ブックタイトル社会科navi Vol.12
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社会科navi Vol.12
に表現し議論することを保障するための概念として捉え直したい。その捉え直しを通して,政治的中立性の概念を,主権者教育の内容や学習デザインの充実を図る際の考え方として活用したい。(2)多様な領域の社会的課題を視野に入れる次に,主権者教育の内容がもつ課題を考える。今日の主権者には,社会の問題を自らの問題として考えることが求められている。その一方で,主権者教育といえば,選挙に直接関連の深い内容に焦点化される傾向がある。前述の総務省と文部科学省が作成した主権者教育用副読本(総務省・文部科学省2015)の内容にもその傾向がみられる。この課題を克服するうえでは,成立時の戦前公民科の内容構成が示唆に富む。というのも,戦前公民科は,政治問題のほかに,経済問題,社会問題,思想問題への対処を課題として,それらの内容を広範に取り込むとともに,他教科との連携を重視して成立したからである。要である。主権者教育の視点からこの学習活動の意義を考えると,次の2点にまとめられる。1選挙権を得る前の中学校段階からアクティブ・ラーニングを政治教育に組み込むことは,認識発達の側面からみて可能である。2主権者教育として学んだ内容を「学校内外での生活に活用する」活動を組み込むことで,主権者教育実践がさらに充実する。(4)主権者教育実践を社会ぐるみで支援する主権者教育の充実には,前述の諸課題に取り組むとともに,政治的・社会的課題を学習者が能動的に考えあう教育をデザイン・支援する方法が教員に普及することがまず重要である。また,政治的・社会的問題を考え判断しようとする取り組みを真に学校内外の社会で活用しようとするためには,主権者教育の実践を社会ぐるみで励ます形で支援することで,若者の政治参加を促すことも重要であるといえよう。主権者教育でも,このような形で,他教科の内容とされてきたことをも含む多様な領域の社会的課題を取り上げることで,充実を図りたい。主権者教育の内容をめぐる課題としては,社会系教科における公民教育や政治教育カリキュラムの連続性のなさも挙げられる。この点を克服するためには,他教科と連携して小学校段階から社会の問題について自ら考え判断する学習を取り入れ,政治的リテラシーの基礎を養うことで,系統的連続的に政治を考えるようにしたい。(3)学びの成果を現実の社会生活に活用する主権者教育の推進には,学習デザインを構築する際に,1951年版学習指導要領社会科中学校第3学年の政治制度の単元で例示された「公職選挙について生徒として協力するにはどうしたらよいか学級で協議する。また公職選挙のやり方を,学級や学校の委員選挙に応用してみる」(文部省1952)のような学習活動の意義を見直すことが重【引用文献】木村正義(1931)「公民教育概論」文部省普通学務局・実業学務局編『最新公民科資料精説』帝国公民教育協会,pp.27-58常時啓発事業のあり方等研究会(2011)『「常時啓発事業のあり方等研究会」最終報告書』総務省・文部科学省(2015)『私たちが拓く日本の未来―有権者として求められる力を身に付けるために―』溝上慎一(2014)『アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換』東信堂文部省(1947)『学習指導要領社会科編(Ⅰ)(試案)』東京書籍文部省(1952)『中学校・高等学校学習指導要領著者紹介社会科編Ⅱ一般社会科(中学校1年―高等学校1年中学校日本史を含む)(試案)昭和26年(1951)改訂版』明治図書出版釜本健司(かまもとたけし)専門分野/社会科教育学主要著書/『戦前日本中等学校公民科成立史研究』(風間書房,2009年),『“国境・国土・領土”教育の論点・争点』(共著明治図書出版,2014年),『社会科教育のルネサンス』(共著保育出版社,2016年近刊)5