ブックタイトル社会科NAVI Vol.13
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社会科NAVI Vol.13
ていますが,その多くは人名でした。僧尼もいれはじのすくねおおとりのむらじやたべのば,俗人もいます。「土師宿祢」「大鳥連」「矢田部むらじかわちたじひ連」など,大鳥郡や隣りの河内国丹比郡の豪族の姓がめだち,この地域の人々が土塔築造の中心であったことをうかがわせます。しかし,人名を書おびといたのは豪族ばかりではなかったでしょう。「首なむしなめ名」「虫名女」といった無姓の男女名が多いのは,比較的低い階層の村人たちまでが自分の名を瓦に刻み,祈願を捧げたためと解されます。それでは,彼ら・彼女らは何を祈ったのでしょうか。まず因果応報の教えに基づき,善い果報を得ようとしたことが考えられます。また,文字瓦には「父母のため」などの文言が見出され,父母・先祖の追善供養を願ったものと推測できます。つまり現世利益と先祖供養の二つが,土塔にこめられた民衆的祈願だったわけです。ちしき「もろともに知識に入る」と書いた文字瓦もありました。「知識」とは,仏教的な善行を行なう信仰集団のことです。行基を慕う信仰集団によって壮大な土塔が築かれたことを,この瓦は雄弁に物語っています。こうした「知識」の力は,やがて大仏建立にもつながっていくのです。せんぼくふかい復原された土塔へは,泉北高速鉄道の深井駅から歩いて10分ほどです。ぜひとも壮大な「瓦のピラミッド」を見上げ,1300年前の人々の祈りに思いを馳せてみてください。■大野寺土塔で見つかった文字瓦▲3「土師宿祢□□」▲4「大鳥連津虫女」? 5「矢田部連龍麻呂」▲6「首名」▲7「虫名女」●吉川真司(よしかわしんじ)専門分野/日本古代史主要著書/『律令官僚制の研究』(塙書房,1998年),『日本の時代史5平安京』(編著,吉川弘文館,2002年),『天皇の歴史02聖武天皇と仏都平城京』(講談社,2011年),『シリーズ日本古代史3飛鳥の都』(岩波書店,2011年)など日本文教出版『中学社会』教科書著者社会科NAVI 2016 vol.13 17