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概要

社会科NAVI Vol.13

●辻中豊(つじなかゆたか)専門分野/政治学主要著書/『大震災に学ぶ社会科学第1巻政治過程と政策』(東洋経済新報社,2016年),『現代日本のNPO政治―市民社会の新局面(現代市民社会叢書)』(木鐸社,2012年),『利益集団(現代政治学叢書)』(東京大学出版会,1988年),日本文教出版『中学社会』教科書著者▲中華人民共和国北京市・釣魚台国賓館で「アジアと中国のローカルガバナンスにおける市民社会の役割」について講演する著者「北京フォーラム2015」2015年11月6? 8日戦,政府の活動の裏側を知るうえで,つまり政治の実際の仕組みをみるうえで不可欠の見方です。しかし,社会主義であり共産党独裁(つまり他の政治組織はほぼ無意味)と考えられている中国ど別世界のように思っておりました。1998年秋,突然,中国政治研究のリーダーである国分良成氏(当時,慶應義塾大学)の紹介で北京大学の研究者が数名,小生のもとを訪問しました。「利益集団」を共同研究したいとのことです。利益集団とは,社会のさまざまな集団が政治に意見や利益を反映させるために組織(団体)をつくり,政治への働きかけをすることをさす言葉です。日本やアメリカ,ドイツ,韓国など自由民主主義社会では当たり前のようにたくさんの集団が団体(経済団体や労働組合,医師会や農協,NGOやNPO)を形成しており,政治に働きかける活動をしています。そのため,選挙や国会での論(社会団体・民弁非企業単位)(基金会)30万25万社会団体民弁非企業単位基金会35003000でなぜ利益集団の研究が必要なのでしょう。図2で示したように,1990年代以降,特に21世紀に入って様々な社会の組織を中国政府は作らせつつあるのです。これが利益集団研究の必要な背景です。彼らは私に「どのようにして利益集団は政治に意見を反映させるのか,影響力をもつのか」と質問しました。そのとき,うかつなことに政治学者である私が気づいていなかった,自由民主主義社会において「選挙」がもつ本当の意味での重要さが分かったのです。これまで何度も講義で説明していながら,市民にとって選挙が大切だと体感したのはこのときでした。問題は中国には選挙がない,あってもほとんど市民が参加できない,できたとしても選択肢がない,ということです。21世紀には中国でも利益集団が重要になり,市民社会(中国語では公民社会)が普通に使われる20万20万15万10万2500200015001000500言葉になりました。現在,私の研究室には,市民社会,NGO/NPO,地方政治,福祉政治,メディア,国際政治と市民社会などのテーマを研究しようと,毎年10名ほどの中国の若者が研究にやってまいります。彼らにとって21世紀は市民社会の時代なのでしょう。日本の若者より,市民社会や選001988 90 92 94 96 98 2000 02 04 06 08 10 12(年)図2.中国での上からの利益集団・市民社会組織の形成(辻中豊・李景鵬・小島華津子編『現代中国の市民社会・利益団体―比較の中の中国』木鐸社2014年)※社会団体,民弁非企業単位,基金会は,日本ではそれぞれ,社団法人,民間非営利事業所,財団法人にあたる。挙に熱烈な関心を持って,未来の中国を知るためにやってくるのです。この熱意と中国の政治体制の大きなギャップをどのようにひも解いていけばよいのか,このことについて次回は述べたいと思います。社会科NAVI 2016 vol.13 19