ブックタイトル社会科NAVI Vol.14
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社会科NAVI Vol.14
ものもの多い。ロマン主義の時代には,こうした廃墟は文学的な感興を呼び起こし,観光地として有名になってゆくものもあった。また,偶像崇拝の禁止によって教会から聖画像などカトリック的な要素が排除され,イエスをはじめ,聖母マリアの像や諸聖人の肖像や壁画,ステンドグランスなどが破壊され,撤去された(聖像破壊運動)。ルターを批判していたカトリック教会も,トレント公会議で自らの改革に乗り出し,教義の再確認や綱紀の粛正が図られた。イエズス会などの積極的な布教活動により,南米やアジアなど世界各地にカトリックの教えが広められ,その後,ヨーロッパでもプロテスタント勢力範囲の後退がみられるようになった。ルターの問いかけに発した宗教改革は,カトリック教会をも変容させ,その後▲贖宥状販売図(風刺画)右手前に贖宥状を求める人が並び,たくさんのお金が机に積まれている。の世界地図に大きな刻印を残したのである。煉獄とは,死者の魂が,生前に犯した罪に応じて責め苦を課せられる場所で,罪を償いながら「最後の審判」のときを待つとされた。その苦しみを軽減するためには,生前の善行や死者のための祈り,聖人への願いが有効とされたが,贖宥状にも同じような効果が期待されたのである。こういった風潮に疑問を懐いたルターは,善行を積むといった行いではなく,信仰によってのみ魂の救済が実現するという考えに至った。そして,人は,教会を介することなく,聖書を通じてのみ神と接することが可能であると考え,聖書に根拠のない煉獄を否定することになる。修道院の解散煉獄の否定は,死者のための祈りや聖人崇敬の効力の否定となる。ひいては,祈りのための施設であった修道院の否定につながり,ドイツやイギリスなどで修道院の解体が進んだ。解散された修道院の一部は,教区教会などに転用されたが,地域の人々によって石材などが奪われるままに放置され,荒れ果てた姿を今に留める▲イギリスの修道院の廃墟(ウィトビー)●指昭博(さしあきひろ)専門分野/近世イギリス史主要著書/『イギリス宗教改革の光と影-メアリとエリザベスの時代-』(2010年,ミネルヴァ書房),『イギリス発見の旅-学者と女性と観光客-』(2010年,刀水書房),『図説イギリスの歴史(増補版)』(2015年,河出書房新社)など日本文教出版『中学社会』教科書著者社会科NAVI 2016 vol.14 11