ブックタイトル社会科navi Vol.12
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社会科navi Vol.12
ものであり全ての人が同じように利用できるものでなければならず,それがもたらす利益は,特定の一部の人に対してではなく,広く社会全体に配分されるものでなければならない。本単元は,2014年に中学3年生を対象として,公民的分野の「地方自治」に関する学習に位置づけて実践したものである2)。前述の到達目標として設定した知識に基づいて,税金が使われている事業や施設,サービスのあり方を考察し,地域にある公共施設の存続の是非について意思決定していく。第一段階では,神戸ルミナリエという「公共事業」には税金が利用されていることを「地方分権」,「地方財政」と関連付けて学習していく。ここでは,「神戸ルミナリエに行くのは,一部の人なのにもかかわらず,なぜ税金が利用されているのか」というテーマについて探究させていく。その過程で,税金を払う理由について考察させ,社会一般にある「公共事業」や「公共サービス」がどのようなものなのか,それにみられる共通点について検討していく。第二段階では,「地域の当事者」=「神戸市民」としてルミナリエを存続していくためにはどうすればいいのかという問いについて,ルミナリエ開催にあたって喜ぶ人,困る人がどのような立場の人か,それぞれの立場の人がそのように考える理由について考察していくことで,ルミナリエによってもたらされる利益を明らかにしていく。第三段階では,ルミナリエ以外の税金が利用されている事業や施設,サービスが生み出す社会的利益を分析させ,税金が利用されうる公共事業や公共サービスのあり方について考察させていく。このような学習を通して,税金が利用されるべきものはどのようなものなのかを考える際の判断基準を育んでいくことができる。3.主権者教育の実践のために以下は,本単元を実践した後の生徒の感想の一部である。【生徒の感想】この授業を通して,税金が使用されている事業やサービスについて興味を持つことができるようになりました。その理由は,前までは税金などに対する興味はうすかったけど,税金が使われている施設は,私たち市民の権利を守ってくれているものもあるんだと知り,他にもさまざまな施設がどういう理由で税金が使われているのか,どのようなものに使われているのかを知りたくなったからです。この生徒の感想から,主権者の資質育成のための教育活動を行っていく際に,育成を目指す主権者の資質を明確にすることが重要であることがわかる。本稿では,税金の使い道について興味関心を喚起し,未来の社会における税金の使い道について探究しようとする市民を主権者と捉え,その資質を育むことをねらいとした。よりよい主権者教育の実践のために,授業者は今後の社会を担う主権者についてのビジョンを持つ必要があろう。【註】1)三木義一『日本の納税者』岩波新書,2014年.2)詳細については,内閣府所管公益財団法人日本教材文化研究財団『社会科における「思考・判断・表現」の評価に関する研究』pp.101-126を参照。9