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概要

社会科NAVI Vol.13

ようこそ!歴史史料の世界へvol.14行基の布教と大野寺土塔●京都大学大学院教授吉川真司▲1上空から見た復原された土塔(1,3~7写真提供堺市文化財課)行基と大野寺土塔行基は奈良時代を代表する民間布教僧です。ただ仏法を説くだけでなく,池や溝を築造し,大河には橋を架けて民衆を救済しました。人々を信仰集団にまとめ上げ,大きな社会事業を進める力を行基は備えており,聖武天皇はそれゆえ彼に帰依し,大仏建立への協力を要請したのです。じんきいずみおおとりおおのでら神亀4(727)年,行基は和泉国大鳥郡に大野寺を建立しました。大野寺は行基の四十九院,つまり畿内に設けられた数多くの道場のなかでも,行基と信仰集団の活動を最もよく示すものです。おおさか大野寺の遺跡は大阪府堺市中区土町にあります。地名からわかるように,現地には土塔という巨大な高まりがあったのですが,近年発掘調査が行なわれ,精密な復原がなされました。古代の姿を取り戻した土塔は,まるで「瓦のピラミッド」です。一辺53mの正方形土壇の上に高さ9mの四角錐が土で築かれ,その全体を瓦が覆い,12の段がついています。かつて頂部にあった小型建物の屋根とあわせて,13重の塔になるわけです。発掘調査では,多くの人々が参加できるような工法がとられていたことも判明しました。さかい土塔に葺かれていた瓦には,さまざまな文字が刻まれていました。今でも寺院に瓦を寄進するとき,名前や祈願を墨書したりしますが,よく似たことが奈良時代にも行なわれていたのです。生乾けちえんきの瓦にヘラ書きされた文字は,土塔に結縁した人々の思いを伝える貴重な史料です。土塔の文字瓦はこれまで1100点ほど見つかっなか文字瓦が語る人々の信仰どとう塔▲2復原された土塔16社会科NAVI 2016 vol.13