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概要

生活&総合navi vol.77

1 はじめに 新学習指導要領では、?よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る?という目標を学校と社会が共有し、連携・協働していく?社会に開かれた教育課程?の実現の必要性が示されている。子どもたちは、地域社会との主体的な関わりの中から多くの生きた学びを得ることができる。しかし、実際には地域の人にゲストティーチャーとして参加してもらうだけで、子どもたちにとって主体的な学びとはなっていない実践が多く見られる。そこで本研究では、総合的な学習の時間を基軸として、地域社会と連携・協働をしながらともに創り上げていく?社会に開かれた教育課程?の実現に向けて研究を行うことにした。2 ?社会に開かれた教育課程?の実現のために 本研究で地域教材として着目した?恵幸川?えこがわ?鍋?は、加古川市役所の自主研修グループが考案した地産地消をうたったご当地鍋である。本教材は地域でとれる食材を知るきっかけとなるだけでなく、食に関わる地域の人々と連携していくことで、地域社会との主体的な関わりを生み出す教材になり得ると考えた。 また、?社会に開かれた教育課程?の実現のために、恵幸川鍋を基軸として、学校と地域社会が連携し、ら学習を進めていった。そこで地域の方々の願いや思いを知り、?農家さんが愛情を込めて育てた野菜の食材をちゃんと買わせてもらおう?という自分たちだけの最適解を導き出すことができた。また、子どもたちの思いが生産者の方々に届き、地域の食の魅力や生産者の思いがたくさん詰まった川西小5年生だけの恵幸川鍋を完成させることができた。? 地域社会の課題解決に参画できる教育課程 単元の当初は、?川西小5年生だけの恵幸川鍋をつくる?という自分本意のテーマを設定していた子どもたちであったが、地域社会の願いや思いを知ったことで、?全国に自慢できるほどの加古川の食材をもっと広めていきたい?というテーマを超える社会参画の意思をもつことができた。また、その意思を具体化するため、加古川の食材や生産者を紹介するパンフレットを作成し、配布をしたことで、?自分たちのしたことが社会の役に立ってよかった?と、大きな達成感を得るとともに、社会参画の意識をさらに醸成することができた。? 地域社会とともに創り上げる教育課程 本実践は、学校と地域社会をつなぐ基軸となる?恵幸川鍋?という地域教材を開発し、恵幸川鍋に関わる地域の人々と育てたい子どもの姿を共有しながら、その目標に向かって教育課程の計画・実施・評価・改善を一貫して実施できる関係を構築した。?今、子どもたちは〇〇で悩んでいます?と、課題を解決していく子どもの姿を恵幸川鍋の開発者とともに評価し、次なる活動の方策について検討し合えたからこそ、子どもたちの主体性を高めながら、深い学びにつともに教育課程の計画・実行・評価・改善をするPDCAサイクルを回していける関係を構築していきながら、子どもたちの深い学びの実現を目指した。3 実践結果と考察? 地域人材との連携・協働の必然性を生み出す地域教材 恵幸川鍋は、?地産地消?や?型崩れをした野菜?など、正解はなく、子どもたちの生活経験や価値観によって多様な考え方が生まれる課題を生み出すことができる教材であった。鍋の具材について、?型崩れした野菜をただでもらうか、買うか?の話し合いでは、?捨てる野菜をもらえばエコになる??ただでもらうのは失礼だし、農家さんが笑顔になれない?など、それぞれの立場で何度も話し合いを行ったが答えは出すことができなかった。そこで子どもたちは、?答えが出ないのであれば地域の人に直接話を聞いてみたい?と、農家さんや恵幸川鍋の開発者の方から直接話を聞く必然性を生み出しながながる教育課程を創り上げることができた。4 おわりに 本研究では、地域社会とともに創り上げる?社会に開かれた教育課程?の実現により、正解のない問いを生み出し、仲間、そして、地域の人々と協働して課題を解決しようとする主体的な学びを実現できた。また、その結果、地域でとれる食材やそこに込められた生産者の思いを知るだけでなく、地域への愛着を深めながら、社会参画の意識も醸成する深い学びを実現させることができた。子どもたちの振り返りからも、?多くの方の協力のおかげで自分たちだけの恵幸川鍋ができた??みんなでがんばって良かった??自分たちはすごいと思う?など、学習への大きな成就感を得たことが見てとれた。 今後も、総合的な学習の時間を一つの基軸とし、地域社会の?参画?を促しともに創り上げる?社会に開かれた教育課程?の実現を目指していきたい。地域社会とともに創り上げる「社会に開かれた教育課程」の実現~川西小5年生だけの「恵幸川鍋」づくりを通して~兵庫県加古川市立川西小学校 藤池陽太郎総合現場からの単元名恵幸川(えこがわ)大作戦!時間60時間目標加古川の食材の魅力やそこに込められた生産者の願いや思いを知ることで,加古川への愛着を深めながら,その魅力を広めようとすることができる主な学習内容?恵幸川鍋づくりの計画をたてよう!・恵幸川鍋について知り,学習計画をたてる?恵幸川鍋の具材を育てる!栽培大作戦!・自分たちで育てる野菜を決め,栽培する?加古川の食材を見つけよう! 食材発見大作戦!・直売所などに行って加古川の食材を調べる・ 食材を依頼する生産者を決め,依頼方法について話し合う・地域の食に携わる方々からお話を聞く?加古川の魅力を届けよう! パンフレット大作戦!・ 地域の食の魅力や生産者を紹介するパンフレットを作成する?加古川の食の魅力が詰まった!恵幸川鍋大作戦!・鍋づくりについて調べ,試作品を調理する・ お世話になった生産者の方々を招待し,感謝の会を開く単元計画パンフレット作成後の振り返りノートからは,「社会に役に立った」という喜びを感じることができます。学習最後の振り返り。人から学ぶ素晴らしさを学んだことがよく伝わってきます。たくさんの思いを込めて完成させた恵幸川鍋。鍋の具材をどうするかについての討論会では,何度も話し合いを繰り返しましたが,子どもたちだけで結論は出せませんでした。自分たちで栽培した大豆を使って400年の歴史ある「高松味噌」さんと味噌づくり体験も行いました。プロの料理人に教えてもらったコツを生かして,恵幸川鍋づくりに挑戦しました。恵幸川鍋の開発者の方々から恵幸川鍋に込められた願いや思いを聞きました。「感謝の会」では,お世話になった生産者の方々に感謝の気持ちを伝え,一緒に鍋を囲みました。課題にぶつかるたび,よりよい解決に向けて何度も話し合いました。学習最後の振り返り。子どもの大きな達成感が伝わってきます。学習最後の振り返り。地域への愛着の深まりが伝わってきます。研究と実践9研究と実践8研究と実践