ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

社会科navi Vol.12

に対する判断力の育成は,日本の公民教育の中心的目標であり続けているといえる。また,1945年12月に女性参政権が認められ,20歳以上の男女が有権者となった時期にも,公民教育の復興が主張されており,それが発展して1947年の社会科成立につながった。その社会科では「政治的な諸問題に対して宣伝の意味を理解し,自分で種々の情報を集めて,科学的総合的な自分の考えを立て」(文部省1947)ることが目標の一つとなり,民主主義社会の主権者としての政治的教養の育成がめざされた。このような形で成立した戦前公民科や社会科は,日本の有権者教育の原型に位置づけられる。その一方で,これらの教科には,社会への適応を重視するあまり,政治的・社会的に対立のある問題に対する判断力の育成という視点が乏しかったという限界もみられた。それは,成立当初の社会科では,「社会の秩序や法を尊重して行動する態度を養」(文部省1947)うことが前述の政治的教養育成の前提とされたことに現れている。このように政治教育を担った教科としての公民教育の歴史をたどると,近年の主権者教育の意義は,多様な意見の対立のある政治的・社会的問題について,判断・意思決定できる能力の育成に正面から取り組もうとしていることに求められる。3.主権者教育の学習デザイン意見の対立がある政治的・社会的問題を学習者自らが主体的に考え判断する学習が成立するためには,それを実現する学習デザインが必要になる。まず,学習デザインに重要な学習方法の特徴として,アクティブ・ラーニングが挙げられる。アクティブ・ラーニングとは,「一方向的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での,あらゆる能動的な学習のこと」(溝上2014)である。ただし,この定義は包括的なものであるため,アクティブ・ラーニングを通してめざす学びを明らかにする必要がある。2015年に公表された主権者教育用副読本『私たちが拓く日本の未来』における学びを例にとると,次のようである(総務省・文部科学省2015)。?正解が一つに定まらない問いに取り組む学び?学習したことを活用して解決策を考える学び? 他者との対話や議論により,考えを深めていく学びでは,こうした学びによる主権者教育の学習デザインはどのように構築するのか。本稿では,2015年7月に新潟県立新潟江南高等学校の田中一裕教諭が第2学年の政治・経済で実施したワークショップ型授業「新公共交通から新潟の町づくりを考える―新潟市のBRTを事例として―」(以下,本授業とする)を通してこの問いに答えたい。なお,本授業は,桑原敏典氏(岡山大学教授)を代表とするプロジェクト「地域づくりの担い手育成を目指した社会科主権者教育プログラムの開発・実践」の一環として開発されたものである。本授業で,学習者自身が住む地域の政策課題を取り上げたのは,主権者としての能力を形成するためには,現実の政策課題について当事者意識をもって考えることが重要だからである。また,現実の政策課題としてBRTをめぐる問題を選んだ理由は,次の2点にある。12014年11月の新潟市長選挙で争点となった。2新潟市民を対象とした3