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概要

生活&総合navi vol.77

従業員満足なくして顧客満足なし 東京都墨田区でちゃのま保育園を運営する宮村柚衣さんは、5年前を振り返ってこう話す。?営利企業では、顧客ファーストで売り上げを伸ばしていくのが一般的です。保育園であれば?顧客=保護者?の満足度を上げて売り上げを伸ばさなければ、保育士さんたちの給与も増えませんので、まずはその考えを園内で共有しようとしました。けれど、そうすればするほど、保育士さんたちとの溝が深まっていきました? 当時、宮村さんは?待機児童保護者になったのをきっかけに自分で保育所をつくったお母さん?としてメディアでクローズアップされていた。一方で、異業種から保育業界に参入した経営者として、これまでの"常識"では進まない保育の現場に焦りを覚えていた時期でもあった。 そんな時に出合ったのが、従業員満足なくして顧客満足はないという考え方だった。改めて、現場で働く保育士たちに目を向けてみると、彼女たちは些細なことでもせん。ケースごとに?その都度?、保育士の年齢や経験に関係なく?必ず全員で、話し合ってつくっていく?保育を目指しています? 現在、ちゃのま保育園には園児19名の定員に対して、保育士が10名いる。無理のない人員配置も保育の質の確保には欠かせないと考える。例えば、散歩の途中で座り込む園児がいた場合、急かすことなくその園児を見守る保育士と、その他の園児を連れて先へ進む保育士とに分かれることができる。保育士が園児一人ひとりに寄り添える環境づくりを進めている。 こうした一つひとつの積み重ねが、保護者からの?保育士さんたちがうちの子?個それぞれ?を見ていてくれている??子どもに対して誠実に向き合っていてくれる?という声につながっていく。 口コミで人気を博すちゃのま保育園は開園以来、一度も定員割れがなく、一人の退職者も出していないという。宮村さんは、保育士のさらなる働きやすさを求めて、目指す人物像やそれに伴う給与体系の共有、保育士が社労士に直接相談できる制度など?労働環境の見える化?を進めている。常に子どもファーストで行動をしていた。?みんな自分の給与が増えることよりも、子どもの発育を最優先に考えていたんです?営業度外視でアプローチを変えた そこで、宮村さんは営業度外視で、ひたすら保育士の満足度を上げる方向に舵を切った。これまでもっていた?従業員は管理しないと動かない?という考えも切り替え、まずは、自分が園長職を退き、現場はすべて保育士に任せることにした。?園をつぶすことになること以外、保育士さんたちの要望に対してノーと言わないと決めました。実際そうしてみると、保育士さんたちから理解しがたい要望なんて出てこないんです。みんな保育は福祉であることをわかっているから??より発育段階に合ったテーブルを購入したい??子どもたちにとってよい食材とよいメニューで給食をつくりたい?││。宮村さんが経営者として保育士のこうした願いに誠実に応えていくと、次第に、保育士たちが自ら?よい保育?を考え、実現するために動き出すようになっていった。?かつてはいい保育をするよう指導していたはずが、先生たちの満足度を高めることに注力したらその必要がなくなったんです。待遇を改善していくと、保育士さんたちは保育のいろいろなところに目が向くようになる。この点がよくなったから?さらに子どもたちの発達を促すために、こちらもよくしてください?って? ちゃのま保育園の考える?よい保育?とは何か。どんな子どもを育てていきたいのか。?その答えは一つではなく、保育士さんの数だけ願いや思いがある?と宮村さん。例えば、自己肯定感を伸ばすことを重視するベテラン保育士さんもいれば、嫌いな食べものであっても食べることで咀嚼する力、生きるために必要な力を付けてほしいと考える若い保育士さんもいる。?うちは育てたい子どもの姿をあえて園の方針としては決めていま園長にとって書類作成が負担であれば,その業務は外して得意な先生に事務手数料を支払って割り振る。「その分,園長は,得意な保護者対応に力を注ぐことができる。『得意なことに集中する』という選択ができるようにしています」(宮村さん)。ちゃのま保育園の保育理念と基本?針展望 Vision保育士が保育士として一生涯,楽しく働ける保育園。使命 Mission● 保育士が常に笑顔でいられるように,よりよい保育を目指せる人員配置。●保育士が安心・安全に働き続けられる,コンプライアンスの順守。● 保育士が密に会話し,保育士どうしなんでも話し合える風通しのよい職場風土。保育?針 Policy日常生活の中で自然に発達を促すことができる保育。保育所,幼稚園の現場から墨田区施設型小規模保育所ちゃのま保育園代表:宮村柚衣園児数:19名(0歳~3歳未満児まで)本号の特集(p.1~5)にも登場する宮村柚衣さん(合同会社はひぷぺぽ代表社員。全国小規模保育協議会理事)が代表を務めるちゃのま保育園。宮村さんは2014年に,自身が待機児童保護者になったのをきっかけに,「働きたいお母さんが安心して子どもを預けられる保育園をつくろう」と,その半年後の10月に認可外保育園として,ちゃのま保育園を立ち上げる。15年4月から墨田区施設型小規模保育所に移行し,現在に至る。"保育士満足度"を高めたら保育の質が変わった【園の雰囲気づくり】? 子ども,保護者と職員が密に関わり,家庭のような近い距離での保育を行います。? 安心・安全を前提に家庭的な保育を大切にしていきます。? 毎日の挨拶をしっかりし,明るい雰囲気づくりをします。【子どもや保護者に対して】? 子どもの気持ちに寄り添い,言葉かけ,スキンシップを心がけ,子ども一人ひとりの個性に応じた対応をしていきます。?子ども,保護者や職員に笑顔で接し信頼されることを目指します。?子どもが気持ちを出せるように,じっくり待つことも大切にします。【職員間の心がけ】?職員どうしが声を掛け合い,働きやすい職場を目指します。? 常に,他の職員のいい所を見つけ出し,言葉で伝えたり自分に取り入れたりします。? どんなことがらも職員全体で共有し,職員全体で話し合い,報・連・相を重視します。思いやりをもち,自ら率先して行動します。道しるべWayスマートフォンやタブレットをかざすと動画が楽しめる!2 「カザスマート」で検索し,アプリをダウンロード。3 「カザスマート」アプリを立ち上げます。カザスマート検索4   マークがあるページで紙面全体にかざすと,動画が始まります!1 スマートフォンまたはタブレットで,ストアアプリを起動します。★P.2~5(特集)で視聴できます。※動画は,2020年3月31日まで視聴することができます。保育所、幼稚園の現場から16保育所、幼稚園の現場から17