ブックタイトル生活&総合navi vol.76 2020年度版生活科教科書特集号

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生活&総合navi vol.76 2020年度版生活科教科書特集号

「教師は教え子どもは学ぶという,大人と子どもの関係を変えること。教師には,子どもたちとともに考え,ともに学び合う姿勢が求められている。子どもたちの想定外のつぶやきや発言が思文・田中洋子 撮影・伊藤美香子 写真提供・戸野塚厚子 わぬ深まりや進展につながるかもしれない」。 同じ理科の教科書では、人の感覚器官を取り上げた章の最後に、?諸感覚は何のためにあるの??と書かれている。そして目に涙をためた男の子の絵とともに、?諸感覚を働かせて見れば、たとえこの子が地球の反対側から来て、言葉で通じ合えなくても、彼の気持ちはわかるよね??との一文が。家庭科でも、?今日はいろんな国の人たちが、一緒に晩ご飯を食べます。どんな肉を選んだら、みんなハッピーになりますか??と、教科書が問いかけてくる。 障がいについても同様で、?障がいは環境によってつくられる?という概念をまず教える。普段は自由自在に言葉を話している日本人も、外国へ行ったとたん、言葉が通じないという"障がい"に直面する。疾病と障がいはイコールではない。障がいは環境によってつくられるので、バリアフリーが進んで環境が整えば、障がいはかなりの部分軽減されるし、障がいではなくなっていく。こうした観点から、子どもたちに障がいの本質に気付かせる。それが障がい者との共生の、第一歩になるという発想だ。?共生?のための教育が、?仲良くしましょう?、?多様性を大事にしましょう?と叫ぶことではないのは、興味深い。偏見を乗り越え、真の共生に近づくためには、科学的な視点で違いを学ぶことが不可欠だと、戸野塚先生は語る。日本の小学校にて一人ひとりの違いに目を向ける?共生というテーマは、日本の小学校の生活科や、総合的な学習の時間の中でも、様々に展開できる領域ではないかと、私は可能性を感じています? そう言って、先生はある日本の小学校教師の取り組みを紹介してくれた。小学校3年生の総合学習の時間で行われた、?目?を描く活動である。 子どもたちは自分の目を、じっくり観察しながら描き、それから思ったことを発表しあった。?目の色は黒だと思っていたけど、ぼくの目は茶色だよ??青とか黒とか茶色とか、いろんな目の色があるのはなぜ???目が見えないというのは、どういうことなんだろう?? やがて子どもたちは、?目はみんなにある。でも同じ目はひとつもない?と気付いていく。 この授業を受けて、色に関する授業を行った大学院生もいる。子どもたちにヒマワリの絵を見せ、?この黄色は、どの人にも同じように見えているのだろうか??と、問いかけた。そしてひとしきり話し合いが続いたあとで、?実は視細胞には、桿か ん体たい細胞と錐す い体たい細胞があって、色を識別している。でもその数は人によって違うから、全員がまったく同じように見えているとは限らない?と話した。目そのものも、見え方も、一人ひとり違ってあたりまえ。日本の小学校での、立派な?共生?の授業となった。子どもが主役活発な話し合いが深い学びを生む?目?と?色?の授業では、科学的な知識を与えることと、子ども自身の気付きに重点が置かれていた。この?子ども自身の気付き?を大切にした学びは、スウェーデンで行われている?共生?をめぐる授業とも、わが国の新学習指導要領がいう、?主体的・対話的で深い学び?とも通底する。?子ども主体の対話的な授業で気を付けたいのは、先生が?こうじゃないかな??と軌道修正をしたり、自分が期待していた意見だけ、我が意を得たりと、黒板に書き出したりしないことです。あくまでも子どもたちが、一生懸命に自分の頭で考えて意見を述べ、違う意見も出しながら、話し合うことが大切です。それ自体がクラスの中の共生の学びであり、主体的・対話的で深い学びでもあるのですから? 冒頭で紹介したように、スウェーデンの学校では、先生たちが密に話し合い、協力し合って授業をつくっていた。日本の学校現場でも、子どもたちの新しい学びについて、身近な同僚の先生たちと連携し、フランクに相談したり、助け合ったりできる環境づくりが、今こそ必要なのかもしれない。まずはちょっとした休憩時間を利用して、みんなで?フィーカ?から始めてみてはいかがだろう?カリキュラムの特徴「共生」のカリキュラムの変遷政策・施策改訂システム政権政党フィーカを楽しむスウェーデンの教師たち。「日本でも素晴らしい授業を実践されている先生がたくさんいるので,シェアし合うことが大事」。性的マイノリティへの理解と差別禁止(11年版)生物・社会・歴史宗教・家庭・美術中道右派連合(2006~)社会民主労働党(1994~2006)中道右派連合(1991~1994)社会民主労働党(1982~1991)穏健統一党(1976~1982)社会民主労働党(1932~1976)コーポーラティズシステムを基礎としたエキスパートシステムコーポーラティズシステムの定着コーポーラティズシステムの形成エキスパートシステム「多文化共生社会」に向けての政策「みんなのための学校」(En Skola for Alla)にもとづく障がい児のインテグレーション平等政策(男女平等政策)「多文化共生」を強調したカリキュラム(94年版)生物・社会・家庭スポーツと健康・宗教「障がい者との共生」と教科横断型カリキュラム充実期(80年版)生物・理科・家庭スポーツ・宗教・国語「性と共生」のカリキュラム萌芽期(62年・69年版)生物・宗教・社会子どもへの差別禁止の法律制定「民主主義」と「多様性」の強調参考:『スウェーデンの義務教育における「共生」のカリキュラム』(明石書店)スウェーデンの「共生の学び」に主体的・対話的で深い学びを見る21スウェーデンの「共生の学び」に主体的・対話的で深い学びを見る20