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概要

生活&総合navi vol.77

TSUNAGU SCHOOL vol . 06Active learning classCurriculum management seminar野口先生のアクティブ・ラーニング教室村川先生のカリキュラム・マネジメントゼミ野口徹村川雅弘甲南女子大学人間科学部教授。専門は教育工学,カリキュラム開発,生山形大学教授。専門は生活科・総合的な学習。著書に『子どものくらしを支える教師と子どもの関係づくり』(ぎょうせい,共編著)など。高等学校の「総学」学習発表会から見えた小・中学校「アクティブ・ラーニング」の重要性活科・総合的な学習。近著に『学力向上・授業改善・学校改革カリマネ100の処方』(教育開発研究所)がある。ラグビーチーム再生のカリキュラム・マネジメントに学ぼう7野口先生のアクティブ・ラーニング教室いよいよ来春から,全国の小学校では最新の学習指導要領による教育活動が全面実施となります。この時期はどちらの小学校でもそれに向けて最終チェックを行っていることと思います。私も様々な学校からお声がけをいただき,生活科を含めた各教科の授業を拝見する機会が増えているところです。いよいよ新しい教育が本格化しているのだ,と感じています。この学習指導要領の全面実施の時期については,中学校の場合は再来年の2021年度からであり,高等学校に至ってはさらにその翌年の2022年度から,となっています。高等学校の移行期間については今春から始まったばかりです。ところが,全面実施の時期を考えるとずっと先に感じられる高等学校が,実はすでに新学習指導要領に向けてどんどんと準備を積み重ねており,意欲的で魅力的な授業実践を行っている,ということを皆さんはご存じでしょうか。今回は,そんな「いまどきの高等学校」の様子についてお知らせしたいと思います。今回ご紹介するのは,山形県立山形中央高校です。こちらは,「普通科・体育科」を併設している県内唯一の学校です。部活動がとても盛んで,野球部は何度も甲子園に出場しており,卒業生にはプロ野球で活躍している選手もいます。また,2010年バンクーバーオリンピック・スピードスケート男子500m銅メダリストの加藤条治選手もこちらの出身です。私は,今年の1月に山形中央高校を訪問しました。その日に,1年生生徒による「総学」(高校では全国的に「総合的な学習の時間」をこのように呼称しています。新しい学習指導要領4 4では,高等学校は「総合的な探究の時間」となりますから,この呼び方も変わるかも知れません)の学習発表会が行われていたからです。こちらの高校では「総学」を方向性等を考えて選択し活動する専門グループのことで,山形中央高校では,「国語,数学,社会,理科,英語(国際),町づくり,医療福祉,教育,体育」等に分かれています。さっそく,各教室を会場とした「発表会」をのぞいてみました。どこも白熱したものばかり。例えば,「教育ゼミ」を見てみると,女子数人のグループがプレゼンテーションを行っていました。その内容は,どうやら『泣いた赤鬼』に関するもの。これは「日本のアンデルセン」と呼ばれた山形県高畠町出身の作家・浜田広介のよく知られた童話です。調べてみると,昭和30年代から当時の文部省が出した道徳資料に掲載された歴史があり,現在の国語の教科書でも収録されているようです。では,この女子グループは,この童話の何をテーマに発表しているのでしょう。そのテーマは,「青鬼の自己犠牲の愛は,小学校の何年生の国語の授業の教材として成立するのか」というものでした。とても骨太な内容です。彼女たちは,学習指導要領や教科書の内容の精査や分析をかなり行った上での発表をしていたのです。他のグループの発表を見ても,「室町時代の『徳政一揆』に参加した農民の行動は現在の刑法からみて有罪か無罪か」「留学生の数やTOEICの点数で日本を上回る韓国と日本の小学校期の英語教育を比較して,日本の小学校の英語教育はどのようなものであるべきか」など,とても高校1年生の発表とは思われないものです。尋ねてみると,どのテーマも自分たちで設定した,と教えてくれました。つまり,「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」を十分に行った上での力強い「まとめ・表現」としての学習発表会であったのでした。上述したレベルであるのも当然のことなのでした。担当の先生のお話によると,山形中央高校の総学では,下のようなハンドブックを生徒一人ひとりに持たせて,自分で探究を進めていけるように配慮しているとのこと。中身は論理的な思考を行うためのポイントや思考ツー[新生「アストロズ」のカリキュラム・マネジメントを探る]今号では,ラグビー熱の引き金ともなった「トキワ自動車アストロズ」を大阪教育大学の田村知子教授のカリマネ・モデル1で分析する。『ノーサイド・ゲーム』(池井戸潤,ダイヤモンド社,2019年)及び日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』(TBS系列)を参考にした。まず,二人のリーダーにふれたい。元経営戦略室次長の君嶋隼人GMと大学3連覇を果たしながらも更迭された柴門琢磨監督である。信頼関係を築きチームの外と内を守っていく。両者が語る言葉はある時は闘争心を鼓舞し,ある時は冷静さを取り戻させる。アストロズは守備重視の堅実なチームだが,お家芸だったパスワークや柔軟で華麗なバックス攻撃が影をひそめ,近年は社会人ラグビー最上位リーグで低迷している。入場者は1試合平均3500名程度に止まっている。二人は以下の目標を掲げる。一つは社会貢献,企業イメージの向上,日本のラグビー界への寄与である。