ブックタイトル社会科navi Vol.11
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社会科navi Vol.11
生活の国際手帳【第4回】人道の危機と保護する責任神戸大学教授栗栖薫子シリア危機と国際社会シリア国内では過去4年もの間,アサド政権率いる政府軍と,過激派組織イスラム国(ISIL),反政府組織傘下の自由シリア軍など,対立する組織の関係が錯綜し,武力紛争が終息する気配を見せません。国民の大半が生命の危険にさらされ,きわめて深刻な人道の危機が発生しています。2014年末までに,シリア国内で推定20万人が死亡,国内避難民が760万人,国外に逃れた難民が380万人といわれます。そのシリア難民がヨーロッパ,なかでもドイツなどの経済的に豊かな国へと流れ込む状況が報道されています。このようなシリアの状況に対して,国際社会はどのような対応を行っているのでしょうか。重要な政策として難民保護があり,ドイツのメルケル首相が大規模な難民受け入れを表明し,他のヨーロッパ諸国に対して負担の分担を求めたことは記憶に新しいでしょう。その一方で,戦闘員ではない多くの一般市民が殺害されている状況に対して,国際社会は何らかの対応をとっているのでしょうか。ここでは21世紀になって国連を中心に登場した,保護する責任という概念について考えてみたいと思います。ルワンダとボスニア冷戦が終結した直後の1990年代,国内紛争や地域紛争が多発するなかで,政府軍や武装勢力によって,一般市民が多数虐殺される状況に世界は震撼しました。なかでも,ルワンダや,ボスニアのスレブレニツァで発生した事件に対して,国際社会は有効な手立てをもちませんでした。どちらの事件でも,国連平和維持(PKO)部隊には人々を保護するための任務も装備も与えられず,目前で虐殺が起きるのを止められなかったのです。安保理では理事国の意見が対立し,適切な行動をとるための決定を行うことができませんでした。人道の危機に対して,国際社会が協力して介入するための規範やルールが存在していなかったことも問題でした。人道的介入から保護する責任へこのような国連の機能不全への反省から,1990年代後半には人道目的のための強制的な介入(人道的介入)についての議論が欧米諸国のなかで活発になりました。実は,人道的介入というのは新しい考え方ではありません。文明国の市民ないしキリスト教徒を「野蛮」な地域での迫害から保護するために介入するという考え方は,19世紀に実行されました。20世紀にも国際政治や国際法の学者によって,人道的介入の権利についての議論がなされました。他方で,人道的介入は,大国が自国の利益追求のために行う一方的介入を正当化する手段ではないのか,主権の尊重や内政不干渉など国際法の原則に反するのではないか,といった懸念が指摘されてきました。国連では,常任理事国のうち中国とロシアは基本的に反対であり,また国連加盟国の大多数を占める途上国は主権の侵害に敏感ですので,人道の危機のために強制力を用いることはなかったのです。そのような流れに変化をもたらしたのが,先に述べた1990年代の諸事件でした。1999年には,欧米諸国を中心にコソボ介入が行われました。この介入への評価は分かれますが,欧米諸国では,安保理決議を経ていないため「合法ではない」が,人道目的であるため「正当であ20