学びの実現に欠かせないのが「学習の基盤づくり」である。いわゆる学習規律や言語活動に必要な技能を意図的に身に付けさせていきたい。教科書上巻14-15ページの写真や言葉が大いに活用できる。さて,新学習指導要領では,カリマネ実現に向けて3側面が示されている。一つは教科横断的な視点による教育内容の編成である。スタカリでは生活科を核に展開されている。教科書上巻12~13ページに紹介されている遊びは保育園や幼稚園でも体験している。それらが国語や算数,音楽,図工などの各教科の学習につながっていることを子どもと確認したい。その際に,各教科等の教科書を開いてみて,保育所や幼稚園の遊びとのつながりを考えてみてもいいだろう。もう一つはPDCAサイクルの確立である。筆者は,カリマネを大きく五つのレベルに分類している1)が,入学式から5月までの学習活動を一覧できるスタカリ完成例は「学校のカリマネ」であり,週案は「学級のカリマネ」であり,いずれもPDCAサイクルのPである。1年の学級担任は日々の実践(PDCAサイクルのD)を通して,週案に朱書きをする。その行為がPDCAサイクルのCである。スタカリの改善(PDCAサイクルのA)は,次年度の1年生のために,まだ記憶も新しい5月中に行っておきたい。あと一つは校内外の人的・物的資源の活用である。特に,スタカリの時期は校内における物的及び人的な資源活用の視点から見直す必要がある。学校の施設が安全面も含めて適切に活用されたか,教職員及び上級生が1年生に対して適切に対応できたか,を検証しておきたい。スタカリは,生活科が学習活動の核となることが多いので「教科等のカリマネ」と捉えることができ,1年入学時と考えれば「学年のカリマネ」にも該当する。しかし,学校が主体となって作成し学校の教職員及び児童で1年生を受け入れるという点においては,スタカリ全体は「学校のカリマネ」(本誌vol.72)である。それをもとに作成される週案は「学級のカリマネ」(本誌vol.74)とも言える。そして,入学した子ども一人ひとりが小学校を理解し,学校生活に慣れ,同級生や上級生と関わりながら安心して自立を図っていく基盤を固めていく上で,「子ども一人ひとりの学びのカリマネ」(本誌vol.73)の実現につながる重要な役割も担う。スタカリはカリマネの全てのレベルに関わっている。以上のように,5月のこの時期にスタカリを見直すことが,カリマネのレベルや要件,視点を理解することにつながる。カリマネに関する有効な研修となる。参考にしていただきたい。[参考文献]1)村川雅弘「カリキュラム・マネジメントの基礎的・基本的な処方22」,村川雅弘編著『カリマネ100の処方』教育開発研究所,pp.19-45,2018年2020年度版生活科教科書上巻p.14-1516村川先生のカリキュラム・マネジメントゼミ