一つは強みであるフィジカル面をさらに向上させ,個性を生かした戦略的なチームづくりを行い,2年で優勝争いができるチームにする。そして,スタジアムをファンで埋めつくす。日々の練習試合を記録・分析し,問題を各選手に発信し,翌日の練習でその改善を図るというPDCAサイクルを回すとともに,試合中のグラウンド内においても状況を正確に観察・分析し,各自が考え,話し合い,ゲームプランの確認と修正を行う。フィジカル面の向上としては相撲部屋での特訓を行ったり,ドラマではタックルの練習にレスリングを取り入れたりという大胆な策をとる。ジュニアチームのコーチやボランティア活動は社会貢献の目標達成だけでなく選手のメンタル面にも影響を及ぼしていく。これらが実を結び,入場者数やファンクラブの拡大につながる。ファンの大きな声援は選手一人ひとりを鼓舞し,チーム力を引き出し,勝利に貢献する。[実態]〇フィジカルの強さ。堅実なプレー△柔軟性と多様性の欠如△最上位リーグ最下位争い△少ない集客力(1試合平均3500人)3相互関係このアストロズの存続に大きく立ちふさがるのが本社取締役会である。特に滝川営業本部長は脅威であったが,厳しくも的を射た指摘が君嶋GMの改革への意欲を高めていく。君嶋の「本気」が岩のように強固だった協会をも変えていった。8機能[組織構造]〇組織:選手約50名、スタッフ約30名〇年間予算:約16億円(ドラマでは14億円)〇練習時間:平日15時以降及び土日〇HPからのチケット販売△日本代表選手:里中のみ(後に移籍)11働きかけ[地域社会とのつながり]〇親子ラグビー教室、ジュニアチームの創設〇学校や各種施設等でのボランティア活動の継続〇選手の心身を支える元栄養士が営む食堂[目標]〇ファンの獲得、地域に密着したチーム、満員のスタジアムでのプレー〇社会貢献、企業イメージの向上、日本のラグビー界の実力向上への寄与〇フィジカル面の向上、個性を生かした戦略的なチームづくり、2年で優勝争い1反映7機能9機能11働きかけ2成果[カリキュラム(試合や練習、社会貢献活動)のPDCA]練習試合の分析による問題のクリップ映像の選手への送信による課題の明確化と即時的対応(PDCA)状況の正確な観察・分析と話し合いによるゲームプランの確認と修正(PDCA)[リーダーシップ]〇強い信頼関係で結ばれた個性溢れる二人のリーダー〇豊かな言語力と大胆かつ地道な行動力による牽引10規定C:評価(A:改善)観客の属性分析による各種取組の見直し改善と予算D:実施P:計画要求(PDCA)4相互関係6影響5相互関係[チーム文化]〇同じポジションの選手への支援(ドラマのみ)〇ライバルチームに移籍する仲間への配慮△守備重視から攻撃的ラグビーへの戸惑い△練習時間確保と社会貢献の両立への不満10規定・支援[本社や日本蹴球協会とのつながり]〇現社長のラグビーへの情熱、ラグビー部への愛情と後押し△取締役会における存続への否定的な動き△改革に消極的な日本蹴球協会への継続的な改善提案6村川先生のカリキュラム・マネジメントゼミ「未来へのドアプロジェクト」とも呼んでいます。学校のル等の活用方法,参考となる資料などが列記されています。つまり,探究的な学習を自力MANAGEMENT POINT君嶋と柴門に学ぶカリマネのポイントHPでは,総学の目標として,「探究の見方・考え方をはたらかせ,教科や科目の枠を超えた横断的・総合的な学習を行うことを通して,自己の在り方・生き方や進路と合致した課題を自ら発見し,よりよく解決していくための資質・能力を育成する」としています。また,その資質・能力は,「与えられた材料から必要な情報を引き出し,活用する能力」と定義しています。この資質・能力を,「ゼミ」に分かれて活動しながら育てていくシステムです。「ゼミ」は,生徒自らの関心や進路などので行えるようになっているのです。先生たちは,そういった学びの場面における各分野のアドバイザーとして活躍する,というわけです。お話を伺っていて,先生たちも楽しそうに関わっているのがよく伝わってきました。このような取り組みを行っている高等学校は,全国に広がっています。自分でどんどん課題を設定しながら生徒は学んでいます。そう考えると,小学校や中学校の段階で,「アクティブ・ラーニング」を十分に展開しておかないと,高校生活に間に合わないかも知れませんね。■組織のメンバー一人ひとりのよさや状況を理解し対応する■変えたいという本気が人を変え,組織を変え,成果をもたらす■経営資源が同じでも経営戦略により結果は異なる小説から生き方を学ぶことが多い。ビジネスの世界を扱うものは特にそうである。今回も君嶋と柴門からカリマネにつながる多くのことを学んだ。柴門も就任前に選手一人ひとりに手紙を出す。過去の試合映像から一人ひとりのよさや課題をきめ細かく分析し,メッセージを送る。就任後も選手一人ひとりを観察し,個の才能を生かした戦術につなげる。不断の分析によりきめ細かくPDCAサイクルを回し,選手起用にも生かす。さて,学校においても素晴らしい校長は足しげく教室を訪れ,子どもや教員を熟知している。だから臆することなく学校改革に向け的確な判断が下せる。柴門の君嶋に対する「本気ってのは,相手に伝わるもんなんだよ。精神的な成長は,チームにとってもの凄い力になる。スキルやフィジカルをいくら鍛えても,それには及ばない」も示唆に富む言葉である。「学校を変えるんだ。授業を変えるんだ」という校長をはじめとする教職員の本気が学校改善の源である。予算や時間や人材等,学校の資源は変わらない。しかし,戦略によりそれらの資源がもつ価値は大きく変わり,異なる結果を生むこととなる。田村知子・村川雅弘・吉冨芳正・西岡加名恵編著(2016)『カリキュラムマネジメント・ハンドブック』ぎょうせい